はじめに
こんにちは、講師・司法書士・行政書士の米谷です。
私は長い会社員生活の中で、40歳代になって初めて「司法書士になろう」と思い立ち、これも結構長いおよそ9年間をかけて(会社員をしながらだから、と少し言い訳)、50歳のときに司法書士になりました。
その9年間の間、ずっと、ほぼ毎日、少しずつでも勉強を続けられた動機(モチベーション)は何だったのかと考えると、やはり、「人生(そしてその大きな部分を占めることになる仕事)を、何とか変えたい!」ということに他ならないことに気づきます。
今回は、勉強を続けて、ようやく司法書士になれた私の歴史(といったら大げさですが)をお話しして、「私にも同じようにできる!」と共感される方への、ささやかなエールになってくれたらいいな、と思います。
私の場合
高校生のときから、理系も文系も、どちらが得意、好きということはありませんでした。なりたいと思う職業もなく、これから社会に出て他人と渡り合っていくことへの漠然とした不安から、研究者や技術者になる方が少し生き易いかも、という何とも頼りない考えで、理系のクラスにいました。
もっとも、大学入試では、当時のA日程で大阪大学基礎工学部を、B日程で同じ大学の法学部を受験し、受かった方に入学するつもりだったので、しっかりした決心があったわけではありませんでした。結局、自分の進む方向の示唆にもならず、どちらにも合格して少し迷いましたが、当初の予定通りに、基礎工学部に入学しました。
その後は、流れのままに、特別には得意または好きでもなかった(もちろん嫌いではない)化学の勉強をし、大学院も修了して、中堅の機械メーカーに技術者として就職しました。
いざ社会人になってみると、研究者や技術者よりも、客先とのやりとりが中心となる営業職の方が向いていることが分かってきて、入社10年目に、会社からもそのように命じられ、営業部門に異動となりました。
高校生のとき、他人との折衝に不安を感じ、それが少なくて済む(もちろん実際にはそんなことはありませんが)方向を選んだのに、思い込みというのは、自分のことでさえ、本当にあてにならないものです。
しかしながら、ベテランとなり、定年も見えてくる歳になると、実務は好きだけれども、組織のマネージメントの仕事は、ストレスのたまるものとなってきました。代り映えのしない組織内の人間関係においては、それを煩わしく感じる点で、高校生のときの直感は当たっていました。
少しうつうつとする日々の中で、少し前から知っていた司法書士の仕事が自分のやりたい仕事なのではないかと思うようになり、「司法書士になって、自分のできる仕事に集中しよう」という気持ちが、日に日に強くなっていきました。
司法書士試験に合格するためには、およそ3000時間の勉強が必要だといわれています。通勤電車の中でテキストを読むことを中心に、1日1時間のペースで勉強を始めましたが、最初の数年間の試験では、箸にも棒にもかかりませんでした。勉強が得意だった学生時代には決して無かった、なぜか学生服を着ている何かの試験の最中、ペンが全く動かず呆然としている悪夢をよく見るようになりました。悪夢ではなく、それが現実なのですが。
それでも、勉強の要諦は「積み重ね」なので、8回目の受験では、勉強時間もちょうど3000時間に達していて、合格することができました。50歳になっていました。
司法書士試験は、私と同じような境遇で、第二の人生としてチャレンジする人も多く、合格者の平均年齢は40歳を超えています。連帯感の強い、同期の合格者には、若い20歳代の女性もいれば、私のようなおじさんも沢山います。
合格した翌日には、会社に退職の申し出をし、コロナ禍の中、準備を進めて、1年後に個人事務所を開業しました。
50歳代で開業しても、不動産登記、商業登記、相続手続、成年後見業務、裁判所提出書類作成業務など、実地での勉強を一からしていくことになります。法学部をはじめから選んで、直接、司法書士や弁護士などを目指していたら、こんな回り道のような人生にならなかったのではないかと、ちらっと思うことがないわけではありません。
それでも、高校生のときの頼りない選択、大学(院)での化学の勉強、技術者、営業マンとしての会社員生活、そして結構長い司法書士試験受験勉強の、全ての経験があって今があるのだ、とすぐに思い直します。
幸いにして、司法書士に定年制度は無いので、まだまだこれから20年以上は、いろいろな勉強と成長を続けていきたいと思っています。
おわりに
本で見つけた言葉を紹介します。
・いちばん大切なことは、楽しく長く働ける仕事を見つけることです。
・自分だけのニッチを見つけ、人的資本を最大化するスペシャル(専門)に特化し、会社に依存せずに市場から富を得る、知的社会に生きるとはそういうことです。
・幸福についての研究では、「自分の人生を自分の自由に決められる」ことが、幸福に結びつくことが分かっています。
(以上、橘玲さんの著書より)
・真のポジティビズムとは、人生で起こる出来事のすべてにポジティブな意味があることを信じることである。
(田坂広志さんの著書より)
・将来どうなりたいかを絶えず考えている人たちは、現在において、よりよい決定をする。
・ポジティブな変化は、たまにする行動によってではなく、毎日の行動によってもたらされる。
(以上、ティボ・ムリスさんの著書より)
司法書士試験勉強を続けるモチベーションは、将来なりたい自分を強くイメージすること、それに尽きると思います。