社労士になるには、試験合格後に実務経験を2年以上積むか事務指定講習を修了した上で、社会保険労務士名簿に登録しなければなりません。社労士の資格を保有して経験を積むと、企業内でのキャリアアップや転職・独立による収入の増加も期待できます。本記事では、社労士の資格取得や社労士会への登録、キャリアアップにおいて必要な実務経験を解説します。社労士を目指している方はぜひ参考にしてください。
社労士になるには実務経験が必要か
社労士になるには、社会保険労務士試験に合格した後に、社会保険労務士名簿に登録しなければなりません。この登録には、実務経験2年以上または事務指定講習の修了が必要です。社労士になるための流れは下記となります。
社労士の受験資格のある者
↓
社会保険労務試験合格
↓
下記のいずれかの要件を満たす者が社労士会に登録・入会
(1)2年以上の実務経験(試験前後不問)
(2)事前指定講習修了
↓
社労士として働ける
社労士の資格を取得するために必要な実務経験
社労士の資格を取得するためには、定められた学歴や実務経験、国家資格のうちいずれか1つを有している必要があります。具体的な内容について、下記にて詳しく解説します。
資格を取得するには
国家資格である社労士の資格を取得するには、下記の受験資格を有するものが、毎年8月に実施され10月に合格発表となる社会保険労務士試験に合格する必要があります。受験するには学歴、実務経験、国家資格のうち、いずれか1つを満たしていなければなりません。また、受験資格を満たしていることを証明する確認書類も必要です。受験資格はコード番号で分類されており、詳細は下記のとおりです。
受験資格1.学歴
下記が社労士受験に必要な学歴で、受験するにはいずれも学歴の証明書が必要です。
4年制大学・短期大学・高等専門学校・専門職大学・専門職短期大学卒業者等
【受験資格コード01】
学校教育法による大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学もしくは高等専門学校(5年制)を卒業した者、または専門職大学の前期課程を修了したもの
【受験資格証明書】下記のいずれか
(1)卒業証明書もしくは修了証明書またはその写し
(2)卒業証書の写し
(3)学位記の写し
【受験資格コード02】
大学、専門職大学、高等専門学校において、62単位以上の卒業要件単位を取得したもの等
【受験資格証明書】
大学の成績証明書またはその写し
その他の学校卒業者
【受験資格コード03】
旧高等学校令による高等学校高等科、旧大学令による大学予科または旧専門学校令による専門学校を卒業し、または修了したもの
【受験資格証明書】下記のいずれか
(1)卒業証明書もしくは、修了証明書またはその写し
(2)卒業証書の写し
厚生労働大臣が認めた学校卒業者
【受験資格コード04】
コード01または03に掲げる学校等以外で、厚生労働大臣が認めた学校等を卒業し、または所定の課程を修了したもの
【受験資格証明書】下記のいずれか
(1)卒業証明書もしくは修了証明書またはその写し
(2)卒業証書の写し
※外国語の証明書の場合は、全文を和訳した文書を添付する
専門学校卒業者
【受験資格コード05】
修業年限が2年以上で、かつ、課程の修了に必要な総授業時間数が、1700時間(62単位)以上の専修学校の専門課程を修了したもの
【受験資格証明書】下記のいずれか
(1)「専門士」もしくは「高度専門士」の称号が付与されていることを証明する書面またはその写し
(2)【試験センター様式】専修学校修了者受験資格証明書またはその写し
各種学校等卒業者
【受験資格コード14】
全国社会保険労務士会連合会において、個別の受験資格審査により、学校教育法に定める短期大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められるもの(各種学校等)
【受験資格証明書】下記の全て
(1)卒業(修了)証明書またはその写し
(2)成績(単位修得)証明書またはその写し
(3)カリキュラム等またはその写し(修業年限、授業時間数、授業科目数、必要単位数等が記載されているもの)
受験資格2.実務経験
下記のような実務に従事した経験が期間があれば、社労士の受験資格を取得できます。下記にてそれぞれ詳しく解説します。
なお、実務経験の受験資格証明書は、下記のいずれの場合も「【試験センター様式】実務経験証明書またはその写し」となるため、忘れずに用意しなければなりません。
労働社会保険諸法令の規定に基づき設立された法人の役員または従業者
【受験資格コード08】
労働社会保険法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く)、または従業員として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になるもの
国または地方公共団体の公務員等、日本郵政公社の役員または職員等
【受験資格コード09】
国または地方公共団体の公務員として行政事務に従事した期間及び行政執行法人(旧特定独立行政法人)、特定地方独立行政法人または日本郵政公社の役員または職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が通算して3年以上になるもの等
社労士法人と弁護士法人を含む社会保険労務士または弁護士の補助者
【受験資格コード11】
社会保険労務士もしくは社会保険労務士法人、または弁護士もしくは弁護士法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になるもの
労働組合の専従役員等
【受験資格コード12】
労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事(専従)した期間が通算して3年以上になるもの等
労働組合の職員または法人等もしくは事業を営む個人の従業者
【受験資格コード13】
労働組合の職員または法人等、もしくは事業を営む個人の従業者として労働社会保険諸法令に関する事務に従事した期間が通算して3年以上になるもの
受験資格3.厚生労働大臣の認めた国家試験合格
社労士以外の国家資格を保有していれば、社労士の受験資格を取得できます。下記にて詳しく解説します。
なお、この場合の受験資格証明書は、(1)合格証明書またはその写し(2)合格証書の写しのいずれかです。
社労士試験以外の国家試験合格
【受験資格コード06】
社会保険労務士試験以外の国家試験のうち、厚生労働大臣が認めた国家試験の合格者が対象です。司法書士・弁理士・公認会計士・不動産鑑定士など79種類あります。
司法試験予備試験等の合格
【受験資格コード07】
司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験、旧司法試験の第一次試験または高等試験予備試験に合格したもの
行政書士試験の合格
【受験資格コード10】
行政書士試験に合格した者
社労士会に登録するために必要な実務経験
社労士試験に合格した後、社労士会に登録するには、実務経験2年以上または事務指定講習の修了が必要です。下記にて詳しく解説します。
社労士会に登録するには
社労士会に登録するには、下記の具体例のような業務に従事した2年以上の経験が必要です。ただし2年未満ないしは実務経験がなくても、「事務指定講習」を受講し修了すれば実務経験2年以上と同等の経験があるとみなされます。
社労士会への登録は義務ではないものの、登録をしなければ社労士の肩書が使えず、専門業務も行えません。登録をすることによって社会的評価が高まり、社労士会の研修やセミナーで知識のブラッシュアップができるなどのメリットがあります。支部活動や研修会、行政協力を通じて、人脈も広げられるでしょう。
社労士会登録に必要な実務経験の具体例
登録に必要な実務経験の大原則は、「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」です。具体的には下記のような人事、労務、総務の分野で、実際に社会保険や労働保険の書類を作成するなどの実務に携わっていたことが条件です。
【実務経験の具体例】
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得届・喪失届に関する事務
- 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届に関する事務
- 雇用保険被保険者離職証明書の作成
- 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付に関する事務
- 就業規則(変更)届に関する事務
- 時間外労働・休日労働に関する協定届の作成
- 労働者名簿の調製
※参考:全国社会保険労務士会連合会|社労士の登録申請について
事務指定講習を受講するには
2年以上の実務経験がなくても、事務指定講習を受講し修了すれば社労士会に登録できます。本来は2年以上の実務経験が必要なところを半年間の研修で代替できるため、実務経験がない人や社労士として活動を早く始めたい人には大きなメリットとなるでしょう。
事務指定講習は「通信指導課程」と「eラーニング講習」の2つで構成されています。通信指導過程では課題の提出を期間内に完了すること、eラーニング講習をすべて受講完了することが条件となり、いずれも要件を満たせば修了証が交付されます。
また受講料として、77,000円がかかります。それぞれの課程の詳細は下記のとおりです。
通信指導課程
毎年2〜5月に実施され、自宅に届いた諸教材を基に、労働・社会保険の具体的手続き方法を学びます。課題には提出期限が設けられ、期日を守って添削指導を受けることが条件です。
面接指導課程
通信指導課程を通過した者だけが受講でき、eラーニング講習を受講します。毎年7〜9月に実施され、eラーニング講習は講習科目についてオンデマンド配信により、1科目3時間の講習が実施されます。
事務指定講習のメリット
事前指定講習を受けると、2年の実務経験がなくても半年ほどの講習で社労士会登録が認められるため、早く社労士として活動したい場合に有利です。
事務指定講習のデメリット
デメリットとしては、受講料が77,000円と高額である点や、実務経験者に比べ、2年に満たない実務経験しかないため、実践力では劣る傾向にあります。
社労士のキャリアアップのための実務経験
社労士は、社会保険や労働保険などの労働法に基づいた各種書類の作成や手続きの代行、給与計算や年末調整に関する業務などの1号・2号業務のほか、人事や労務に関するコンサルティングなどの3号業務も行います。これらの実務経験を積むことで、企業の経営により深く関与できるようになり、昇進や転職・独立などが可能です。ここでは、社労士の主なキャリアアップやキャリアパスを解説します。
企業の人事・労務セクションで昇進する
企業の人事労務担当として実務経験を積むと、人事労務のプロフェッショナルとして活躍できます。社労士資格の取得や、さらなる研鑽によって専門性を高めることで、企業によってはCHO(最高人事責任者)を目指せる場合もあるでしょう。
社会保険労務士事務所や法人でのキャリアパス
社労士事務所などでのキャリアパスとしては、1・2号業務といわれる労働保険・社会保険手続きなどの代行業務を中心に、基本業務をきっちりと習得していくことで、シニアスタッフ等に昇進できます。3号業務である企業のコンサルティング業務にも携わると、対応できる業務がさらに広がるでしょう。
コンサルティング会社へ転職・独立
企業のコンサルティング業務もできるようになると、労務コンサルティング会社や総合法律事務所や総合会計事務所などへの就職、独立も現実的となります。将来的に独立したい、パートナーを目指したいなら、コンサルティング業務の経験を積むのもよいでしょう。
まとめ
社労士になるには、一定の受験資格を有する者が受験に合格した上で、実務経験2年以上を積む、あるいは事務指定講習を修了して社労士会に登録する必要があります。社労士としてキャリアを積めば企業の中で昇進を目指せるほか、キャリアアップのための転職にも有利です。独立して高収入を得ることも夢ではないでしょう。社労士試験は国家資格でもあるため、資格手当などがある企業ならば待遇アップも期待できます。
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