こんにちは。
クレアール司法書士講座受験対策室の関口です。
今回は、「記憶の補助線で司法書士試験対策!」の第2弾「善意、悪意、過失の総まとめPart2」を配信します。
Part1の記事をまだ読まれてない方は、ぜひ先にご覧ください。
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今回の記事では、「善意」「悪意」「善意・悪意を問わないもの」の3つを中心に取り上げていきます。
では、スタートです!
「善意」「悪意」「善意・悪意を問わないもの」
今回も条文ベースでみていきましょう!
1.失踪の宣告の取消し
(失踪の宣告の取消し)
第32条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
👉解説
失踪宣告を信頼した者を保護するため、失踪宣告後取消前に善意(失踪宣告がそして事実と異なることを知らない)でした行為は、失踪宣告の取消しによって影響を受けません(民32条1項後段)。ただし、その行為が契約のように双方当事者がある場合には、双方とも善意でなければならない点に注意しましょう(大判昭13.2.7)。
例えば、不在者Aが家庭裁判所から失踪宣告を受け、その相続人BがAから相続した不動産をCに売却して引き渡した後、生存していたAの請求により当該失踪宣告が取り消された場合には、当該売買の当時Aの生存につきB及びCが善意であったのであれば、Aは、Cに対し、当該不動産の返還を請求することはできません。
2.心裡留保と第三者、通謀虚偽表示と第三者
(心裡留保)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
👉解説
⑴心裡留保と第三者
相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたとして、心裡留保による意思表示が無効な場合であっても、 その無効を知らずに新たに取引関係に入った者がいる場合にはこの者を保護する必要があります。そこで、民法93条1項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者には対抗できないとされました(民93条2項)。
⑵通謀虚偽表示と第三者
通謀虚偽表示による意思表示は、当事者間では無効であっても、その無効を知らず に新たな取引関係に入った者を保護する必要があります。そこで、通謀虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者には対抗できないとされました(民94条2項)。なお、「対抗することができない」とは、当事者から善意の第三者に対しては無効を主張することができないということを意味しており、善意の第三者の側からは、有効を主張することも無効を主張することもできます。
第三者との関係については、混乱しやすい部分ですので、表で知識を整理しましょう。
3.無権代理の相手方の催告権、取消権
(無権代理の相手方の催告権)
第114条 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
(無権代理の相手方の取消権)
第115条 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
👉解説
無権代理行為の相手方は、その行為の効果が発生するか否かが本人の追認の有無によって定まるため、きわめて不安定な地位に置かれます。そこで民法は無権代理人と取引をした相手方を保護するため、相手方に催告権(民114条)と取消権(民115条)を認めました。
⑴相手方の催告権
無権代理人と取引をした相手方(善意・悪意を問わない)は、相当の期間を定め、その期間内に無権代理行為を追認するか否かを確答すべき旨を、本人に催告することができます。そして、本人がその期間内に確答しなかったときは、追認を拒絶したとみなされます。
⑵相手方の取消権
無権代理人と契約を締結した相手方(善意に限る)は、本人が追認するまでの間は、その契約を取り消すことができます。取消しの意思表示は、本人又は無権代理人のいずれに対してしても構いません。また、表見代理が成立する場合であっても、取り消すことができるとされています。この取消しにより、本人は追認することができなくなります。
4.不動産に関する物権の変動の対抗要件
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
👉解説
悪意者といえども自由競争を建前とする現行法の下では、保護されるべきであり、条文上も善意は要求されていないので「第三者」に含まれます(最判昭32.9.19)。 ただし、 「第三者」に背信的悪意者は含まれません(最判昭43.8.2)。
5.善意の占有者による果実の取得等
(善意の占有者による果実の取得等)
第189条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
👉解説
果実を取得する権利がないにもかかわらず、これがあると誤信して元物を占有している者(善意占有者)は、果実を収取して消費するのが普通です。そこで、善意の占有者は占有物から生じる果実を取得するとされました(民189条1項)。
なお、善意の占有者でも、本権の訴え(たとえば、所有者から、所有権に基づく返還請求の訴え)を提起され、これに敗訴したときは、その「起訴の時」から悪意の占有者とみなされます(民189条2項)。
6.悪意の占有者による果実の返還等
(悪意の占有者による果実の返還等)
第190条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
👉解説
悪意の占有者は、果実を返還し、かつ既に消費し過失によって損傷し、または収取を怠った果実の代価を弁償する義務を負います(民190条1項)。
7.占有者による損害賠償
(占有者による損害賠償)
第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
👉解説
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失(第三者に譲渡して占有物の返還ができなくなった場合を含む)又は損傷した場合に占有者はいかなる範囲で回復者に対して賠償責任を負うかという問題があります。
⑴ 善意の占有者
善意の占有者とは、果実収取権のある本権を有すると誤信している者です。善意の占有者のうち、所有の意思のある占有者(例えば、他人が所有する土地を自己が所有するものと信じて占有している者)は、滅失または損傷によって現に利益を受ける限度で責任を負います(民191条本文後段)。
⑵ 悪意の占有者・所有の意思のない善意の占有者
悪意の占有者・所有の意思のない善意の占有者は、回復者に対して、損害の全部を賠償する義務を負います(民191条本文前段、ただし書)。善意の占有者でも所有の意思のない者(例えば、賃借権が無いのにあると誤信している者)が全損害の賠償責任を負うのは、所有の意思のない占有者は、占有物を回復者に返還すべきであることを当初より認識しているからです。
8.盗品又は遺失物の回復
(盗品又は遺失物の回復)
第193条 前条(即時取得)の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
👉解説
民法193条によって被害者又は遺失主が回復請求をする場合には、原則として、代償を支払う必要はありません。しかし、現占有者が盗品又は遺失物を、競売もしくは公の市場、又はその物と同種の物を販売する商人から善意で買い受けた場合には、その支払った代価を弁償しなければ回復請求することができません(民194条)。
9.占有者による費用の償還請求
(占有者による費用の償還請求)
第196条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
👉解説
⑴必要費
占有者は、必要費については、善意・悪意を問わず、その全額の償還を請求することができます(民196条1 項本文)。ただし、占有者が果実を取得した場合には、「通常の」必要費は、占有者の 負担に帰しその償還を請求することはできません(民196条1項ただし書)。通常の必要費とは、小規模な修繕や租税などです。
⑵有益費
占有者は、有益費については、善意・悪意を問わず、①その価格の増加が現存する場合に限り、②回復者の選択に従い、③占有者が実際に支出した金額または現存増加額の償還を請求することができます(民196条2項本文)。
ただし、有益費を支出しその価格の増加が現存する場合には、償還請求をすることができますが、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限の猶予を与えることができます(民196条2項ただし書)。
以上を踏まえると、占有者による費用の償還請求に関して、占有者が善意か悪意かで結論に違いがでるのは、裁判所による期限の猶予の可否についてのみと言えます。
10.占有回収の訴え
(占有回収の訴え)
第200条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
👉解説
侵奪者の善意の特定承継人に対しては、占有回収の訴えを提起することができません(民200条2項)。したがって、一度、善意の特定承継人が占有を取得すると、その後悪意の特定承継人に占有が移っても、もはや占有回収の訴えを提起することができなくなります(大判昭13.12.26)。
占有の承継人に対する占有回収の訴えは、侵奪者の包括承継人(善意・悪意を問わず)及び悪意の特定承継人に対してすることができます。
11.遺言の執行の妨害行為の禁止
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
👉解説
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません(民1013条1項)。「遺言執行者がある場合」とは、遺言執行者として指定された者が就職を承諾する前をも含みます(最判昭62.4.23)。
遺言執行者がある場合に、相続人が、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をした場合、その行為は原則として無効です。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することはできません(民1013条2項)。
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