社労士は誰でも受験できる資格ではなく、一定の受験資格が必要な資格です。この記事では、社労士試験の受験を検討している人に向けて受験資格の詳細を解説します。自分に受験資格があるかどうか分からない人は参考にしてください。
社労士試験の概要
社会保険労務士試験は、例年8月第4日曜日に実施される試験です。試験形式は「選択式」と「択一式」に分かれており、双方の試験で基準点を満たすことで合格となります。
試験形式の詳細は、下記のとおりです。
・選択式:選択肢の中から正解を選択(各問5点・合計40点満点)
・択一式:5つの選択肢から正解を選択(各問1点・合計70点満点)
合格率はおおよそ6〜7%前後です。
※参考:受験申込者数・受験者数・合格者数の推移(過去10年)
社労士試験の受験資格
ここからは、社労士試験の受験資格について解説します。
学歴
社労士試験の受験資格を得る要件の1つは学歴です。学歴要件は、大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学か高等専門学校(5年制)を卒業か、専門職大学の前期課程修了です。
また、学校を卒業していなくても、取得単位を満たしていれば社労士試験は受験できます。
さらに詳しく解説します。
大学・短期大学・専門職大学・専門職短期大学・高等専門学校の卒業
大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、高等専門学校(5年制)を卒業した人、また専門職大学の前期課程を修了した人は社労士試験を受験できます。上記は、学校教育法に準じた内容です。
受験資格を証明するための提出書類は、卒業証明書もしくは修了証明書またはその写し、卒業証書の写し、学位記の写しのいずれかです。
大学での修得単位数
卒業をしていなくても、大学で62単位以上の卒業要件単位を修得した人は社労士試験を受験できます。単位が「一般教養科目」と「専門教育科目」に分けられている場合は、細かい指定要件がある点に注意しましょう。
単位習得を証明するための提出書類は、大学の成績証明書またはその写しです。
厚生労働大臣が認可する学校の卒業
大学や短期大学以外でも、厚生労働大臣が認可する学校を卒業していれば社労士試験を受験できます。厚生労働大臣が認可する学校の具体例は、保健師学校や助産師学校、看護師学校、保育士を養成する学校などです。
受験資格を証明するための提出書類は、卒業証明書もしくは修了証明書またはその写し、卒業証書の写しのいずれかです。
その他の学歴
上記にあげた学校以外でも、短期大学卒業と同程度の学力が認められれば、社労士試験を受験できます。その場合には、個別に全国社会保険労務士会連合会の審査が必要です。
受験資格を証明するための提出書類は、卒業(修了)証明書またはその写し、成績(単位修得)証明書またはその写し、カリキュラム等またはその写し(修業年限、授業時間数、授業科目数、必要単位数などが記載されているもの)のいずれかです。
実務経験
社労士試験の受験資格を得る要件の1つは、規定の場所での実務経験3年以上です。
ここからは、実務経験の要件を具体的に解説します。
健康保険組合や労働保険事務組合での実務経験
労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員や従業員として働いた経験があれば、社労士試験を受験できます。具体的には、健康保険組合や労働保険事務組合などです。
実務経験を証明するための提出書類は、試験センター様式の実務経験証明書またはその写しです。
公務員としての実務経験
国や地方公共団体の公務員として行政事務に従事した経験があれば、社労士試験を受験できます。国や地方公共団体の公務員以外にも、行政執行法人や特定地方独立行政法人なども対象です。
実務経験を証明するための提出書類は、試験センター様式の実務経験証明書またはその写しです。
社会保険労務士や弁護士の補助者としての実務経験
社会保険労務士や弁護士の補助者としての実務経験があれば、社労士試験を受験できます。社労士法人や弁護士法人での勤務経験も対象です。
実務経験を証明するための提出書類は、試験センター様式の実務経験証明書またはその写しです。
その他の実務経験
上記にあげた実務経験以外にも、下記での実務経験があれば社労士試験を受験できます。
・日本郵政公社
・全国健康保険協会
・日本年金機構
実務経験の要件を満たしているかが不明な場合は、全国社会保険労務士会連合会に問い合わせて受験資格の有無を確認しましょう。
国家試験合格
学歴や実務経験の要件を満たしていなくても、各種国家試験に合格していれば社労士試験を受験できます。
代表的な国家試験は、司法試験予備試験や行政書士試験です。そのほか、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格していれば社労士試験の受験資格を得られます。代表的な国家試験は下記のとおりです。
・国家公務員採用総合職試験
・司法書士試験
・労働基準監督官採用試験
・航空管制官採用試験
・外務省専門職員採用試験
・国税専門官採用試験
・自衛官採用試験
具体的な該当国家試験については、社会保険労務士試験オフィシャルサイトに掲載されている資料を確認しましょう。
※参考:厚生労働大臣が認めた国家資格
無資格者が社労士の受験資格を得るおすすめの方法
ここからは、社労士の受験資格を持っていない無資格者が受験資格を得るおすすめの方法を解説します。
短期大学を卒業する
資格を持っていない場合にもっとも早く受験資格を得られる方法は、短期大学の卒業です。大学を卒業する場合には4年、実務経験を積む場合は3年が必要ですが、短期大学であれば2年で済みます。
通信制の短期大学であれば、学費も安く時間の調整もしやすいでしょう。
行政書士の資格を取得する
無資格者が社労士の受験資格を得るおすすめの方法の1つは、行政書士資格の取得です。国家試験には数多くの種類がありますが、そのなかで相対的に難易度が低い試験は行政書士試験といえるでしょう。
行政書士試験は受験資格もないため、勉強以外の特別な準備は必要ありません。社労士試験との親和性も高く、資格を取得することで法律について、より詳しくなれるでしょう。
3年以上の実務経験を積む
学校に通う時間や勉強する時間がない人は、実際に働きながら3年以上の実務経験を積む方法がおすすめです。社労士の補助として働ける職場に就職できれば、実務経験に加えて知識も吸収しやすいでしょう。
社労士の受験資格を得るだけでなく長期的なスキルアップも目指すなら、自分が経験したい仕事を中心に職場を選ぶとさらに充実した時間を過ごせます。
社労士試験の出願〜合格発表までの例年のスケジュール
ここからは、社労士試験の出願から合格発表までのおおまかなスケジュールについて解説します。
【4月~5月】願書配布・受付
4月から5月にかけては、願書配布および受験受付の時期です。願書配布は4月中旬から、願書受付は5月下旬までと覚えておきましょう。以前は試験センター窓口での受付にも対応していましたが、現在はインターネットおよび郵送が受付手段となっています。
【8月】社労士試験
社労士試験当日は、例年8月下旬です。午前に選択式試験、午後に択一式試験が実施されます。
当日は、以下の持ち物を忘れないようにしましょう。
・受験票
・筆記用具
・腕時計
・写真つき身分証明書
空き時間を有効活用できるよう、問題集を持参するのもおすすめです。
【10月】合格発表
社労士試験の合格発表は、2024年10月2日(水)に厚生労働省ホームページと社労士試験オフィシャルサイトにて行われる予定です。例年11月上旬に行われていましたが、2022年から10月上旬となっており、来年度以降も10月上旬が通常となると思われます。また、後日官報で合格者の受験番号も発表されます。
合格者は、厚生労働大臣が指定した講習を修了するなど一定の要件を満たしたうえで、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録すれば社労士の資格を得られます。
社労士に向いている人・向いていない人の特徴
ここからは、社労士に向いている人・向いていない人の特徴を解説します。
社労士に向いている人
社労士に向いている人の特徴は、下記3点です。
・仕事をコツコツ進められる人
・目的を達成するための努力を惜しまない人
・一定以上のコミュニケーション能力がある人
社労士の仕事は地道に進める内容が多いため、仕事をコツコツこなせる人に向いています。
また、目的に向かって努力できる、誰かのために働きたいなどの思いがあるといった点も大事な素養です。
さらに、社労士は意外と社内外の人と関わる機会が多い仕事であるため、コミュニケーション力も求められます。
社労士に向いていない人
社労士に向いていない人の特徴は、下記3点です。
・大雑把な人
・誠実でない人
・自分の意見を言えない人
社労士の仕事には緻密さが求められるため、大雑把で細かい作業が苦手な人には向いていません。
また、立場などを気にしすぎて、自分の意見が発言できない人にも難しいでしょう。社労士法1条の2には、公正な立場で誠実に業務を行う必要がある旨が明記されているため、ときには関係者と対立的な関係になるシチュエーションも出てきます。
もし性格的に社労士が向いていないと感じたら、ほかの資格を検討するのも1つの方法です。
社労士の受験資格を得る際の注意点
社労士の受験資格を得ようとする際には、あらかじめ自分の経歴を整理しておきましょう。受験資格が多少複雑でさまざまな方法で得られるため、あらかじめ資格の有無を確認しておく取り組みが重要です。
また、受験資格の一つである実務経験を得られる職場で働いていたとしても、書類整理等の単純労働の場合は要件を満たせません。実際に法令に関わる業務に携わっていたかが重要なポイントです。
まとめ
社労士試験を受ける際には、自分に受験要件があるのかをしっかり把握しておきましょう。学歴や実務経験については多くの要件が備えられているため、迷ったら一度公式ホームページから確認することをおすすめします。
受験資格を確認した後にすべきことは、もちろん合格を目指して勉強をすることです。クレアールは50年以上にわたって難関資格の受験指導を続けてきており、社労士試験に関するノウハウを数多く持っています。働きながらでも合格を目指せる効率的な学習ノウハウや、有名講師陣による指導や手厚いサポートを得意としているため、これから学びを始めようとしている人はぜひお問い合わせください。
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