DX化によって「会計」はどう変わる?業務の変化について徹底解説

DX化によって「会計」はどう変わる?

近年、あらゆる業界でDX化が推進されるようになり、公認会計士をはじめとする士業の間でも見過ごせない話題となっています。会計の仕事は、DX化によってどのように変化していくのでしょうか。
今回は、DXの概要をおさらいするとともに、DX化が会計に与える影響について解説していきます。これから公認会計士を目指す方はぜひ参考にしてみてください。

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目次

DXとは?会計における役割は?

DXとは、DigitalTransformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称であり、最新テクノロジーとデータを活用して企業の業務や組織を改革する取り組みを意味しています。定義や目的、関連技術との違い、会計における役割などを解説していきます。

DXの定義と目的

経済産業省の資料では、下記の通りDXの定義が紹介されています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や
社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その
ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること“

引用:「DX 推進指標」とそのガイダンス(経済産業省)

DXの定義と目的の図

引用:「デジタル産業の変革に向けた研究会」座長報告資料 p6(経済産業省)

DXでは、最終的に全社的な収益向上を達成することが目的です。DXを成功させるためには、「新規デジタルビジネスの創出」や「既存ビジネスの付加価値向上」を目指すことが重要とされています。

会計士としてDXに取り組むときも抑えておくべきポイントと言えるでしょう。

DXと関連技術の違い

近年になって、IoTやAI、ビッグデータ、ブロックチェーンなど、さまざまなテクノロジーが登場していますが、DXは具体的な技術ではありません。

DXは、IoTやAIなどの最新技術を活用して、企業を良い方向に変革していく取り組みです。IoTやAIなどの最新技術は、DXの手段として利用されます。

つまり、DXを進めるためには、最新技術の出現をいち早くキャッチアップし、自社の事業に活用していくことが重要だとわかります。

会計におけるDXの役割

一般的に会計とは、会社に出入りするお金を管理する業務であり、物を売ったりサービスを提供したりする仕事と違って、収益を生み出すプロセスではありません。

しかし、DX化によってデータの多様化・精緻化が進むため、会計業務を通して新たな切り口の分析が可能になります。財務三表の作成や資金管理といった提携業務の効率も高めることで、付加価値を生む仕組みづくりにも専念しやすくなるでしょう。

したがって、DX化は会計業務を付加価値の高いプロセスに変える役割を果たしていくと考えられます。

DX化によって会計の仕事はどう変わる?

DX化によって会計の仕事はどう変わる?

これまで会計分野では、手作業で行われていた業務が徐々にデジタル化されていきました。DX化によって会計の仕事はどのように変化していくのでしょうか?

引き続きDX化が会計の仕事に与える変化について解説していきます。

変化1.データの共有がスムーズになる

近年における最低限の基本となるDX化として挙げられるのが、クラウド化です。クラウドとは、インターネットを通してデータにアクセスできる技術として知られています。

たとえば、Googleが提供するメールやカレンダーなどが例として挙げられるでしょう。パソコンやスマートフォンがあれば、いつでもメッセージやデータを入力して、関係者に共有できます。

クラウド化が進めば、顧客が記録した会計・税務情報がクラウド上で管理されるのが当たり前となり、会計士や税理士とデータをスムーズに共有できるようになります。

例えば、確定申告書の入力にわからない点があった時、税理士が申告者と同じ入力画面をリモートで見ながら、疑問に回答するサービスも理論的には実現可能です。

データの共有がスムーズになれば、曖昧な自己判断による申告が減ります。会計・税務の精度も高まることでしょう。
(クラウド化→低コスト化→気軽に相談できる→精度向上)

変化2.データの入力が自動化される

ITに苦手意識を持つ方も少なからず存在することから、書類による記入作業は今後も完全にはなくならない可能性が高いです。

しかし、書類の情報をデータ化する作業には、人件費が発生してしまいます。データの入力作業では収益が得られないので、DX化による改革が必要です。

その点、最近ではAI-OCRという技術が注目されています。そもそもOCRとは、Optical Character Readerの略であり、手書きの書類や画像データから文字を抽出してデジタルデータに変換するソフトのことです。

しかし、OCRでは文字を誤って読み取ってしまうリスクがあり、精度に課題がありました。その点、AI-OCRはAIが誤認識を学習してくれるので、文字認識率を向上させられます。

今後、AI-OCRの文字認識率が高まっていけば、会計・税務の仕事において書類の入力作業を減らすことができ、収益につながるコア業務に専念しやすくなっていくでしょう。

変化3.データの改ざんを防止できる

会計情報のデータ化と切り離せない問題がデータの改ざんです。デジタルデータは、数値情報だけでなく、画像の加工も容易です。

会計データが改ざんされてしまえば、会計データをもとに融資を行う銀行や投資をする人々が被害を受けることになりかねません。

そこで注目されている最新技術がブロックチェーンです。ブロックチェーンとは、情報通信ネットワークにある端末同士を接続して、取引記録を暗号技術で分散的に記録できるデータベース技術です。

データの改ざんを防止の図

引用:平成30年版 情報通信白書(総務省)

ブロックチェーンの技術でDX化を進めることで、データの内容が正しいことを誰でも簡単に検証できます。

例えば、ブロックチェーンの技術を用いて作成した財務諸表は、法定監査で証拠能力の高いエビデンスとして活用できるようになります。

法定監査を独占業務として行う監査法人では、監査品質を高めるという観点でDXによる監査のデジタル化を推進しています。

DX化による公認会計士業務への影響

DX化による公認会計士業務への影響

世間では、すでにDX化の手段としてAIが用いられ始めています。公認会計士の仕事がAIによって奪われてしまうと不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

金融庁は2019年6月から、「有価証券報告書等の審査業務等におけるAI等利用の検討」というプロジェクトを立ち上げ、AI等を使った実証実験を行いました。
主な実験内容は下記の通りです。

・EDINET(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork)で公表されている有価証券報告書の特定項目の記載をAIに読み取らせて特徴を理解させる
・ほかの有価証券報告書における同様の記載ぶりを抽出(法則化して再現)させる

結果として、AIは明確なロジックにもとづいて判定できるが、適切な理由や不適切な理由まで明示するのは困難だと分かりました。また、未知の経営指標に対応できない可能性も指摘されています。

最終的に現時点で「AIは単独では万能の存在ではなく、人間が分析結果を解釈してフィードバックすることが不可欠であること」が示されています。
このように会計データの分析には、最終的に人間による判断が求められます。AIの技術が進歩しても、データを正しく説明して新たな価値を創造できる人材であれば、最終的に公認会計士の業務がなくなる心配はないでしょう。

参考:「有価証券報告書等の審査業務等におけるAI等利用の検討」実証実験の結果概要について 2019年9月(金融庁政策オープンラボ)

会計におけるDX化の今後を知るためには?

会計におけるDX化の今後を知るためには?

会計におけるDX化の今後を知るには、日本公認会計士協会の専門情報が役に立ちます。

日本公認会計士協会では、定期的にデジタル化に関する専門情報について公表しています。

例えば、2021年10月には「デジタルトラストの基礎知識と電子署名等のトラストサービスの利用に関するQ&A」を公表しました。

デジタルトラストに関するリテラシーが今後の公認会計士にとって重要になるという見解のもと、デジタルトラストの概要をはじめ電子署名やタイムスタンプなどのトラストサービスに関する基礎知識を解説しています。
2022年6月には、「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料 ~DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」を公表しました。

ソフトウェアに関するビジネス環境の変化に応じて実務が多様化していることを踏まえ、ソフトウェアやその周辺の取引に関する会計上の取扱いを調査して考えをまとめています。

今後もDX化によって公認会計士を取り巻く環境が変化していくことが予想されます。DX化に関連して業務で疑問が生じたときは、日本公認会計士協会の見解も参考にしてみてください。

参考:
IT委員会研究報告第59号「デジタルトラストの基礎知識と電子署名等のトラストサービスの利用に関するQ&A」の公表について(日本公認会計士協会)

会計制度委員会研究資料第7号「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料 ~DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」及び「公開草案に対するコメントの概要及び対応」の公表について(日本公認会計士協会)

デジタル技術を扱える公認会計士を目指そう!

今回は、DXの意味をおさらいしつつ、DXが会計で果たす役割や会計業務に与える変化などを解説しました。

DX化を推進することで、クラウドやAI、ブロックチェーンなどの技術によって、データの共有や入力の効率化が進み、データの改ざんも防止しやすくなります。

最新技術によって公認会計士の業務が減ってしまうと感じる方もいるかもしれません。しかし、効率化が進む分、あらたな付加価値を生むサービスを提供しやすくなります。

デジタル化によって価値の高い分析結果を示せる公認会計士を目指せば、市場で有利に戦っていけるでしょう。これから公認会計士を目指す方は、会計の知識だけでなく、デジタルスキルの習得も意識してみてください。

監修:公認会計士 森 大地

大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。

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