皆さんこんにちは。
クレアール司法書士講座を受講して令和4年度司法書士試験に合格したR.Nです。
本日、長らくお待たせしておりましたCROSS STUDY供託法・司法書士法および令和5年度過去問(全科目)をリリースいたしました! 是非日々の学習にお役立てください。
供託法は、つい学習を後回しにしてしまいがちな科目ですが、過去問の知識をしっかり身に付けていれば、本試験でも3問とも正解できる確率が高い科目ですので、是非CROSS STUDYをフル活用していただきたいです。
司法書士法は、近年改正があった分野もあります。1問しか出ませんが、きっちり知識を押さえて得点してください。
令和5年度過去問は、直近の問題ですので是非とも何度か演習いただきたいと考えています。「出題サイクルについて、前年に出題があった分野からは2年連続で出題しにくいので、重視する必要はない」という考えもあるようですが、やはり直近の過去問から傾向を知ることは重要であると思います。
記述式の配点変更について
さて、令和5年12月4日に、法務省から
「令和6年度司法書士試験から、記述式の配点を2倍(140点満点)とする。」
という重大発表がなされました。
今回は、記述式の配点が2倍になることで、今後の学習方法に影響が出るのか?について、
・日々の学習における択一式と記述式のウェイト
・本試験に向けての対策
という観点から、個人的な考察を書かせていただきます。
まず、前提としまして、
令和6年度の司法書士試験から、記述式の配点が2倍になったことにより、記述式の得点の全体に対する割合が
【従来】
70点満点/280点満点→25%
↓
【令和6年度以降】
140点満点/350点満点→40%
と15%も増加することとなりました。
(※択一式の配点に変更がないと仮定した場合の割合です。)
つまり、「記述式の得点の合否に対する影響が大きくなった」と言えます。
日々の学習における択一式と記述式のウェイトについて
記述式の配点が2倍になったことにより、「常日頃から、記述式の学習に時間をより多くかけた方が良いのではないか?」というお考えの方も出てくるかと思います。
ですが、個人的にはその必要は無く、すなわち従来通りの学習方法を継続すればよい、と考えております。
理由は、以下の通りです。
①午後の部の試験時間に変更がない以上、午後の部が時間勝負であることに変わりがないため。
つまり、「択一式に60分程度、記述式に各60分程度をかける」という従来のセオリーを大きく変えることは難しいです(※試験時間に変更はない旨もあわせて発表されています)。
∵記述式の時間をより多く確保しようとすると、択一式にかける時間が過少となり、却って択一式の精度を欠き、午後の部の択一式の基準点未達のおそれがあります。
⇒あくまで、本試験での択一式・記述式の時間配分を現状維持、かつ択一式の精度を維持したうえで、記述の精度を更に増す対策を考えていく必要があると言えます。少なくとも、記述式の学習のために、択一式の学習時間を削るという選択は採らないほうが良いと考えます。
②記述式の学習は1問(1題)の問題演習に時間が多くかかることから、択一式の学習時間をしっかりと確保する必要性が依然として高いことを考えると、記述式に意識を向けすぎるのは危険であるため。
∵個人的な感覚ですが、記述式の演習問題は1問(1題)解き終わる度に達成感を覚えやすく、また解答力が高まると楽しく感じるようになることから、択一式の学習よりも没頭しやすいという印象があります。特に本番と同様の形式の実践的な記述式の演習について、体感よりも多くの時間を学習に投下する傾向にあると思います
⇒日頃の記述式の学習において特に重要な点は、
①ひな形の精度を上げること
↓
②枠ズレを起こさないために連件申請のパターンを理解すること
↓
③自分の解法を確立すること
↓
④時間配分をきっちり守って演習を行うこと
の4つであると考えます。
いたずらに記述式に時間を投下したところで、すべてが得点に結びつくとは限りません。
→①~④について学習(演習)時間をそれぞれ設けて、時間管理を行いながら目的意識を持って学習を進めていった方が効率が良いです。択一式の学習との両立をすることが前提であるため、漫然と記述式の演習時間を増やすよりも、時間を区切って質の高い学習を行うことを優先すべきであると考えます。
特にひな形(申請情報・添付情報)については、記述式の配点が2倍となり、より厳しい採点が可能となったことから、今まで以上に精度に留意して記憶する必要があり、本番の緊張した状態で書き切ることができるか否かで、得点差がつきやすくなると考えています。
また、枠ズレによる減点が単純に今までの2倍になると考えると、総合点に対する打撃が相対的に大きくなり、今まで以上に致命傷を負うことになってしまいますので、連件申請のトレーニングの重要性もますます増していくと思います。
本試験に向けての対策について
上述の通り、日々の学習における択一式と記述式のウェイトは変える必要がないと考えております。
ですが、実際に本試験を受けるにあたり、対策を講じる必要性は高いと考えております。
以下、具体的に述べていきます。
①記述式に使う時間及び頭の体力をしっかり確保すること。
記述式に使う時間を確保するためには、まず確実に択一式を60分程度で解答する力を身に付けることが重要です。記述式の得点力を上げるためにやるべきことは、記述式の勉強のみではありません。
⇒「短い選択肢から読み始める」
「基礎知識や過去問知識の肢(いわゆる”軸肢”)を瞬時に判断・解答できるようにする」
「選択肢の組み合わせから検討する(5肢全てを読まない)」
「捨て問の見極めを徹底する」等、
択一式のテクニックを磨きつつ、午後の部全体の訓練に一層注力することが重要であると考えます。
択一式の解法から戦略を立ててブラッシュアップすることができれば、記述式の時間を確実に残すことができるのみならず、記述式を解く為の頭の体力をより多く残すことにも繋がると思います。
②択一式と記述式の解く順番を再検討すること。
記述式の配点が2倍になったからといって、記述式から解き始めた方がよい、とは安易に言えないとは思います。不動産登記および商業登記の記述式を先に解き、択一式を最後に回した結果、択一式を解答する時間が足りなくなってしまい、択一式の基準点が未達となってしまったら本末転倒です。
ですが、そのことをよく認識した上で、改めて択一式と記述式の解く順序を考えてみるというのは、意義のあることかと考えております。なぜかというと、記述式の配点が倍になった以上、不動産登記と商業登記のより得意な方、あるいは当日先にざっと問題を眺めて解答しやすいと判断した方を先に解いておく、という判断をしたほうが、択一式を解く際に心に余裕が生まれるという考え方もあるからです。
午後の部の択一式と記述式の各問題にかけられる時間をそれぞれ1時間とすると、配点は択一式:105点/1時間、記述式: 140点/2時間(1時間あたり70点)となり、やはり択一式の方がタイムパフォーマンス良く点数を稼げるように見えます。ですが、択一式には捨て問が含まれることもままあり時間をロスするおそれがあること、また択一式の解答力が精神状態の揺らぎに左右されてしまうおそれがあることを踏まえると、緊迫した午後の部が開始してすぐに択一式に臨むより、まず記述式の問題を眺めてみて、記述式を一題しっかり解いておく、という流れも検討する価値があると思えるためです。
なお、脱線しますが、私は令和4年度司法書士試験の際に、自分と同じ解く順序の方をお見かけしたことがないほどマイナーな順序で解答してしまったので、今回の配点変更に関わらず、「自分のやり方がお勧め」ということを参考にお示しすることはできません。
ですが、「自分に最も合った解く順序を検討する」ということについては、人一倍こだわって検討し、本試験でも実践したことは非常に良かったと思っております。
ですので、この度の記述式の配点変更を機に、今一度問題を解く順序を考え直し、答練や模試で様々な解く順序を試してみて検討するというのは、良いのではないかなと考えました。
択一式と記述式の一方が得意で他方が苦手という方へ
①択一式が得意で記述式が苦手な方へ
まずは今回の変更に気落ちしすぎないようにしていただきたいです。試験対策として行っていくべき勉強の中身は今までと変わりませんので、情報に惑わされず淡々と学習を続けてください。
記述式の配点が2倍となり、記述式の得点の全体に占める割合が高くなった以上、択一式のみで逃げ切り点を確保するのは難しい状況になってしまったと思います。ですが、今まで通りの択一式の実力は維持してください。その上で、記述式の解答力を高めるために、日頃から質の高い記述式の学習を行い、午後の部の対策にしっかり向き合っていただきたいです。
特に午後の部の択一式が得意という方は、軸肢の検討や捨て問の判断に時間を要しないことから、記述式に十分な時間を確保することができ、今回の変更は自分に有利に働くのだと、ポジティブに考えていただきたいです。
②記述式が得意で択一式が苦手な方へ
得意な記述式で多くの上乗せ点を獲得できる見込みが増して、喜ばれているかと思います。ですが、択一式の基準点を突破できない限り、記述式が採点されることはあり得ません。記述式で沢山上乗せ点を稼ぐために、まずは択一式の学習をぬかりなく行いましょう。その上で、ご自身が記述式で最もパフォーマンスを発揮できるように、午後の部の解く順番について作戦を練ってください。決して油断して、午後の部の択一式で基準点未達となってしまわないように、得意な記述式の演習ばかり行うようなアンバランスな学習は行わないでください。
いずれにせよ、令和6年度司法書士試験が、「記述式の配点が140点となってから初めて実施される司法書士試験」となります。受験される方々は皆同じ条件であり、皆同じ不安と戦いながら日々学習されています。過剰に不安に振り回されることなく、今まで通りの学習をしっかりと継続していってください。様々な情報を目にしすぎて平常心を失い、自分を見失わないようにしていただきたいです。
最後に
司法書士試験は「実務家登用試験」であると言われていますので、合格するために記述式においてもそれなりの得点を要求されることは当然と言えば当然であると思います。
今回の配点変更に動揺しすぎることなく、午後の部の作戦を立て直す良い機会と捉え、前向きに学習を進めていってください。
年末まで残りの日数もかなり少なくなりました。
悔いの残らないように、キリ良く年内の学習を完了することができるように、日々の学習ノルマをこなしていってください。
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