米国公認会計士(USCPA)は日本の公認会計士と並んで人気の資格ですが、どんな資格なのか詳しくは知らない人も多いでしょう。この記事では、USCPAの概要から、働き方や試験制度の公認会計士との違い、公認会計士とUSCPAのダブルライセンスのメリットまで、詳しく解説します。
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USCPA(米国公認会計士)とは
USCPA(米国公認会計士)とは、アメリカの各州にある会計士委員会が認定する公認会計士資格のことです。試験の出題範囲は全米で同じですが、受験条件は各州で異なり、出願時に自分に合った州を選択する必要があります。
USCPAの試験は、基本的に出願した州の指定する試験会場に直接赴いて受験しますが、2011年からは、一部の州を除いて日本国内からも受験可能。試験会場は東京御茶ノ水と大阪中津のプロメトリックテストセンターの2か所から選択できます。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の働き方の違い
公認会計士 | USCPA(米国公認会計士) | |
---|---|---|
どの国の資格か | 日本の国家資格 | アメリカ合衆国の国家資格 |
日本における独占業務の有無 | 有(監査業務) | 無 |
会計士として登録できる地域 | 日本 | アメリカ国内の取得した州 MRA※1参加国(オーストラリア・カナダ・ニュージーランド・メキシコなど) |
主な活躍先 | 日本の監査法人 日本の税理士法人 日本の会計事務所 日本のコンサルティングファーム 日本の一般企業 | 海外日本の外資系企業 日本の米系企業 日本の監査法人 日本のコンサルティングファーム |
平均年収 | 746.4万円※2 | 就職先などにより大きく異なり、BIG4の国内監査法人では通常500万円~1,500万円程度 |
※1 MRA(Mutual Recognition Agreements)=「国際相互承認協定」
※2 出典:厚生労働省 「令和4年賃金構造基本統計調査」を加工して作成
公認会計士とUSCPAとでは働き方にどんな違いがあるのでしょうか。ここでは、基本的な特徴や独占業務の有無など、基本的な相違点を見ていきましょう。
公認会計士
公認会計士は会計のスペシャリストとして、企業の公正な経済活動をサポートし、社会の健全な発展に重要な役割を担う専門家です。また監査業務を行える唯一の国家資格といえます。
公認会計士になるには、金融庁の公認会計士・監査審査会が実施する公認会計士試験に合格し、実務補修や業務補助等など経て、さらに日本公認会計士協会による修了考査に合格する必要があります。公認会計士として開業するためには、この公認会計士名簿に登録し日本公認会計士協会に入会することが必須です。
なお公認会計士の資格を所有していれば、税理士試験を受験しなくても税理士登録を行うことができます。
USCPA(米国公認会計士)
USCPAはアメリカの各州が認定する公認会計士資格です。USCPAの資格を持っていると、アメリカで会計士として活躍する際はもちろん、海外進出している日本企業や米系企業で働く際にも重宝されます。
ただしUSCPAには日本国内での独占業務は認められていないため、日本の法令に基づく監査報告書へのサインができません。また当然ながら日本の税理士登録とも無関係です。
コンサルティング業務など会計以外の業務は、基本的に国内の公認会計士資格保持者と同様に行えます。また、手続きを踏めば、オーストラリア、カナダなどのMRA参加国で会計士として活躍することも可能。国際的認知度は高く、海外で活躍したい人にとってUSCPAは魅力的な資格です。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)の試験制度の違い
公認会計士 | USCPA(米国公認会計士) | |
---|---|---|
実施団体 | 金融庁の公認会計士・監査審査会 | 試験作成:米国公認会計士協会(AICPA) 実施:全米州政府会計委員会(NASBA) |
受験料金 | 受験手数料:19,500円 | 初回出願料金:約150~200ドル(約20,000~28,000円)/回※再出願料金:約100ドル(約12,000円)/回 ※国際会場手数料:390ドル(約55,000円) /1科目受験料金:254.8ドル(約36,000円)/1科目 ※州によって異なる |
試験日程 | 短答式:12月・5月の年2回論文式:8月の年1回 | テストセンターの休業日、満席時を除いていつでも受験可能 ※試験制度の変更に伴い、2023年12月16日~2024年1月9日は実施なし |
試験科目 | 短答式:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目 論文式:会計学、監査論、租税法、企業法、選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のうち1科目)の5科目 | FAR(財務会計)、REG(諸法規)、AUD(監査および証明)の3科目 BAR(ビジネス分析・報告)・ISC(情報システム・コントロール)・TCP(税務コンプライアンス・プランニング)のうち1科目 ※2024年1月10日~ |
試験形式 | 短答式:マークシート方式 論文式:記述式 | 選択式:Computer Based Testing(CBT) ※すべて英語での出題 |
合格率 | 2021年:9.6% 2022年:7.7% 2023年:7.6% | 2021年:FAR 44.70%、REG 59.03%、AUD 49.70%、BEC 62.84% 2022年:FAR 43.76%、REG 59.85%、AUD 47.90%、BEC 59.85% |
勉強時間の目安 | 約4,000時間 | 約1,200時間~1,500時間(英語が得意でない場合) |
公認会計士とUSCPAには試験制度にも違いがあります。ここではそれぞれの試験制度について、実施団体、試験日程、そして試験形式や試験科目などの違いに注目して解説します。
公認会計士
公認会計士試験は金融庁の公認会計士・監査審査会が実施しています。
試験は短答式試験と論文式試験の2種類あり、公認会計士の資格を取得するには両方の合格が必要です。短答式試験は年2回(12月・5月)実施しますが、論文式試験は年1回(8月)のみなので、1年で公認会計士試験に合格を目指す場合、チャンスも実質1回。ただし短絡式試験は一度合格すれば、2年間は受験を免除されます。また受験の際は、受験手数料として19,500円の納付が必要です。
公認会計士試験の合格率は10%未満の年度も多く、国内の難関国家資格のひとつです。合格に必要な勉強時間も多いため、社会人になってから取得を目指す場合、一旦退職して勉強に集中するケースもあります。予備校に通う場合の費用は、大手スクールだと計30~90万円程度です。基本的に受講期間が長引けばその分、費用もかさむ傾向にあります。
USCPA(米国公認会計士)
USCPAの試験は米国公認会計士協会(AICPA)が問題を作成し、全米州政府会計委員会(NASBA)が実施しています。2024年1月から試験制度が変更され、試験内容が選択式3科目・記述式1科目から、選択式4科目(うち1科目は選択科目)となりました。コンピュータを使用した試験なので、空きがあれば、基本的にいつでも受験可能。日本では東京と大阪で受験できます。費用は公認会計士と比べると高く、出願料金・国際会場手数料・受験料金の合計で1科目あたり12万円ほど。4科目であれば総額40万円程度は発生すると考えておいた方がよいでしょう。
合格率は日本の公認会計士試験よりも高いですが、18カ月以内に4科目すべてに合格する必要があるので、公認会計士よりも短期決戦となることには留意が必要です。予備校に通う場合の費用は、40~100万円ほど。取得する単位によっても異なりますが、公認会計士予備校と比較するとやや高額な傾向があります。
受験資格や合格後の登録用件は州によって異なるため、必ず自分が受験・登録できる州を事前に調べてから出願しましょう。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)のキャリアパスの違い
USCPAと公認会計士は、どこで働くかによってキャリアパスが大きく異なります。
公認会計士試験の合格率は低く、日本国内の公認会計士人口は決して多くありません。USCPAも合格のための難易度は低いものの、日本ではまだ広く知られていないのが現状です。そのため日本国内では、公認会計士資格保有者もUSCPA資格保有者もまずは監査法人で働き、その後、事業会社や会計事務所などに転職するという、似たようなキャリアパスを進む傾向が見られます。
一方のアメリカでは、USCPA人口は非常に多く、多方面に進出しています。人数が多い分、ライバルに負けないよう努力し、USCPAとしてどのように差別化を図るか意識している人材が多いです。なかにはUSCPA取得後にロースクールに通って弁護士資格を取得し、税務弁護士としての活躍を目指すケースも。国内とは異なり、自ら自分のストロングポイントを作り、それに沿ったキャリアパスを歩む人が多いといえるでしょう。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)それぞれに向いている人
公認会計士 | USCPA(米国公認会計士) |
---|---|
・日本で公認会計士としてキャリアを築いていきたい人・日本で独立・開業したい人 | ・海外で活躍したい人・日本の外資系企業や米系企業で働きたい人・日本の公認会計士資格を取得する時間がない |
公認会計士とUSCPAの試験制度やキャリアパスの違いがわかったところで。それぞれに向いている人は具体的にどのような人なのか解説していきます
公認会計士
公認会計士は難関国家資格のひとつとして知られていることから、日本国内では非常に高い信頼を得ています。独立開業もしやすく、また独占業務である監査業務を監査法人で行うことができる唯一の資格なので、日本で成功したい人にぴったりでしょう。
さらに公認会計士と他の資格とのダブルライセンスによって希少性を高めれば、キャリアップや年収アップも狙えます。例えば公認会計士取得後にUSCPAを取得してダブルライセンスで活躍する人も少なくありません。日本で働き続ける予定であれば、まずは公認会計士の取得をおすすめします。
USCPA(米国公認会計士)
USCPAは海外志向の人におすすめの資格です。全文英語で出題される試験に合格しているというステータスから、USCPA資格保有者は英語を使った仕事を担当することが多くなります。海外で働くつもりはなくても、日本国内の外資系企業などで働きたい場合はUSCPAの資格は強い武器になるでしょう。また、国内の公認会計士の資格を取得したいと考えているものの、十分な時間が確保できずに、一時的にUSCPAを取得する人も多いです。
ただし、日本で働く場合は独占業務がない点には留意が必要です。監査報告書への署名を行うには、公認会計士の資格が別途必要になります。基本的には公認会計士資格保持者が取得し、さらに一定の知識を担保するための資格と考えておくとよいでしょう。
公認会計士とUSCPA(米国公認会計士)のダブルライセンスの強み
公認会計士は難関資格であることから日本では高い信頼度を誇り、資格を取得することで監査法人などへの就職の道が開けます。この公認会計士に加えてUSCPAの資格を取得できれば、さらに外資系企業や海外支社をもつグローバル企業、そして英語圏でのキャリアパスも視野に入ってきます。海外へキャリアパスを広げずに国内企業で働き続ける場合でも、自分自身の市場価値や社内評価の上昇につなげることができるでしょう。
ダブルライセンスは簡単ではありませんが、働くうえで大きな強みになるはずです。
USCPAと公認会計士のダブルライセンスで活躍の場を広げよう!
USCPAは英語力や短期間で全科目を合格する必要があり、公認会計士とは異なる難しさを持つ資格ですが、取得することで、海外の企業や外資系企業などグローバルな環境で働く道が開けます。もし公認会計士とのダブルライセンスが実現すれば、国内外で会計のスペシャリストとして活躍するチャンスがさらに広がるといえるでしょう。公認会計士と比較すると合格率が高い資格なので、効率的な学習で着実に合格へ近づけるはずです。
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監修:公認会計士 森 大地
大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。
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