正答率50%未満の民事訴訟法等の過去問肢のご紹介

司法書士コラム

皆さんこんにちは。

本日は、現段階でのCROSS STUDY上のデータをもとに、民事訴訟法等の正答率50%未満の過去問肢について、一部抜粋してご紹介したいと思います。
マイナー科目の知識は、基本4法に比べたら目にする機会が少なくなりがちだと思いますので、丁度良い機会と捉え、しっかりご確認いただきたいです。

※以下、CROSS STUDY画面右上の8桁の問題IDを、「CS問題ID」と省略して示します。

分野:民事保全法 保全命令に関する手続/保全取消し 正答率38.1%

平成23年度 第6問 肢ア(CS問題ID:H23061PA)

【問題】
保全異議の申立ては、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所にすることができ、本案の訴えの不提起による保全取消しの申立ては、保全命令を発した裁判所にすることができる。

【解答・解説】
誤り保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所保全異議を申し立てることができる(民保26条)。本案の訴えの不提起による保全取消しの申立ては、保全命令を発した裁判所にすることができる(民保37条1項参照)。したがって、保全異議の申立てを本案の裁判所にすることはできない

(コメント)
民事保全法の保全命令に関する論点は、なかなか時間をかけて学習することが難しい分野だと思います。問題文を一読しただけだとややこしいですが、整理してみると、

保全命令に対する保全異議の申立て保全命令を発した裁判所(民保26条)
本案の訴えの不提起による保全取消しの申立て保全命令を発した裁判所(民保37条1項)

といずれも「保全命令を発した裁判所」にしか提起できない、と意外と単純な知識に分解できます。
正直、自分は丸暗記しかないと割り切って覚えていました。ご覧になっている皆さまも、できれば今この場で覚えてしまってほしいくらいに思います。
なお、各保全取消しの比較について、下記図表も併せて押さえてください。

保全取消しの申立ての管轄裁判所として「本案の裁判所」が登場するのは、事情の変更による保全取消しの申立て(民保38条)と特別の事情による保全取消しの申立て(民保39条)の、“事情”がつく理由のものだけになります(※その部分をマーカーで引きました)。
理屈で考えると、本案の訴えの不提起による保全取消しの申立ての場合には、本案の訴えを提起していないわけですから、当然本案の裁判所は管轄にならないと理解すると良いと思います。

分野:民事訴訟法 手形訴訟及び小切手訴訟/少額訴訟に関する特則 正答率40.4%

平成16年度 第1問 肢エ(CS問題ID:H16014PA)

【問題】
少額訴訟の終局判決に対する異議を取下げるには、相手方の同意を要する。

【解答・解説】
正しい。同意を要する。少額訴訟の終局判決に対しては、民事訴訟法378条において異議の申立てが認められている。異議を申し立てた場合において、これを取り下げるには相手方の通常手続による審理を受ける期待を保護するため、その同意を得なければ、その効力を生じないとされる(民訴378条2項、360条2項)。

(コメント)
少額訴訟と手形・小切手訴訟は民事訴訟法の終盤に登場する細かい知識になりますので、苦手な方も多くいらっしゃると思います。
判決に対する異議の取下げには相手方の同意が必要になる」というのは、少額訴訟、手形・小切手訴訟のいずれにおいても共通する特徴になります(民訴378条2項、360条2項)。

少額訴訟手形・小切手訴訟に共通する内容としては、
・両者とも、原則一期日審理である(民訴370条、民訴規214条)
・いずれにおいても、反訴の提起ができない(民訴369条、351条)
・いずれにおいても、職権で判決に仮執行宣言付さなければならない(民訴376条1項、259条2項)
という知識がありますが、それらと比べると本肢は頭に残りにくい知識のように感じます。

少額訴訟と手形・小切手訴訟の共通点・相違点について、下記図表でしっかり押さえましょう。

(※両者に共通する箇所につき、マーカーを引いてあります。)

分野:民事訴訟法 督促手続 正答率40.8%

平成20年度 第5問 肢ウ(CS問題ID:H20053PA)

【問題】
債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、債権者に対しその旨を通知しなければならず、債権者が新たな送達先の申出をしないときは、支払督促の申立てを却下しなければならない。

【解答・解説】
誤り債権者が申し出た場所債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、その旨を債権者に通知しなければならない。この場合において、債権者が通知を受けた日から2か月の不変期間内にその申出に係る場所以外の送達をすべき場所の申出をしないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなされる(民訴388条3項)。

(コメント)
支払督促の送達に関するかなり細かい知識です。条文を最後まで読んでいないと、間違えてしまう肢であると思います。「取り下げたものとみなす。」という結論までしっかり押さえましょう。
支払督促は民事訴訟法の一番最後に掲載されている知識であるため、学習を進めてもなかなか辿り着けないもどかしさがあります。ですが、条文知識の暗記で対応できることが多いため、重要条文をしっかり読むようにしてください。

分野:民事訴訟法 訴訟手続/既判力 正答率:42.9%

平成21年 第4問 肢エ(CS問題ID:21044PA)

【問題】
教授:XがYに対して甲土地の所有権の確認を求める訴えを提起し、その請求を認容する判決が確定した事例で検討しましょう。XY間の前訴の確定判決の効力がXY以外の者に及ぶかどうかが問題となる場合として、どのようなことが考えられますか。

学生:Yが、前訴の判決後、Cとの間において、甲土地についての賃貸借契約を締結し、これに基づいて甲土地をCに引き渡した場合、Cに対して確定判決の効力が及びます。

【解答・解説】
誤り。XがYに対して甲土地の所有権確認の訴えを提起し、Xの請求を認容する判決が確定した後、YがCとの間で甲土地の賃貸借契約を締結し、当該契約に基づいて甲土地をCに引き渡した場合、XY間の前訴の確定判決の効力はCに及ばない。民事訴訟法115条1項4号の「当事者等のために請求の目的物を所持する者」とは、前訴の内容が特定物の給付の訴えである場合において、当該特定物の所持につき固有の利益を持たず、専らこれを当事者等のために独立して占有している者を指すと解されているところ、本問では、前訴であるXY間の訴えの内容が確認の訴えであることから、Cは民事訴訟法115条1項4号の「当事者等のために請求の目的物を所持する者」に該当しないためである。

(コメント)
民事訴訟法第115条1項は、確定判決が及ぶ者の範囲(既判力の人的限界)を規定しています。本問の事例については、前訴が所有権の確認の訴えであり、115条1項4号に規定されている「当事者のために請求の目的物を所持する者」が登場する前提にないことをしっかり押さえてください。
その上で、115条1項4号に実際に当てはまる具体例を確認しておきましょう。

いずれも建物明渡請求訴訟、すなわち給付の訴えの場合であることをしっかり認識してください。

分野:民事訴訟法 訴え・口頭弁論及びその準備/確認の利益等 正答率:43.8%

平成30年度 第2問 肢ウ(CS問題ID:H30023PA)

【問題】
金銭消費貸借契約の債務者が、債権者に対し、その債務を弁済した事実自体の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。

【解答・解説】
正しい単なる事実関係の確認は、何ら法的な紛争の解決をもたらさないので、原則として確認の利益が認められない

(コメント)
シンプルな問題ですが、意外と正答率が良くないです。
確認の利益」とは、「権利又は法律関係等の確認を求める確認訴訟における訴えの利益」のことです。ですので、法律関係ではなく単なる事実にすぎない「弁済した事実」を確認の訴えの目的としても、確認の利益は認められません

確認の利益の有無について、下記図表で有名判例を押さえておきましょう。

分野:民事訴訟法 訴え・口頭弁論及び準備/弁論準備手続 正答率44.9%

平成24年度 第3問 肢オ(CS問題ID:H24035PA)

【問題】
裁判所は、決定により、受訴裁判所を構成する裁判官以外の裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。

【解答・解説】
誤り。裁判所は、受命裁判官弁論準備手続を行わせることができる(民訴171条1項)。本肢の「受訴裁判所を構成する裁判官以外の裁判官」とは、受託裁判官のことである。

(コメント)
民事訴訟法171条は“受命裁判官”による弁論準備手続を規定しています。あくまで裁判所が受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができるのであって、裁判所や受命裁判官が受託裁判官に弁論準備手続を行わせることができるわけではないので、注意しましょう。

紛らわしいので、受命裁判官と受託裁判官の定義も併せて押さえましょう。
受命裁判官受訴裁判所を代表して権限を行使する、合議体を構成する裁判官
受託裁判官:受訴裁判所の委託(嘱託)を受けて権限を行使する裁判官

如何でしたでしょうか。
隙間時間でPaletteを読んでくださっている方も多いと思いますので、この記事だけで一気に知識を叩き込めるように、択一六法の画像定義を多めでお送りしました。

ちなみに、民事訴訟法等の50%未満の肢は全部で8肢ありました。
特に民事訴訟法民事保全法は、繰り返し演習して条文知識を深めていけば確実に得点源とすることができる科目なので、是非力を入れていただきたいです。
学習すべきことが多くて大変ですが、マイナー科目の演習についても、民事訴訟法から少しずつギアを上げていきましょう。

★back number
CROSS STUDYの活用方法について
2月・3月の過ごし方について
是非併せてご覧ください!

タイトルとURLをコピーしました