国家試験の資格で最難関といえばやはり司法試験であり、次に難しいのが司法書士試験といわれます。それに比べると社労士の試験は、難易度こそ目立たない印象ですが、具体的に試験の難しさはどの程度なのか、試験の制度や科目などから、他の資格と比較した難易度について考えていきます。
社労士(社会保険労務士)資格の合格率について

受験資格をまず学歴で見ていくと、4年制大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、また高等専門学校(5年制)を卒業した人、又は専門職大学の前期課程を修了した人、4年制大学にて一般教養科目の学習、または62単位以上を習得した人、修業年限2年以上で課程修了の総時間数が1,700時間(62単位)以上の専修学校の専門課程を修了した人が対象となります。
また、司法試験予備試験に合格した人や、行政書士の資格がある人は学歴に関係なく受験資格があります。実際の合格率としては、おおむね5%から10%程度で推移していますが、この20年間の合格率を見ると10%を超えたのは2004年の10.6%だけで、2015年度は2.6%と低い水準になっています。
過去には7%から9%台の合格率が続く時期もありましたが、近年はほぼ6%台に落ち着いています。
社労士試験を合格率から見ると、受験資格に一定の学歴や資格の保持が条件であることを考えれば、比較的、難易度の高い試験であるように思えます。
社労士(社会保険労務士)資格は難易度が高い?

合格率が低くなる要因のひとつに、“科目合格制度”がない点があげられます。
科目合格制度とは、税理士試験などの資格試験に見られる制度で、税理士試験では、選択科目の中から5科目を選び、全てで60%以上を取ることにより合格できます。ただ5科目すべてを一度にパスしなくても、数年かけて1科目ずつ合格してもかまいません。これが科目合格制度であり、そのため税理士試験の科目別合格率は15%と、比較的高いものになっています。ただ社労士試験にはこの制度がなく、年に1度の“一発勝負”になるため、1年ですべての科目をカバーせねばならず、難しい試験となるのです。
また、社労士試験は労働保険関係科目で5科目、社会保険関係科目で3科目、労務管理、社会保険に関する一般常識の2科目と、勉強すべき科目が多くなります。さらに科目ごとに、一定点数以上とらないと不合格になる合格基準点があるため、各科目で満遍なく点数をとらねばならず、得意科目で不得意科目をカバーすることができません。社労士試験の難しさは税理士試験と大差ありませんが、これらの要素が社労士資格取得の合格難易度を高めることの一因となっています。
社労士(社会保険労務士)と他の資格だとどちらが難しい?

社労士試験の内容は、全問マークシート方式になっています。そのため8士業やその他の資格試験との難易度を比較すると、論文、論述試験があり、難関資格のツートップと呼ばれる「司法試験」「司法書士試験」に比べれば、難易度の低い試験だといえます。
社労士(社会保険労務士)試験と行政書士試験を比較した場合
難易度的にはほぼ同じか、出題範囲の広い社労士試験のほうが若干難しいといわれます。ただし、両者の試験は学ぶべき科目が大きく異なり、行政書士試験には記述問題もあるため、単純な比較はできず、感覚的な難易度は受験者の資質によっても大きく変わってきます。
社労士(社会保険労務士)試験と税理士試験を比較した場合
前述の通り税理士試験には科目合格制度があるため、科目合格率では社労士試験より高くなっています。しかし税理士試験では会計2科目が必須試験となり、その中に計算問題が含まれるため、問題そのもので比べれば税理士試験のほうが難しいといえます。
社労士試験は試験勉強の範囲が広く、年に1度の試験ですべてが決まるという厳しさはあります。ただ、勉強の内容は、基本的に暗記と法令の解釈のみになるため、地道な努力が合格につながる試験だといえるでしょう。
まとめ

社労士の資格試験は、試験そのものはマークシート方式であり、論述や計算などの必要はありません。したがって試験問題自体が極端に難しいことはありません。その難易度が高くなる要因は、まず勉強すべき科目の範囲が広いこと、科目合格制度がなく一度の試験の成績で合否が決まること、科目ごとに一定以上の点数を取らなければならない合格基準点の存在にあるといえます。そのためすべての試験科目について、偏りのない広範な知識が必要となります。社労士試験の合格にはおよそ1,000時間の勉強が必要といわれ、概算で1日5時間の勉強を7、8ヶ月程度は続けなければなりません。一方で学ぶべき内容は、基本的に暗記と法令解釈のみなので、計算や論述などに秀でた能力がなくとも、地道な努力を積み重ねることで、確実に合格に近づくことができる試験だといえます。
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