皆さんこんにちは。
クレアール司法書士講座を受講して令和4年度司法書士試験に合格したR.Nです。
初めに…経験談
自分の経験を思い出しますと、合格年度の前年の9月中旬頃は、
択一式の学習として、
・民法・不動産登記法一体講義(120単元)の視聴
・憲法・刑法の基本講義(各19単元)の視聴
・クレアール過去問題集 民法および不動産登記法 過去問題集 3周
記述式の学習として、
・不動産登記書式講義(27単元)の視聴
・書式ひな形トレーニング不動産登記(1単元)の視聴
・書式実戦トレーニング不動産登記(6単元)の視聴
を完了している状況でした。
現状の合格ルート2年セーフティー春コースに相当するコースを受講していましたので、
勉強の進度としてはまずまずであったと思っております。
ですが、ここから先は新しく始まる商法(会社法)・商業登記法一体講義全70単元の受講と
不動産登記記述の演習を両立する必要があり、
(付け加えて言うと10月に宅地建物取引士試験も申し込んでおり、)
不慣れな商法(会社法)・商業登記法の学習内容のボリュームや、基本事項の暗記のしにくさに、
11月から12月にかけて、受験生活を開始して初めて挫けそうになったことを
よく覚えております。
当時は専業受験生として週に2日5~6時間程度のアルバイトをしており、
フルタイム勤務をされながら司法書士を目指されている方に比べたら時間は沢山ありました。
それにもかかわらず、挫折しそうになってしまったのは、
・範囲の広い専門的な内容の科目の学習を複数並行する難しさ
・「択一式」「記述式」という全く異なる形式の問題演習を継続する難しさ
は勿論のこと、
・商法(会社法)・商業登記法の、正解(=得点)に繋がる基本的な知識を
満遍なく維持する難しさ
に非常に苦しんだためです。
商法(会社法)・商業登記法があまりに苦手でしたので、
本試験の年の2、3月頃まで問題演習が全く捗らず、
「今年の本試験は諦めなければならないかな…」と
ずっと悲観的な気持ちを抱えながら勉強していました。
具体的に言うと、商法(会社法)と商業登記法の過去問題集をそれぞれ
通しで解けるようになったのが2月の終わり頃で、全体の正答率は7割程度でした。
(年内は全く歯が立たない状態でしたので、正答率は半分程度でしたし、
とても通しでは解けませんでした。)
そこで、今回は特に短期合格を目指す初学者の方に向けて、
「商法(会社法)・商業登記法の学習で挫折しないように」というテーマで、
「現在の自分が当時の自分にアドバイスするとしたら…」というコンセプトで、
執筆していきたいと思います。
なお、学習経験者の方であっても、
商法(会社法)・商業登記法への苦手意識がずっと拭えない…
という方も多いので、学習の順序・時期等について有用な部分もあるかと思われます。
よろしければ是非ご覧ください。
なぜ商法(会社法)・商業登記法が難しく感じられるのか?
前提として、司法書士試験で出題される商法(会社法)は、
各種国家試験で出題される商法(会社法)の中でも、最高難易度である
と言っても過言ではないと思われます。
これは、司法書士試験で出題される商法(会社法)は試験範囲が非常に広く、
かつ問われる知識が非常に細かいためであると考えられます。
売買や賃貸借などの身近な事例が数多く登場する民法や、
民法の知識をもとに学習を進めることができ、
また司法書士業務としてのイメージも湧きやすい不動産登記法
(机上の学習のみではイメージを掴みにくい分野も勿論ありますが…)と比較すると、
商法(会社法)は多くの方にとってなじみがない内容であり、
非日常的に感じられる分野が多いことから理解中心の学習がしにくく、
また商業登記法は商法(会社法)の理解を前提とするため、
商業登記法単体としての学習がなかなか進まない、という特徴があります。
つまり、
・商法(会社法)は理由付けが浮かびづらい知識が多く、
学習に慣れるまで長期記憶しにくい内容が大半を占めている。
・商法(会社法)の知識が盤石でないと商業登記法の問題演習がスムーズにいかないため、
この2科目の学習範囲の広さと相まって焦燥感を感じやすい。
と言えると思います。
しかし、これらの特徴は逆に言うと、
一度商法(会社法)をモノにしてしまえば、商業登記法に連動する部分が大きいことから、
択一式で安定した得点を目指しやすい科目である、
更に言うと記述式の学習(ひな形の確認)も併せて行いやすい「おトクな科目」である
とも言えると思います。
商法(会社法)・商業登記法の序盤の問題演習で挫折しないように…
商法(会社法)・商業登記法の基本講義を1単元ずつ視聴して、
CROSS STUDYや過去問題集でその単元に対応した問題演習を行っても、
特に初学者の方はなかなか手ごたえを感じにくいと思います。
そこで、商法(会社法)・商業登記法一体講義70単元を一通り視聴して(※)、
問題演習中心の段階になったときに、
・どのような時期に、どのような順番で演習していくと効率が良いか
・分野ごとの特徴
をご紹介していきたいと思います。
(※)70コマすべての視聴を完了していない方であっても、
下記の①~⑧のブロックごとに区切って
講義視聴→商法(会社法)・商業登記法の横断的な問題演習→商業登記ひな形の確認
を行っていただくことは、より短期間での知識の習得を目指す近道になるかと考えます
(理由は後述の★をご覧ください)。
その場合は、目安として下記に書いている完成時期の1か月前までに、
択一式過去問で8割正解を目指してください。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
①商法(会社法)総論、商業登記通則
オリエンテーションのような気持ちで視聴し、該当の過去問を演習します。
全分野の過去問演習をしてから復習した方が理解が深まる事項もあり、
何度も復習する機会はあると思いますので、軽く準備体操のつもりで学習してください。
②設立、株式、機関【商法(会社法)・商業登記法を横断して演習する。】
会社法・商業登記法の1つ目のヤマです。
基本事項として会社法という科目全体の前提になる3分野なので、
最も時間をかけて学習します。
具体的には、
①設立の講義を視聴
↓
②設立の分野の会社法の過去問を演習
↓
➂設立の分野の商業登記法の過去問を演習
↓
④設立の分野の商業登記ひな形を確認
という4ステップで知識の整理を目指します。
会社法の過去問演習のみ、あるいは商業登記法の過去問演習のみを行うのではなく、
会社法・商業登記法それぞれに対応する分野の過去問演習を併せて行うようにしてください。
ここで会社法の知識の土台をしっかり作っておきます。
簡単に書いてしまっていますが、会社法・商業登記法において、
この3項目の比重は非常に重いです。
具体的に言うと、約450ページの「クレアール基本テキスト 商法(会社法)・商業登記法」
のうち、約260ページ(≒6割弱)を占めます。
大袈裟かもしれませんが、この3項目を得点源として知識を身に着けることができるか否かに、
商法(会社法)・商業登記法を先に進められるかが懸かっています。
すでに一通りの講義を視聴している方であれば、
最悪年内は全部ここに時間を充てるくらいの気持ちで、学習に臨んでもいいくらいである
と個人的には考えております。
③計算、定款の変更、解散・清算【商法(会社法)と商業登記法を横断して演習する。】
②のヤマを越えることができた方は、②の分野と同様に、
計算、定款の変更、解散・清算の分野についても、
会社法及び商業登記法の過去問演習、商業登記ひな形の確認を併せて、
横断的に行ってください。
→ここまでの分野の問題演習を優先してしっかり行うことで、
商法(会社法)・商業登記法のメインとなる「株式会社」の知識を
着実に身に着けることができます。
———-①~③の分野は、最遅で年末までに択一式過去問で8割正解を目指し、
その後も維持してください。———-
④持分会社【商法(会社法)と商業登記法を横断して演習する。】
②の分野と同様に、持分会社についても、
会社法と商業登記法の過去問演習、商業登記ひな形の確認を併せて、横断的に行ってください。
持分会社と株式会社とを比較しながら学習し、
株式会社の全体的な知識(主に設立、役員、計算、解散・清算)の復習も
併せて行うようにしてください。
⑤社債
会社法特有の分野です。
社債と株式とを比較しながら学習し、株式の知識の復習も併せて行うようにしてください。
→④・⑤は学習を進めながら、②の知識の再確認も随時しっかり行うようにしてください。
②の知識が土台となって、新しい④・⑤の知識が積み重なっていくのを実感されると思います。
⑥商法総則・商行為【商法(会社法)と商業登記法を横断して演習する。】
商法総則・商行為についても、会社法と商業登記法の過去問演習を併せて、
横断的に行ってください。
商法は、適用対象としての取引の主体に個人事業主が含まれる法律ですので、
会社のみを適用対象とする会社法よりは、比較的身近に感じやすい法律であると思います。
試験範囲は狭いですが、商法として午前の部の第35問で必ず1問出題されますので、
得点源にしやすい分野と言えます。
今までに学習した株式会社・持分会社の分野とはかなり雰囲気が変わり、
リフレッシュになると思います。一気に覚えてしまいましょう。
⑦特例有限会社、外国会社、一般社団法人・一般財団法人
商業登記法特有の分野です。暗記色が非常に強く、覚えるのになかなか時間がかかる
と思いますので、何度も繰り返し学習しましょう。
教材の後半に載っていることが多く、勉強が間に合わないと捨ててしまいたくなる分野ですが、
暗記さえしていれば得点できる問題が多く出題されます。しっかり学習しましょう。
特例有限会社は持分会社と、一般社団法人・一般財団法人は株式会社とそれぞれを比較して、
類似点と相違点を把握していくと、暗記しやすくなると思います。
外国会社はさらに別の独立した形態の会社として、
一から知識を覚えるようにすると良いと思います。
———-④~⑦の分野は、最遅で2月までに択一式過去問で8割正解を目指し、
その後も維持してください。———-
⑧組織再編【商法(会社法)と商業登記法を横断して演習する。】
商法(会社法)・商業登記法の2つ目にして最終かつ最大のヤマであり、
受験生にとってはいわば「会社法におけるラスボス」のような存在です。
苦手とする受験生が数多くいることから、
司法書士試験の全科目の全範囲において最高の難易度であるとも言えるかもしれません。
②の分野と同様に、組織再編についても、会社法と商業登記法の過去問演習、
商業登記ひな形の確認を併せて、横断的に行ってください。
「組織変更」「吸収合併」「新設合併」「吸収分割」「新設分割」
「株式交換」「株式移転」「株式交付」のどこの部分を学習しているか、
しっかり意識しながら問題演習をしてください。
資格試験全般において、ノート纏めをすることには個人的には反対なのですが、
組織再編に関しては、敢えてノート纏めをして、
ご自身なりに知識を再構築しても良いかもしれません。
長文の肢が多く、その難易度の高さから、
学習を後回しにすると捨ててしまいたくなる分野でもありますので、
直前期(司法書士試験の年の4~6月)に突入する前のまだ時間にゆとりがある2、3月頃に、
組織再編の知識の整理をしたシート等を作成し、直前期に何度も見直すと良いと思います。
商業登記記述でも単独の論点として出題されますので、
この時期に一旦知識を整理しておくことは大変有効であると考えます。
———-⑧の分野は、最遅で3月までに択一式過去問で8割正解を目指し、
その後も維持してください。———-
※クレアールの「司法書士基本講義テキスト」の掲載順とは、
⑥・⑦・⑧の順序が異なりますのでご注意ください。
★商法(会社法)・商業登記法については、それぞれの科目について全範囲を俯瞰するのに
時間がかかりすぎてしまい、学習状況の進捗が悪くなった結果、
司法書士試験そのものを挫折してしまったという話を聞くことがあります。
学習初期に手を広げすぎた結果、どの分野の知識も曖昧不明確になってしまい、
嫌になって学習をやめてしまうくらいなら、重要な知識に慣れてくるまでは、
重要項目に絞って商法(会社法)・商業登記法の2科目を横断しながら
学習を進めた方が良いと考えます。
商法(会社法)・商業登記法の2科目に跨いで問われる重要な分野の正答率を安定させることで、
これらの科目の演習に臨む際の精神も安定していくと思います。
その段階になってからやっと、商法(会社法)・商業登記法それぞれに特有な分野にも
手を広げられるようになるのだと思います。
最後に
如何でしたでしょうか?
商法(会社法)・商業登記法に対する、思わず身構えたくなるような苦手意識を
少しでも和らげることができたなら、この記事を執筆した甲斐があります。
このような横断的な学習を行えるのは、「非常識合格法」を基に
「商法(会社法)・商業登記法一体講義」を展開しているクレアールならでは!
とも言えると思います。
民法・不動産登記法の120単元をやっと乗り越えた先にある、
この商法(会社法)・商業登記法というヤマで挫折してしまうのは、とても勿体ないと感じます。
一人でも多くの受講生が、この商法(会社法)・商業登記法という難関をクリアし、
令和6年度司法書士試験まで駆け抜けることができるよう、祈っております。
大雨が降ってもなかなか涼しくならず、相変わらず暑く過ごしにくい日が続いています。
体調に十分ご留意の上、日々の学習に励んでください。
★会社法もリリースしています!CROSS STUDYの記事はこちらとこちら。