公認会計士試験の出題範囲には簿記が含まれています。そのため、簿記検定を先に取得することで公認会計士試験の勉強の負担が軽くなるとされており、とくに簿記検定1級を取得できれば十分といわれています。ただ、短期間で公認会計士試験に合格したい方もいるでしょう。そこで、公認会計士を目指す方へ簿記検定取得の必要性について解説します。
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そもそも公認会計士試験とは?
公認会計士試験とは、公認会計士になるために受験し、合格する必要のある国家試験であり、日本三大難関国家試験の一つとして数えられています。合格率は10%前後であり、試験は5月と12月に実施される短答式試験(一次試験)、8月に実施される論文式試験(二次試験)の二つで構成されています。また、公認会計士の主な就職先である監査法人は、多くの場合、公認会計士試験取得を応募資格としています。
簿記検定試験との違い
簿記検定試験とはその名の通り、検定を取得するための試験であり、会計について学べる資格です。ただ、公認会計士試験とは異なり、独占業務はないため、合格したからといって特定の職業に就けるわけではありません。
簿記検定には、日商簿記・全経簿記・全商簿記の3種類あり、難易度および知名度がそれぞれ異なります。なかでも、日商簿記検定は日本商工会議所および各地の商工会議所が主催しており、1954年から実施されている歴史ある資格で知名度が高く、日商簿記は知っているけれど他の簿記検定は知らない方もいるでしょう。
公認会計士試験のために簿記検定の取得は必要?
公認会計士試験には受験資格がないため、当然、簿記検定を取得しておく必要もありません。また、簿記検定を取得していても公認会計士試験で科目免除になることもありません。しかし、後述する要因で簿記検定が公認会計士試験合格に有利に働くため、先に簿記検定を取得する方もいます。
公認会計士試験では簿記検定を取得しておくと有利な理由
公認会計士試験では簿記対策が重要です。簿記検定を取得することで公認会計士試験にどのように役立つのか、具体的に解説します。
公認会計士試験の大きな範囲を習得できる
日商簿記検定1級に合格するレベルになると、公認会計士試験の会計学で対策すべき計算内容の約70%は習得済みとなります。公認会計士試験は会計学の得点比率が高く、会計学を制する者が公認会計士試験を制するといわれているくらい会計学の勉強が重要なのです。
公認会計士試験までの適切な中間目標となる
公認会計士試験の合格までの道のりは思いのほか長く、少なくとも1~2年以上かかるのが通常です。そのような中、日商簿記検定の3級・2級・1級は、順番に取得することで、途中段階で学習到達度を確認できる適切な中間目標になります。段階的な目標を無理なく達成していくことは、長期間の学習のモチベーションを維持するうえでも非常に有効です。
試験慣れしていくことができる
スポーツにしても試験にしても、「本番」という非日常的な場面で実力を発揮することに苦手意識を持っている方も多いかと思います。メンタルトレーニングなども有効ですが、何度か本番を経験して場慣れしていくことも有効な対策といえます。
締め切りがあることで追い込むことができる
簿記検定には1~3級があり、試験の度に「追い込み」を行うことになります。この本番前の追い込みが、実力を一気に高めるチャンスとなるのです。普段は計画的に学習していき、試験直前は総仕上げして、ある程度のレベルに到達させる習慣をつけられるので、実力を向上するにはうってつけの機会となります。
公認会計士試験に役立つ日商簿記検定の概要
公認会計士試験の合格には簿記資格の取得が重要と述べましたが、簿記資格は複数の団体が出しています。ここでは最も知名度の高い日商簿記検定について説明します。
日商簿記検定の試験日程と受験料
級 | 試験日程 | 受験料(税込) |
---|---|---|
3級 | 2・6・11月の年3回 | 2,850円 ※2024年4月1日~3,300円に変更 |
2級 | 2・6・11月の年3回 | 4,720円 ※2024年4月1日~5,500円に変更 |
1級 | 6・11月の年2回 | 7,850円 ※2024年4月1日~8,800円に変更 |
2級と3級については、全国にテストセンターがあるCBT試験方式で随時受験可能です。受験申込、受験、合格まですべてオンラインで完結します。
日商簿記検定の各級のレベル
級 | レベル |
---|---|
3級 | 業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身につけておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。 |
2級 | 経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。 高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。 |
1級 | 極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。 合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。 |
通常は3級から順に受けて、最終的に1級を取得します。他には、「簿記初級」「原価計算初級」という基礎的な用語を理解することを目的とした検定も設けられています。これらは簿記検定の入門として位置づけられており、簿記初級は企業全体の経理を理解するのに必要な知識を学び、原価計算初級は物の原価等を求めるのに必要な知識を学べます。
日商簿記検定の各級の出題範囲
日商簿記検定の商業簿記・会計学が公認会計士試験の財務会計論、日商簿記検定の工業簿記・原価計算が公認会計士試験の管理会計論に対応する形になります。
なお、公認会計士試験において会計学の配点は短答式試験では500点満点のうち300点(財務会計論200点、管理会計論100点)、論文式試験でも700満点中300点となっており、会計学は合否を大きく左右する重要な科目といえます。
3級
試験科目 | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記 | 60分 | 70%以上 |
日商簿記3級では、財務諸表の構造を理解することが大切であり、仕訳、総勘定元帳、補助簿など普段聞きなれない単語がでてきます。これらの関係性や必要性を理解することが3級の主な目的であり、簿記の全体像を把握するのに活用できます。
2級
試験科目 | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記・工業簿記 | 90分 | 70%以上 |
日商簿記2級では実践的な知識を問われ、試験範囲も3級と比べぐっと広がり、連結会計、税効果会計など難しい範囲が追加されているので、数年前よりも学習難度が上がっています。経理の採用情報だと日商簿記2級合格を条件としている企業もあり、資格を取得する価値は高いでしょう。
1級
試験科目 | 試験時間(途中休憩あり) | 合格基準 |
---|---|---|
商業簿記・会計学 | 90分 | 70%以上 ただし、1科目ごとの得点は40%以上 |
工業簿記・原価計算 | 90分 | 70%以上 ただし、1科目ごとの得点は40%以上 |
日商簿記1級に合格すると、公認会計士試験の短答式試験の計算科目を8割程度カバーできるといわれており、計算科目を解く過程で得た理解も、短答式試験の理論科目を解くのに有用です。計算科目は暗記科目と異なり、理解して使いこなせるかが問われるので一度覚えたら記憶に定着しやすく、公認会計士試験を受ける際には強力な武器となるでしょう。
日商簿記検定の難易度
級 | 第163回(2023年度)の合格率 ※1 |
---|---|
3級 | 38.85% |
2級 | 30.95% |
1級 | 10.4%※2 |
※1 :統一試験とネット試験の合格率を平均した値を示しています。1級については、ネット試験は開催されていないため、統一試験のみの結果です。
※2 :1級は6・11月開催のため、2023年4月で公表されている第162回(2022年度)のデータを反映しています。
試験全体を考慮すると、公認会計士試験の方が簿記検定よりも難易度は高くなります。公認会計士試験の会計学(財務会計および管理会計)部分と日商簿記1級を比較すると、計算部分では日商簿記1級でも公認会計士試験に引けをとらない難易度の問題が出題されることもありますが、基本的には公認会計士試験の方が出題範囲も広く、より細かい論点が出題されます。
しかし、公認会計士試験の対策で重要なのは、日商簿記検定で勉強した基礎的な内容です。日商簿記検定1級を取得することで、公認会計士試験合格に大きく近づけます。
日商簿記検定取得にかかる勉強時間の目安
級 | 勉強時間の目安 |
---|---|
3級 | 100~200時間 |
2級 | 200~500時間 |
1級 | 500~1,000時間 |
人によって差はありますが、簿記の知識が全くない方であれば各級に合格するには上記の目安程度かかるでしょう。1日の勉強時間を3時間確保できるとすれば3級は1カ月程度、2級で2~6カ月程度、1級は1年程度で合格できるといえます。もちろん、一日の勉強時間を増やしたり、効率のよい方法で勉強したりすれば、早期に合格することも可能です。
公認会計士試験に向けて簿記検定合格後に勉強する範囲
日商簿記検定の有用性について解説しましたが、日商簿記1級を取得すれば公認会計士試験で会計学の勉強が不要になるわけではありません。簿記検定合格後に公認会計士試験合格に向けて勉強すべきことについてご紹介します。
計算対策部分
前述の通り会計学の約70~80%は日商簿記1級で学習しますが、残りの約20~30%は後から勉強しなければなりません。とくに、下記の表にある連結会計・企業結合会計が一次試験、二次試験ともに重要論点として頻出問題となっています。
・日商簿記1級で学習した範囲に関連した細かい補足:約5%
・連結会計・企業結合会計の応用的な内容(財務会計論):約25%
理論対策部分
財務会計論・管理会計論、ともに理論対策の学習が必要となります。主に計算対策として学習してきた内容の理論的裏付けを学習しますが、「〇〇主義が採用されている理由について説明する」など計算問題を解いているだけでは身につかない内容も問われます。ですが、なるべく計算対策と紐づけて学習すると記憶の定着も捗り、効率よく得点を獲得することができます。
最短で公認会計士試験を突破する方法
前述の通り、日商簿記検定1級を取得すると公認会計士試験を突破するのに有利になります。しかし、公認会計士試験まで期間が短く、あまり多くの学習時間を取れないという方もいるでしょう。短い期間で公認会計士試験に合格するためには、はじめから公認会計士試験の勉強をはじめ、その一環として簿記も勉強するのがおすすめです。
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簿記検定は公認会計士試験突破の役に立つ
公認会計士試験に合格するには、簿記の学習が必須です。とくに日商簿記検定1級を取得することで、いざ公認会計士試験の勉強をはじめた際にスムーズに学習を進めることができます。
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監修:公認会計士 森 大地
大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。
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