社労士と弁護士、どちらの資格取得に挑戦すべきか検討している人もいるでしょう。この記事では、社労士と弁護士の違いをわかりやすく解説します。それぞれの資格試験の概要や、社労士と弁護士のダブルライセンスを取得するメリットについても解説します。資格を比較検討する際は、ぜひ参考にしてください。
社労士と弁護士の特徴
社労士と弁護士は、どちらも専門性の高い職業です。ここでは、社労士と弁護士の特徴について解説します。
社労士の特徴
社労士は、社会保険や労働に関する課題を解決する専門家で、正式には社会保険労務士と呼ばれます。社会保険や労働関連の法令を円滑に実施し、事業の発展や労働者の福祉に貢献することを目的としています。業務範囲は幅広く、社会保険や労働、雇用に関する問題、年金の相談などに対応します。社労士の国家資格を保有する人だけが職に就けます。
弁護士の特徴
弁護士は、法律の知識を使い、人々の権利や利益を守る専門家です。刑事事件や慰謝料の問題、相続問題などの法律に関わる課題を解決に導く役割を担います。問題を未然に防ぐためのアドバイスを行うことも、弁護士の仕事に含まれます。弁護士になるには、まず司法試験に合格する必要があります。その後、1年の司法修習を受け、修了試験に合格することで、晴れて弁護士資格を取得できます。
社労士と弁護士の業務内容の違い
社労士、弁護士ともに業務内容は多岐にわたります。ここでは、それぞれの業務内容について解説します。
社労士の業務内容
社労士の業務は3つに分類されます。それぞれの業務について記載します。
・1号業務
社会保険に関連する書類の作成や、行政官庁への書類提出を代行する
・2号業務
就業規則や労働者名簿、賃金台帳といった、労働や社会保険に関する法令に基づく帳簿を作成する
・3号業務
人事労務に関するコンサルティングを実施する
弁護士の業務内容
弁護士の業務は5つに分類できます。各業務について記載します。
- 依頼者からの法律に関する相談に対して、アドバイスを行う
- 法律に関する書面を作成する
- 裁判手続を依頼者の代理で実施する
- 被疑者や被告人の権利を擁護する弁護人となる
- 遺言執行者や成年後見人となる
社労士資格試験の概要
社労士資格試験は、受験資格や出題科目が定められています。ここでは、社労士資格試験の概要について解説します。
社労士資格試験の受験資格
社労士資格試験の受験資格を得るためには、学歴や実務経験、厚生労働大臣が認めた国家試験の合格のうち、いずれか1つの要件を満たす必要があります。受験申込時に、卒業証明書や受験資格証明書などの提出を求められます。受験資格が得られる例を記載します。
・学歴
大学や短大などを卒業している、もしくは大学で特定の単位数を取得している等
・実務経験
社労士事務所や、企業の人事労務担当者として、通算3年以上勤務している等
・他の資格試験合格
司法書士試験や行政書士試験などの、厚生労働省の認めた国家資格に合格している等
※参考:受験資格について | 社会保険労務士試験オフィシャルサイト
社労士資格試験の出題科目
社労士資格試験には、8つの出題科目があります。以下に、出題科目を記載します。
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む)
- 雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む)
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
社労士資格試験の合格率
社労士資格試験における、各年度の合格率は6〜7%です。合格率の推移から、社労士資格試験は、合格難易度の高い試験といえます。
2024年度:6.9%
2023年度:6.4%
2022年度:5.3%
2021年度:7.9%
2020年度:6.4%
2019年度:6.6%
※参考:合格発表 | 社会保険労務士試験オフィシャルサイト
合格までにかかる学習時間の目安
社労士資格試験に合格するための学習時間の目安は、800~1,000時間です。出題範囲が広く、各科目に合格基準点が設定されているため、効率的な学習が求められます。可能であれば通信講座やスクールを活用することをおすすめします。
司法試験の概要
司法試験についても、受験資格や出題科目が規定されています。ここでは、司法試験の概要について解説します。
司法試験の受験資格
司法試験の受験資格は、法科大学院で、法律に関する理論や実務を2~3年間学び、修了することによって得られます。法科大学院に通学できない場合でも、司法試験予備試験に合格することで、受験資格を得られます。受験資格には期限があり、合格から5年以内に試験を受ける必要があります。
司法試験の出題科目
司法試験は、短答式試験と論文式試験の2種類に分類されます。短答式試験は選択肢で解答する形式で、論文式試験は記述形式で解答します。それぞれの出題科目を記載します。
短答式試験
・憲法
・民法
・刑法
論文式試験
・憲法
・行政法
・民法
・商法
・民事訴訟法
・刑法
・刑事訴訟法
・選択科目1科目
司法試験の合格率
司法試験の、各年度の合格率を記載します。司法試験は、社労士資格試験よりも合格が困難といわれています。法科大学院の修了や、予備試験の合格というだけで十分に高いハードルです。そのようなハードルをクリアした法的知識が豊富なでも、合格率はおよそ20~40%となっています。
2024年度:42.1%
2023年度:45.3%
2022年度:45.5%
2021年度:41.5%
2020年度:39.2%
2019年度:33.6%
2018年度:29.1%
※参考:司法試験の結果について|法務省
合格までにかかる学習時間の目安
司法試験に合格するまでの学習時間は、予備試験で3,000~4,000時間程度、司法試験で3,000~4,000時間程度が目安とされ、膨大な学習時間が必要となります。適切な学習計画と、モチベーションの維持が重要です。
弁護士になれば社労士登録が可能
弁護士の資格があれば、社労士会に登録できます。社会保険労務士法では、弁護士の資格を持つ人は社労士資格を持つと示されており、社労士の業務も行えます。弁護士は、さまざまな法律事務の実施権限を持っているため、税理士や行政書士などの資格登録も可能です。
社労士と弁護士のダブルライセンスを取得するメリット
社労士や弁護士の資格は、単独でも高い市場価値を持ちます。ここでは、ダブルライセンスの取得による、さらなるメリットについて解説します。
同業者との差別化になる
社労士と弁護士のダブルライセンスを取得することで、同業者と差別化できます。弁護士は難関資格ですが、司法試験の合格枠拡張により弁護士の数が増え、同業者間での競争が激化しています。2つの資格を持つことで、顧客を獲得する上でのアピールポイントになります。企業の法務に関わる場合は、労働や社会保険に対する強みが相乗効果を生み、活躍できる場も増加します。
就職と転職に役立つ
ダブルライセンスの取得は、就職と転職にも役立ちます。両資格を持つことは、労働法務と企業法務に強みを持つ弁護士である証明になるからです。特に、組織内弁護士を求めている企業や労働相談が多い法律事務所などから、重宝されやすくなります。
社労士と弁護士の兼業
社労士と弁護士は兼業可能です。先述の通り、社労士と弁護士のダブルライセンスによって、市場価値は高まります。一般的な社労士や弁護士との差別化を図るために、兼業する人もいます。いずれの業務も、多岐にわたる知識やノウハウが求められますが、その分のメリットを享受できるでしょう。
まとめ
社労士資格試験と弁護士資格試験は、どちらも難易度の高い資格で、弁護士資格試験の合格の方がより困難といわれています。この記事で紹介した、双方の受験資格や合格率、学習時間の目安などを参考に、ぜひご自身のキャリア選択に役立ててください。
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