CROSS STUDY民事訴訟法等リリースしました!&正答率50%未満の不動産登記法の過去問肢のご紹介

司法書士コラム

皆さんこんにちは。
クレアール司法書士講座を受講して令和4年度司法書士試験に合格したR.Nです。

本日、長らくお待たせしておりましたCROSS STUDY民事訴訟法・民事執行法・民事保全法をリリースいたしました! 是非日々の学習にお役立てください。

民事訴訟法等はマイナー科目に分類されますが、合計7問も出題され、特に民事訴訟法5問とかなりボリュームがあるため、可能な限り年内に着手(遅くとも年明けには着手)していただきたい科目であると考えます。民事執行法は、1問しか出題がないわりに難易度が高いですし、手続としては「民事保全→民事執行」の流れですので、まず民事保全法から固めていくのも、個人的にはアリだと思います。民事保全法は、過去問知識が繰り返し出題される傾向がありますので、確実に正解したい科目です。

民事訴訟法等は、過去問題の知識のみで解ける問題が出題される確率が高いので、CROSS STUDYを大いに活用いただきたい科目であると考えています。

本日は、現段階でのCROSS STUDY上のデータをもとに、不動産登記法の正答率50%未満の過去問肢について、一部抜粋してご紹介したいと思います。

不動産登記法の正答率50%未満の肢は27肢もあり、民法(13肢)や会社法(4肢)と比較すると、かなり多い結果となりました。
不動産登記法は、民法並みに範囲が広いにも関わらず、民法ほど身近なテーマが多くないため記憶に残りにくく、やはり難敵であると再認識させられました。

※以下、CROSS STUDY画面右上の8桁の問題IDを、「CS問題ID」と省略して示します。

分野:登記手続/事前通知 正答率:34.0%

令和4年度 第17問 肢エ(CS問題ID:R04174PA)

【問題】
甲不動産の所有権の登記名義人の住所の変更の登記と当該登記名義人を登記義務者とする甲不動産の所有権の移転登記の申請を同時にした場合において、その住所の変更の登記に係る住所の変更があった日から3か月を経過しているときは、登記官は、事前通知のほかに、本件登記の登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、本件登記の申請があった旨の通知をすることを要しない。

【解答・解説】
誤り。登記識別情報を提供することなく申請された登記が所有権に関するものである場合において、登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、事前通知のほか、登記義務者の登記記録上の前の住所に宛てて、当該申請があった旨が通知される(不登23条2項、前住所通知)。ただし、当該所有権に係る登記の申請日が、当該登記義務者の住所についてされた最後の変更登記の申請に係る受付日から3か月を経過しているときは、前住所通知は不要となる(不登規71条2項2号)。
本問では「その住所の変更の登記に係る住所の変更があった日から3か月を経過しているときは」とされていることから、前住所通知が不要となるための要件を満たしていないため、誤りとなる。

(コメント)
前住所通知は、「当該所有権に係る登記の申請日が、当該登記義務者の住所についてされた最後の変更登記の申請に係る受付日から3か月を経過しているとき」に省略されます。
本肢は、甲不動産の所有権の登記名義人の住所の変更の登記と当該登記名義人を登記義務者とする甲不動産の所有権の移転登記の申請を同時に申請しているため、前住所通知を省略する要件に当てはまりません。
事前通知周りの実務色の強い知識は、改めて問われると意外とわかっていないことが多い印象です。本肢も、「3か月」というキーワードに引っ張られないように意識する必要があると思います。

分野:担保権等に関する登記/根抵当権の元本確定の登記 正答率:39.6%

平成22年度 第24問 肢エ(CS問題ID:H22244PA)

【問題】
根抵当権の担保すべき元本が確定したが、根抵当権設定者Bが確定の登記の申請に協力しない場合において、根抵当権者Aが当該根抵当権が確定していることを確認する確定判決を得たときは、Aは、単独でその登記の申請をすることができる。

【解答】
誤り。不動産登記法63条1項にいう判決とは、登記手続をすべきことを命じた給付判決であることを要し、確認判決はこれに該当しない。したがって、根抵当権者であるAは、当該判決に基づいて、単独で根抵当権の元本の確定の登記を申請することはできない(昭54.11.8-5731号)。

(コメント)
根抵当権の元本確定の登記であっても、根抵当権者が単独で申請するためには、「判決による登記」を規定する不動産登記法63条1項の通りに、「登記手続をすべきことを命じた給付判決」が必要となりますので、判決の種類には注意を払うようにしてください。
本肢は、さらっと読んで正解であると判断したくなる肢、という印象を受けました。

分野:登記手続/添付書面の原本還付 正答率:42.9%

平成29年度 第17問 肢イ(CS問題ID:H29171PA)

【問題】
売買を登記原因とする賃借権の移転の登記を申請する場合において、当該賃借権の賃貸人Aの所在が知れないために裁判所によって選任された不在者の財産の管理人Bが、裁判所の許可を得て当該賃借権の譲渡について承諾し、そのことを証する書面及び当該書面に押印されたBの印鑑について裁判所書記官が作成した証明書を添付したときは、いずれの書面についても、原本の還付を請求することができない。

【解答】
誤り。本肢の場合、不在者財産管理人Bが裁判所の許可を得て賃借権の譲渡について承諾したことを証する情報は、不動産登記規則55条1項ただし書の「当該申請のためにのみ作成された…その他の書面」該当しないため、原本の還付を請求することができる。一方、当該書面に押印されたBの印鑑について裁判所書記官が作成した証明書は、不動産登記規則48条1項3号に規定する印鑑証明書であるため、原本の還付を請求することができない(不登規55条1項)。

(コメント)
「不在者財産管理人が裁判所の許可を得て賃借権の譲渡について承諾したことを証する情報」と「当該書面に押印された不在者財産管理人の印鑑について裁判所書記官が作成した証明書」の2つの書面について、原本還付の可否を問う問題です。問題文が非常に長く、本試験ではきっちり読む時間を確保するのは難しいと思われることから、他の肢から正答を検討した方がよいと思います。
原本還付の可否の知識は実務を知らないとなかなかイメージが湧きにくいと思いますが、「その登記申請のためにのみ作成・準備された添付資料は原本の還付を請求することができない」という大原則を押さえ、それに当てはまりそうか否か、という観点から暗記していくと良いと思います。

分野:担保権等に関する登記/抵当権の変更登記 正答率:43.6%

令和2年度 第15問 肢ア(CS問題ID:R02151PA)

【問題】
相続を登記原因とする抵当権の債務者の変更の登記を申請する場合は、登記原因証明情報として変更前の債務者の相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した書面を提供しなければならない。

【解答】
誤り。権利に関する変更の登記を申請する場合、申請情報と併せて、登記原因を証する情報を提供しなければならない(不登令別表25添イ)。相続を原因とする抵当権の債務者の変更登記を申請する場合は、被相続人の出生から死亡までの除戸籍謄本及び相続人の戸籍謄抄本等が該当することになるが、特にこれらの書面に限定されているわけではなく、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した書面でなくとも登記原因証明情報として提供することは可能である。

(コメント)
前提として、抵当権の債務者の変更の登記は、共同申請(権利者:抵当権者、義務者:抵当権設定者/所有権者)で行われます。登記義務者を関与させることで、登記の真正を担保できますので、登記原因証明情報として必ずしも公文書を添付する必要はありません

分野:権利に関する登記 通則/相続に関する登記(遺言) 正答率:44.8%

平成16年度 第26問 肢ア(CS問題ID:H16261PA)

【問題】
法定相続分による相続登記がされた後、共同相続人のうちの一人に特定の不動産を相続させる旨の公正証書遺言が発見されたときは、当該不動産を相続した相続人は、当該相続登記の更正の登記を単独で申請することができる。

【解説】
正しい。甲土地について、A及びBの名義で法定相続分での共同相続による所有権の移転登記がされている場合において、「甲土地をAに相続させる」旨の特定財産承継遺言が発見されたときは、登記原因及びその日付を「年月日特定財産承継遺言」として、登記権利者であるAから単独で所有権の更正登記を申請することができる(令5.3.28-538号)。
※本問は、令和5年4月1日施行の改正法令の規定を反映しています。

(コメント)
令和5年度改正により、過去問出題当時と結論が変わった肢になります。司法書士試験は複数年受験する方が多くいる難関資格試験ですので、今までの過去問知識が染みついている受験生が沢山いると思います。特に重要分野の改正点については、今までと結論が大きく変わる論点を中心に、しっかり把握するようにしましょう。

以上、正答率が45%未満である5肢についてご紹介いたしました。
これらについて全て正解することができた方は、不動産登記法の細かい知識まで身に付いていて、大変素晴らしいと思います

午後の部の科目は、制限時間が厳しいことから、問題文の長さや形式等によっては5肢全てを検討するということが現実的でない場合が多々あります。
ですので、1肢形式に改題しているCROSS STUDY上で演習をすると、5肢択一形式である過去問よりも難しい部分はあると思います。
それでも、一応直近20年に過去問で出題された知識になりますので、可能な限り吸収するようにしましょう。

寒い日が多くなりましたが、昼間は暖かい日がたまにあり油断しそうになります。
体調管理に留意しつつ、年末に向かって、日々の学習に励んでください。

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