次の司法書士試験を諦めかけている方へ

司法書士コラム

皆さんこんにちは。
クレアール司法書士講座を受講して令和4年度司法書士試験に合格したR.Nです。

暖かい日も多くなったかと思いきや、急にまた寒くなったり、寒暖差の激しい今日この頃ですね。
2月・3月の過ごし方の記事でも書きました通り、今年の司法書士試験に向けて心身を削るシーズン真っ只中であると思います。
既に合格しているからと、他人事のつもりで言っているわけではありません

2年前のこの時期、私は日々精神的に追い詰められながら、会社法と商業登記法を勉強していました。年内に1科目も満足に勉強が進まないまま年が明けて、気付いたら1か月…2か月…と過ぎてしまい、思ったように過去問の正答率が上がらない自分が情けなくて絶望していたことを、ここ2年、この季節になると思い出します。

そこで、本日は、自分の経験談を交えつつ、直前期に向けた学習で挫折しそうな人を励ます記事を書きたいと思います。
と言いつつも、個人の所感応援メッセージばかりを長文で書くと飽きが来るように感じられますので、後半は、最後の最後まで苦手科目の点数が伸び続けた経験談と、模試のシーズンに向けSNS(いわゆる「勉強アカウント」)との付き合い方の話をしたいと思います。
勉強の息抜きに、ご興味のある部分だけでもお読みいただけますと幸いです。

令和4年2月・3月頃の自分の状況

当時の私の状況としましては、試験直前の2月までは週に2日、3月からは週に1日、5,6時間/回のアルバイトを行っているのみの専業受験生でしたので、時間は沢山ありました
ですが、如何せん全科目全範囲を学習した上で司法書士試験に挑むのは初めてでしたので、とにかく勉強が試験本番に間に合うのか(もうマグレでも何でもいいので、戦えるレベルにまで成績を引き上げることが可能なのか)、日々焦りながら常に半分諦めそうになりながら)、死に物狂いで勉強を続けていました。

科目ごとに振り返ると、民法はもともと公務員試験や行政書士試験で、資格試験用として学んだ経験がありましたので、全範囲において司法書士試験の合格に必要十分というには程遠いものの、他の科目よりは、年末時点で比較的得点できていたように思います。
しかし、不動産登記法は「この知識はよく出題されている気がするから、いい加減覚えないとまずいな…」と、どの知識が重要であるかがそれなりに認識できるようになりつつも、その膨大な量に戦慄し、また何回学習しても身に付いた感覚が全くなく、「不動産登記法を勉強しても手応えがないだなんて、そもそも司法書士は向いていないのでは?」と意味のない自問自答を繰り返すこともありました。
それに輪をかけて、商法・会社法及び商業登記法が最も苦手で、どうしようもないほどに追い詰められていましたので、令和4年のこの時期(2月頃)は受験生活を通じて最も精神的にドン底でした。ただ、直感的に「会社法の知識は無理矢理暗記することでしか打破できない壁であり、それを突破しないと商業登記法の知識はまともに身に付かないだろう」という感覚だけが常に付き纏っていたので、がむしゃらに問題を解き続けてはいました。ですが、その出口が全く見えないことが、私の精神状態を更に悪化させていました。
なお、民事訴訟法等その他のマイナー科目に至っては、「まだメイン科目の会社法の知識すら固まってないのに、他の科目をやっている場合じゃない」と言い訳をするばかりで、問題演習は憲法・刑法・民事訴訟法等辛うじて過去問の1周目を終えていましたが、供託法・司法書士法ほぼ手つかずの状況でした。そのこともまた私の精神状態を悪化させる要因ではあったものの、会社法及び商業登記法の難儀っぷりに比べたらまだ可愛いものでしたので、マイナー科目を気に掛ける余裕はまだ殆んどありませんでした

具体的な演習内容について触れると、2月下旬頃には、会社法及び商業登記法への焦りが強すぎて、丸一日(朝9時~夜10時)かけて会社法の過去問全体を一気に解く、商業登記法の過去問全体を一気に解く(敢えて項目ごとの横断はしない)ということを初めてやってみました。裏を返せば、1月中は会社法及び商業登記法を通しで解けるだけの実力は付いていませんでした
そして、民法及び不動産登記法の択一式の演習は完全に横に置いてしまっている時期が度々ありました。学習歴の浅い不動産登記法については、少しずつでも、可能な限り定期的に触れるように心がけてはいましたが、民法は2か月ほど(1月・2月)全く手つかずでしたので、3月時点での民法への焦りはかなり大きかったです。特に債権法の分野は、不動産登記法の択一式・記述式いずれでも重なる部分が少ないため、3月に民法の教材を久々に開いたときに、ご無沙汰の知識ばかりで衝撃を受けたことを覚えています。

追い詰められたときにどうやって奮起するか

私は、令和3年の3月下旬に司法書士試験合格を目指すと決めて、5月末に当時勤めていた会社を半年足らずで辞めました。それ以前にも、国家公務員として5年近く働いておりましたので、司法書士試験を目指し始めた当時は、「公務員を辞めてまで入った会社をわずか半年足らずで退職した」という状況でした。ですので、公務員時代の同僚には特に心配されていて、「人生の選択の仕方が常人ではない」と言われたこともあります(仲が良い人に直接言われたので、悪口ではないと信じたいですが…)。
また、大学時代に、心身の弱さから司法試験を諦めてしまった経験もあり、それを自認していたにも関わらず「専業受験生」の立場に戻ってしまい、「自分の人生が本当に大丈夫なのか?」と日ごろから頻繁に不安に襲われていました。
そのような理由から、特に精神面において「背水のでしたので、専業受験生」特有の辛さには、人一倍理解があるつもりでおります。

専業受験生の辛さは、貯金が目減りしていく経済的な苦悩のみならず、社会との接触がなくなり(少なくなり)今のあるがままの自分では何にも貢献できていない、もはや生きている意味がないのではないか?自責の念罪悪感に駆られるような、本当にその立場にならないとわからない苦しみがあると思います。
ただ、司法書士等の難関資格の合格者全員が、メンタルが強靭で、喜怒哀楽に左右されることもなく常に着実に結果を残していっているというわけではないと、受験生であった頃から漠然と思っていました(身近に司法書士有資格者がいたわけではないのですが、なんとなく…)。
そこで、私は、気持ちがどうしても落ちてしまうときは、「このようなしんどい気持ちで勉強を続けている経験自体が、自分が司法書士になったときに絶対に役に立つ(大きく言うと、人生に深みが出る)。」と、ポジティブに(ある意味開き直って)考えるようにしていました。

今更ですが、そもそも司法書士は法律の「専門家です。そこで、「一体どのような専門家が、世の中の多くの人の頼りにされるのか・信頼されるのか?」を考えてみてください。
確かに、いついかなる時もメンタルを強く持ち続け、常に完璧に仕事を遂行することができる人は、素晴らしいですし、正直羨ましいです。ですが、人間はロボットではないので、「自分は、いついかなる時もメンタルを強く持ち続け、常に完璧に仕事を遂行することができます!」と断言できる人とは、どんなに優秀な人でも居ないと思います(実際に居たら、不気味に感じてしまいます)。
となると、人間性の話になりますが、依頼人が頼りにしたいと思う、あるいは依頼人に信頼される司法書士像は、依頼人の立場に寄り添い依頼人の悩みを我がことにように捉えて問題解決に頭を抱えながら終始責任感を持って(投げ出すことなく粘り強く奔走し続けることができる専門家ではないでしょうか。
司法書士試験は、その問われる試験内容実務家としての仕事内容直結するのみならず、「辛酸を舐めながらハードな受験勉強を継続する」という経験自体も、合格後の仕事ぶり思い描く「理想の司法書士像」直結すると感じられます。

どんなに今が辛くても、全てが未来の「肥やし」になると思って勉強してくださいもっと言うと、少し元気が出てきたら、司法書士試験合格後のあらゆる意味での(知識以外の意味においても)「糧」にしてやるつもりで勉強してください
そう考えると、私は、
まあ今は辛くて当然だし、病むのも仕方がないのかな…
でも自分が選んだ道だし、なるようにしかならないか…
病んでばかりいてももっと病むし、そろそろやるか…
という気分になってきて、渋々勉強に戻るようになりました。
そして、渋々であっても勉強を再開するようになると、徐々に「よっしゃ、やってやろ!」という当初のやる気が戻ってくるのでした。
専業受験生生活は、それの繰り返しでした。

自暴自棄になりそうなときに考えてほしいこと

専業受験生の「勉強するしかない立場」で、毎日毎日勉強ばかりに打ち込んでいると、答練や模試で思ったように点数が取れなかったときや、記述式の演習で大きく枠ズレしてしまったと等に、どうしようもなく自暴自棄になりそうになります。そういうときは、深呼吸をして、少し冷静になって、以下のことを考えてみてください。

・今年の本試験で結果を残すために、少しでも質の高い(生産性のある)勉強ができるように、日々模索しながら勉強しているか(=惰性で投げやりに勉強してしまっていないか)。
・今年の本試験で最大限のパフォーマンスを引き出すために、日々自律して、体調管理に留意しつつ、その時々にできることからコツコツ地道に知識を積み上げているか。
・自分の性格考慮し、その長所短所を見定めつつ、どういった勉強方法を取れば学習を継続し、本試験まで駆け抜けられるか分析できているか。

私は、自暴自棄になりそうになったときに、グッと我慢して(我慢できないときは一通り荒んでしまうこともしばしばありましたが)、こういった内容のことを漠然とでも考え始めると、少しずつやる気が戻ってくる気がしました
勿論これは受験生全員に当てはまることではないですし、「意識を高く持ち続けなければいけない」ということを言いたいわけではありません
ただ、自分の心の中にある小さな罪悪感日々の些細な怠りが積み重なることによって、いつかそれが大きな”病みになってしまうことがあると思います。自暴自棄になりそうなときは、そうした日常的な「心がけ」が足りないときであると感じておりますので、最近の自分の勉強内容や心の動きを振り返る良い機会と考えて、内省する時間どうして今自暴自棄な気持ちになってしまったのかを分析する時間)を設けると良いと思います。

まだまだ令和6年度司法書士試験まで時間はありますので、今自暴自棄になっているのはむしろチャンスです。直前期に自分を見失わず腰を据えて勉強するために、今は自分の心としっかり向き合ってください

苦手科目の正答率が最後の最後まで伸びた経験談

最後に、クレアールの教材ではなく市販の演習本(※)ですが、たまたま自分のメモが残っていたため、令和4年2月・3月時点の私の会社法及び商業登記法の択一式問題のリアルな正答率をお見せいたします。
(※)過去問形式ではなく、基礎知識のみ一問一答形式で問われる内容のものです。

・2月10日→77.2%
年明けからしつこく設立・株式・役員から順番に会社法と商業登記法の反復横跳びを繰り返したら、やっとここまで伸びてきました。初めての講義視聴から正答率を8割近くに持っていくまでの4、5カ月間非常に長く感じられ、本当に辛かったです。
この時の経験を元に、こちらの記事(会社法・商業登記法の学習で挫折しないようにを執筆しました。

・3月3日→87.4%
1か月弱で更に10%近く正答率をあげるのは、もっと辛かったです。この数字をずっと維持できていたわけではなくて多少上下しながら、本試験までジワジワと正答率が上がっていった感覚があります。この問題集ばかりやっていたわけではありませんが、結局のところ過去問を前提とした基礎知識の正答率が100%に迫るのは、本試験超直前の6月下旬頃であったように思います。
ちなみに、会社法及び商業登記法の過去問題集(5肢択一形式)を初めて通しで解けたのが2月末頃で、正答率は7割前後でした。基礎知識の正答率が8割を超えていたとしても、5肢択一形式になると曖昧な知識が邪魔をして混乱してしまう問題がまだ多くありました

なお、肝心の令和4年度司法書士試験での正答数は、会社法:7/9、商業登記法:8/8でした。
苦手科目であっても、しつこく繰り返せば最後まで伸び続けるということは、自身の経験から証明できたと考えております。

この記事を読んでくださった受験生の皆さまには、確証を持って判断できる軸肢を1つでも多く増やすために、苦手科目であっても妥協することなく最後の最後まで藻掻いていただきたいと強く願います。

SNS(いわゆる「勉強アカウント」)との付き合い方について

これから模試のシーズンが始まるので、おまけで書くことにしたのですが、思い入れが強すぎておまけの分量ではなくなったことをお許しください
また、私は勉強仲間づくりの為ではなく、自分の感情をコントロールするためにSNS(以下、「勉強アカウント」と呼びます。)を運用していましたので、全く参考にならないかもしれませんが、ご容赦ください。

前提として、私は受験生活を通じて、一貫して匿名・非公開・フォロワー少数の勉強アカウントを更新していました。
勉強アカウントに限らずSNSには中毒性があるので、頭ではわかっていても程よい距離感を掴めず、時間や精神を浪費してしまうことが多々あると思います。

そこで、直前期の勉強アカウントの使い方について、当時の「自分ルール」をご紹介(というより、持論を展開)したいと思います。本来なら、個別の受講相談(対面)でお話する内容のように感じておりますが、当時思うところが沢山ありましたので、記事にしました。

① 他人の模試や答練の結果は気にしない(反応しない)。
基本的に勉強アカウントに成績を上げる人は、成績が良い人が多いです
・成績が良い人→すごいね!
・成績が特段良いわけではない人→ありのままでいいね!
程度の受け流しで終わりにしましょう。

② 更新するときは、自分を奮起させることを積極的に書き込む。
例:「○○と○○と○○をもうちょっとなんとかすれば今年受かるかもしれない」
  「○○と○○と○○は苦手分野だったけど、最近マシになってきた気がする」
  「今度の模試、試しに遅刻して/トイレを我慢しながら受けてみようかな」
  「今夜は体調悪いからゴロ勉(寝っ転がりながら勉強)します」など。

③ 辛くなったら全力で弱音を吐く。
…人間には感情があるので、毎日長時間難しい勉強ばかりしていたら、弱音を吐きたくなって当然です。感情は揺れ動くものなので、当然に➁と両立すると思います。「我ながら情緒不安定で情けないなあ」と自嘲したくなりますが、その恥は掻き捨てます。

④ 勉強アカウントについてプライドを高く持たない。
 自分の成績について言及するときは、見栄を張らずありのままの成績を晒す。
…もし勉強アカウント自体にプライドを持ち始めて、成績や勉強時間、受験生活そのものについて見栄を張るのが主眼になってしまったら、「目的と手段が入れ替わる」最たる例となってしまいます。

⑤ 求めていないアドバイスや、自分の成績について何か言ってくる他人は相手にしない(無視する)。
…匿名の世界ですので、顔も名前も知りもしない人の適当な発言をまともに取り合って、消耗してしまう時間が勿体ないです。

⑥ 同じ合格目標年度の受験生の動向を気にしない。
…コメント、リプライやDM等をするにしても、前年度以前の合格者実務家の先生のみとやりとりさせて頂いていました。受験生同士のやりとりで「刺激になる」ことがあったとしても、それが「前向きな刺激」と感じられない人間関係である場合は、距離を置いた方が良いと思います。

⑦ 他のスクールの受講生や独学の受験生の動向を気にしない。
…⑤と被っているように見えますが、自分がやると決めた教材をやり切ることだけに集中するという意味で捉えてください。勉強アカウントで「誰が何を勉強した」と書き込んでいても、それが真実なのか確かめる術はありませんし、そもそも「勉強した」の程度にも個人の主観が大きく入っています自分の「勉強した」と他人の「勉強した」の度合いが完全に一致することはまずあり得ません

それと同じように、①にも関係するのですが、勉強アカウント上で模試の点数が高いことを自慢している人がいたとしても、偶然正解した数が多かっただけで、理由付けなどが適当で曖昧な知識かもしれません。それに、現時点での成績が良かったとしても、慢心してこれからの時期に油断するリスクもあるため、良いことばかりではありません
とにかく他人の動向は気にしないで、自分本試験の日に合格点を取ること」だけ常に考えてください。

⑧ 常に心に5%くらいの余裕を持つ。
今までにご説明した「自分ルール」の中で、最も重要視していたことかもしれません。これは、嘗て自分が受けた教えを基にした考え方です。
尊敬する大学時代のゼミの教授が「人生の大事なことは意外とで決まるから、7割くらい努力したら後は自然の流れに任せたほうがよい」ということを仰っていました。司法書士試験は流石に3割も余力を残して合格できるほど甘い試験であるとは全く思いませんが、私はこの言葉に触れてから、「どんなに厳しい状況であっても、常に心に5%くらいの余裕を持つ」という意識を取り入れるようになりました。
そして、受験生時代の自分にとっての「5%の余裕」を体現するものが、勉強アカウントの運用でした。これは、平常心を保つための心の余白と言っても良いかもしれません。

何を言いたいかというと、これからの時期、スタンスを決めずになんとなく勉強アカウントを触ってしまうと、ほぼ確実に情緒不安定さに拍車がかかります。今はもう、「本試験が終わるまで勉強アカウントは更新しません」と宣言する受験生も出てくる時期に差し掛かっています。

「なるべく距離を置いて、一日一回、あるいは週に一日しか触らない」
「自分の心に正直に、感情をコントロールするためになら試験前日であっても使ってOK」
「自分のためだけに、リアルタイムでの模試や答練の成績を記録する」
等、
これからの時期に勉強アカウントを運用するのであれば、今一度使い方を見直し常に心に「5%の余裕」を持つための自分なりのスタンスを強く持っていただきたいです。

最後に

基礎知識が重要かつ実務家登用試験である司法書士試験は、知識と同じくらい平常心も大切であると思います。この平常心は、本試験当日に必要であるのは勿論のこと、これからの直前期にも非常に重要になってきます

この記事を読んでくださった皆さんが、これからの大切な時期に、自分の意に反する妨害によって精神を掻き乱されたり、様々な事情で平常心が失われるような環境下で学習しなければならないことが、少しでも少なくなることを祈っております

関連記事:直前期(4月~6月)を走り抜くための2月・3月の過ごし方について

執筆:R.N(司法書士有資格者)

クレアールの初学者向け司法書士講座を受講し、令和4年度司法書士試験に一発合格。
大学在学中は司法試験を目指していたが、挫折してしまい法科大学院に進学しなかった経験あり。法律難関資格への想いを断つことができず、司法書士試験を目指すことに。
現在は、クレアールの司法書士教務担当として受講生のサポートなどを行う。他に行政書士、宅建士、日商簿記2級、漢検準1級等を保有。

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