公認会計士試験の「論文式試験」はどのような試験なのでしょうか。この記事では、出題科目や受験地、合格基準といった試験概要のほか、合格率の推移、合格するための学習方法なども解説します。結果が出たあとに必要な行動についてもお伝えするので、ぜひ参考にご覧ください。
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公認会計士の論文式試験とは?
論文式試験とは、公認会計士試験の第2次試験に当たる試験です。公認会計士試験に合格するには、「短答式試験」と「論文式試験」両方の試験に合格する必要があり、短答式試験の合格者のみが、次の論文式試験に進めます。
マークシート方式の短答式試験に対し、記述式で論理思考力や問題解決能力が試され、会計士としての実務適性が問われるのが論文式試験です。
なお公認会計士自体には受験資格はなく、年齢や学歴に関係なく誰でも受験できます。
公認会計士の論文式試験の概要
論文式試験の具体的な内容はどのようなものなのでしょうか。以下では、試験の日程、試験地、出題科目や合格基準など合格に関する概要を解説します。
試験の日程
論文式試験の日程:8月中旬の3日間 |
公認会計士試験の論文式試験は、毎年8月中旬に3日間かけて実施されます。論文式試験の開催は、8月に行われる1回のみのため合格のチャンスも年に1回です。
短答式試験は12月と5月と年2回受験できるため、論文式試験と短答式試験は実施回数が異なります。公認会計士試験は例年、以下の日程で実施されています。
【公認会計士試験の日程】
出願期間 | 試験日程 | 合格発表日程 | |
---|---|---|---|
第Ⅰ回短答式試験 | 8月下旬~9月上旬 | 12月上旬 | 翌年1月中旬 |
第Ⅱ回短答式試験 | 2月上旬~下旬 | 5月下旬 | 6月下旬 |
論文式試験 | 8月中旬(3日間) | 11月中旬 |
公認会計士試験の日程・スケジュールについて詳しくはこちら
試験地
東京都・大阪府・北海道・宮城県・愛知県・石川県広島県・香川県・熊本県・福岡県・沖縄県 |
公認会計士試験は上記11都道府県で実施されます。それぞれ指定された会場で3日間に渡り受験するため、事前に会場を把握してスケジュール調整することが大事です。
とくに、自宅から会場が遠い人は宿の手配が必要となるため、余裕を持って受験準備を始めましょう。
受験料
受験料:19,500円 |
公認会計士試験の受験料は19,500円です。これは論文式試験の受験料というわけではなく、短答式試験の出願時に納付が必要な受験料を指します。短答式試験に合格すれば、追加の受験料を払わずに論文式試験を受験可能です。
出題科目・過去問
論文式試験では、試験日程の3日間で上記6科目をすべて受験します。
論文式試験は、「科目合格」制度が設けられているのが特徴です。結果が不合格でも、一定の得点比率を満たした科目は、その後2年間の論文式試験において免除が受けられます。
以下で、出題される科目ごとの詳しい内容の解説と、併せて過去問も提示します。
管理会計論
管理会計論は、会計学(2日目の午前と午後に実施)の午前の部として実施される試験です。配点は100点で、原価計算のほか、意思決定など経営方針を決める能力を問う内容が出題されます。管理会計論に合格するには、工業簿記の理解も必須となるでしょう。
財務会計論
財務会計論は、会計学の午後の部として実施される試験です。配点は200点と他の科目よりも高くなっています。
試験を構成する問題の内容は、主に「簿記」と「財務諸表論」です。簿記では帳簿の作成や会計処理の方法、財務諸表論では簿記の計算方法における理論や会計の知識が問われます。
監査論
監査論では、監査基準に関する知識や監査の諸概念、また特定の場面における監査手続やそれが適用される背景および理論を説明する問題などが出題されます。
抽象的な概念についての出題が多いため、とくに実務経験のない人は内容がイメージしづらく難易度が高いと感じるでしょう。なお、監査論の配点は100点です。
企業法
企業法は、企業活動に関する法律についての科目で、商法、会社法、金融商品取引法などが試験範囲です。
メインの内容である会社法に関しては全体的に出題されるため、大きなボリュームをカバーする必要があります。その他は限られた章に関して問われるのが一般的なため、範囲を絞って対策しましょう。
企業法の配点は100点で、内容理解をしっかりと行うことが確実に点数を取るためのポイントです。
租税法
租税法は論文式試験のみの科目で、配点は100点です。法人税法、所得税法、消費税法の3つの税法が試験範囲とされています。
記述問題と計算問題の両方が出題されるため、知識があっても計算ができなければ得点できません。したがって、税金に関する知識をつけるほか、計算問題に慣れることも重要です。
経営学・経済学・民法・統計学(選択科目)
選択科目も論文式試験のみの科目で、配点は100点です。経営学、経済学、民法、統計学の4科目の中から1つ選んで受験します。
例年、経営学を選択する受験者が最も多い傾向にあります。これは、財務会計論と関連する問題が多く、他の選択科目よりも学習量を抑えて対策できるといわれているためです。
合格基準
合格基準:得点比率が52%以上 |
公認会計士・監査審査会によれば、論文式試験の合否は偏差値を基に決められています。具体的には、得点比率52%以上が合格基準です。
これは、平均を少し上回る点数を取れば合格できることを意味します。ただし、得点比率が40%に満たない試験科目が1科目でもある場合は、不合格になるため注意が必要です。
合格発表
合格発表:例年11月中旬 |
論文式試験の合格発表は、例年11月中旬にインターネット上で行われます。合格発表日に公認会計士・監査審査会のページに「受験番号」が掲載され、合格発表から約2週間後に合格者へ合格証書が郵送されます。
合格発表について、最新の情報が知りたい方は公認会計士・監査審査会のページでご確認ください。
公認会計士の論文式試験の合格率は?
論文式試験の合格率:35%前後 |
公認会計士・監査審査会の公式発表によれば、近年の論文式試験における合格率の推移は35%前後です。短答式試験の合格率が10%前後であることを考えると、論文式試験の合格率は比較的高い傾向にあります。
以下は、令和3年度以降の短答式試験と論文式試験の合格率を示した表です。
【公認会計士試験の合格率】
第Ⅰ回短答式試験 | 第Ⅱ回短答式試験 | 論文式試験 | |
---|---|---|---|
令和3年 | 開催なし | 約21.6% | 約34% |
令和4年 | 約12% | 約7.9% | 約35.8% |
令和5年 | 約10.3% | 約8.8% | 約36.8% |
令和6年 | 約10.7% | 約9.5% | 令和6年8月開催 |
※回答提出者ベースの合格率
公認会計士の論文式試験に合格するための学習方法
論文式試験の概要について説明しましたが、実際に論文式試験に合格するためには何をすればよいのでしょうか。ここでは、論文式試験に合格するための学習方法を解説します。
必要な勉強時間は?
論文式試験に必要な勉強時間:約1200~2000時間 |
公認会計士試験の論文式試験に合格するには、目安として1200~2000時間の勉強が必要だといわれています。また、公認会計士試験全体に合格のために必要な勉強時間の目安は3000~5000時間です。
1度で合格する人と複数回の受験で合格する人とで勉強時間は変動するため、必要な勉強時間は人によって異なると覚えておきましょう。
【論文式試験・科目ごとの学習時間の目安】
財務会計論 | 200~250時間 |
---|---|
管理会計論 | 200時間 |
監査論 | 150~200時間 |
企業法 | 200~300時間 |
租税法 | 330~400時間 |
選択科目 | 200~400時間 |
論文式試験の科目ごとに必要な勉強時間の目安は上記の通りです。なお、選択科目のおいては選ぶ科目により勉強時間に差が生じます。経営学か統計学なら200時間、民法か経済学なら400時間が目安です。
論文式試験を学習するときのポイント
論文式試験の合格に向けた勉強において、過去問をうまく活用するのがポイントといえます。知識をインプットするのと同時に、記述式で解答するスキルも身につける必要があるためです。
アウトプット力もつけるために、「過去問を解いて解答を見る」の流れを何度も繰り返して対策しましょう。なお、令和4年論文式試験の過去問と回答はこちらから確認できます。
【合格・不合格】論文式試験の結果が出たあとの動き
論文式試験の合格発表後に、どのような行動を取ればよいのか覚えておくことは重要です。ここでは、合格だった場合と不合格だった場合に分けて必要な動きを解説します。
合格したあとの動き
・3年間、実務経験を積む ・3年間、実務補習所に通う |
公認会計士試験に合格したあと、公認会計士として働くためには、3年間の「実務経験」と「実務補習」に取り組む必要があります。試験の合格だけでは公認会計士にはなれないということです。
3年間の実務経験と実務補習が終わったあと、修了考査に合格すれば公認会計士として登録できます。なお、実務経験を積むために、監査法人へ就職し業務補助を行うのが一般的です。
不合格だったあとの動き
残念ながら不合格になった場合でも、短答式試験の合格から2年以内なら、短答式試験を受験せずに論文式試験を受験できます。つまり、一度短答式試験に受かれば、論文式試験に合格できるチャンスが合計3回あるということです。
不合格になっても、諦めずに次の論文式試験の対策に取り組みましょう。
公認会計士の試験に関するよくある質問
以下では、公認会計士試験に関するよくある質問と回答をまとめています。
しっかり対策して論文式試験の短期合格をつかもう!
論文式試験は3日間の長期戦となります。試験では記述方式で解答するため、合格のためには内容に関する深い理解に併せ、文章で表現する力も必要です。
ただ、短答式試験と比べ合格率は高いため、しっかり対策し落ち着いて臨めば十分合格を目指せます。要点を押さえた効率的な学習を通じて、論文式試験の短期合格を勝ち取りましょう。
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監修:公認会計士 森 大地
大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。
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