公認会計士の最終関門「修了考査」とは?対策方法や合格後の流れも解説

公認会計士の最終関門「修了考査」とは?

公認会計士の資格を取得するための最後の関門である「修了考査」。試験前、もしくは公認会計士を目指すにあたって、具体的にどんな試験なのか、知りたい人も多いでしょう。この記事では、修了考査を受けるまでのステップや合格率、受験資格などの概要のほか、出題科目ごとの対策方法なども解説します。合格発表後の対応まで網羅的にご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

公認会計士の修了考査とは?

公認会計士として働くためには、公認会計士試験(短答式試験・論文式試験)の合格に加えて、いくつかの要件を満たす必要があります。そのうちの一つが修了考査です。

具体的には、所定の実務補習を修了し、かつ原則3年以上の実務経験を経たうえで、修了考査を受験・合格して初めて公認会計士として登録できます。公認会計士の修了考査とは、「公認会計士登録」のための最終試験といえるでしょう。

公認会計士の修了考査を受けるまでのステップ

公認会計士の修了考査を受験するまでにはどのような段階を経る必要があるのでしょうか。ここでは、公認会計士の修了考査の受験までのステップを解説します。

公認会計士の修了考査を受けるまでのステップの図

本記事は特に、公認会計士試験に合格した後の流れについて説明します。公認会計士試験(短答式試験・論文式試験)について知りたい方は、まず以下の記事をご確認ください。

公認会計士試験の合格後は、実務補習所で講義を受講し、考査や課題研究に取り組んで必要な単位を取得することで、修了考査の受験資格を得られます。必要単位の取得と並行して、3年以上の実務経験(業務補助等)を積む必要もありますが、こちらは修了考査の合格後でも構いません。

実務経験の要件を満たし修了考査に合格すれば、公認会計士として登録でき、この登録によって正式に公認会計士として働けるようになります。

公認会計士の修了考査の合格率

実際、修了考査を受けるにあたって気になるのが合格率。ここでは公認会計士の修了考査の合格率を年別の推移でご紹介します。

受験者数合格者数合格率
2022年(令和4年)2,0001,39269.6%
2021年(令和3年)2,1741,40464.5%
2020年(令和2年)1,93695949.5%
2019年(令和元年)1,74985448.8%

上記の表は公認会計士の修了考査の受検者数、合格者数そして合格率を示したものです。

過去には合格率70%程度で推移していたこともあるので、近年の合格率はやや低下傾向ですが、それでも公認会計士試験と比較して高水準にあることは変わりません。修了考査は実務補修や実務経験の要件を満たし、日ごろからしっかりと学習していれば決して難易度の高い試験ではないといえます。

公認会計士の修了考査の概要

公認会計士の修了考査の概要

ここでは公認会計士の修了考査の概要を解説します。受験資格のほか、日程、試験会場、受験手数料など、受験するために必ず知っておきたい項目ばかりなので、よく目を通しておきましょう。

受験資格

修了考査の受験資格は以下の3つをすべて満たしていることです。

・平成18年以降の公認会計士試験合格者、もしくは平成17年以前の公認会計士試験第2次試験合格者である・実務実習を終えている・規定の単位(※)を修得している

また、修了考査を受験するためには、上記を満たしたうえで、以下の単位を取得している必要があります。

講義全体で270単位以上を取得し、この中に以下の単位が含まれていること
J1対象講義の単位が180単位以上
J2対象講義の単位が40単位以上
2015年期~2020年期に入所した補習生(再入所含む)は、上記のうちライブ講義(単位認定研修及びeラーニング除く)の単位が12単位以上

④J3対象講義の単位が20単位以上
2015年期~2020年期に入所した補習生(再入所含む)は、上記のうちライブ講義(単位認定研修及びeラーニング除く)の単位が6単位以上

⑤ディスカッション及びゼミナールの単位が30単位以上2020年期以前に入所した補習生は15単位以上2015年期~2020年期に入所した補習生(再入所含む)は、上記のうちJ2又はJ3で実施するゼミナールによる単位が3単位以上
⑥2010年期以降に入所した補習生(再入所含む)は、指定された必修科目を受講すること
考査【2016年期以前に入所した補習生(再入所含む)】
①10回の考査を全て受験し、60単位以上取得すること
②各回の考査につき、4単位以上取得すること

【2017年期以降に入所した補習生(再入所含む)】
①10回の考査を全て受験し、60単位以上取得すること
②各回の考査につき、成績が40点以上であること
③監査総合グループ、税務グループごとに当該グループに属する考査の成績の合計点が当該考査の満点の合計点の60%以上であること
※その成績が40点以上のものに限る
課題研究【2016年期以前に入所した補習生(再入所含む)】
①6回の研究報告書を全て提出し、36単位以上取得すること
②各回の研究報告書につき、4単位以上取得すること

【2017年期以降に入所した補習生(再入所含む)】
①6回の研究報告書を全て提出し、36単位以上取得すること
②各回の研究報告書につき、成績が40点以上であること

身体上の障害や妊娠中などの理由で、受験に当たって配慮を希望する場合は、特別措置を受けることができます。具体的には、別室での受験や試験室入退出時の付添人の同伴などです。個々人の状態に応じた措置を受けることができますが、この措置を受けるためには出願に先立って修了考査運営委員会が指定する書類を提出し、審査を受ける必要があります。

日程・試験会場

公認会計士の修了考査は例年、12月中旬に2日間かけて実施されます。試験会場は基本的に東京都2会場と愛知県・大阪府・福岡県でそれぞれ1会場です。例年、大きな変化はありませんが、詳細は6月公表の「受験案内」に記載されます。

合格発表は翌年の4月上旬にWebサイト上で行われます。氏名の公表・非公表はインターネット出願時に選択可能です。また合格者にはオンラインで合格証書が発行されます。

受験手数料

公認会計士の修了考査を受けるには28,000円の受験手数料が必要です。決済手段は、出願時にクレジットカード決済、または銀行振込のいずれかを選択できます。

試験方法

令和5年度試験用の受験案内によると、公認会計士の修了考査には「会計に関する理論及び実務」「監査に関する理論及び実務」「税に関する理論及び実務」「経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む)」「公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理」の5科目があります。試験方法はすべて筆記です。

出題科目試験方法
会計に関する理論及び実務試験時間:各3時間
問題数:各大問2問(小問を設ける場合がある)
配点:各300点
監査に関する理論及び実務
税に関する理論及び実務
経営に関する理論及び実務
(コンピュータに関する理論を含む)
試験時間:2時間
問題数:大問2問(小問を設ける場合がある)
配点:200点
公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理試験時間:1時間
問題数:大問2問(小問を設ける場合がある)
配点:100点

令和5年度の修了考査では、「会計に関する理論及び実務」「監査に関する理論及び実務」が1日目に、残りの3科目が2日目に実施されました。両日とも試験時間は計6時間です。

合格基準

公認会計士の修了考査の合格基準は、基本的に総点数の60%で、修了考査運営委員会がふさわしいと認めた得点比率にされます。ただし、総点数の40%に満たない科目が1科目でもあれば不合格なので注意しましょう。

公認会計士の修了考査の出題科目と対策方法

公認会計士の修了考査では5科目が出題されますが、対策にはどれぐらい時間が必要なのでしょうか。以下では、各科目の出題方針や対策方法を解説します。

会計に関する理論及び実務

出題方針・公認会計士が行う会計業務の実務において必要とされる専門的応用能力の確認
・会計に関する理論及び実務全般の出題
出題基準・企業会計審議会が設定した企業会計に関する原則、基準、取り扱い
・企業会計基準委員会が設定した会計基準、適用指針、実務対応報告
・金融商品取引法に基づく会計に関する関係法規、ガイドライン
・会社法に基づく関連法規
・日本公認会計士協会会計士制度委員会報告・国際財務報告基準 等

会計に関する理論及び実務では、公認会計士が行う会計業務の実務において必要とされる専門的応用能力を確認するような設問と、会計に関する理論及び実務全般が出題されます。具体的には、日本における会計基準や会社法、日本公認会計士協会の関連ルール、国際財務報告基準(IFRS)などが出題範囲です。

対策としては、公認会計士試験の「財務会計論」でも出題された計算問題を解く感覚を早い段階で取り戻しておくことが大切です。修了考査では、より実務に近い応用的な問題が出題されるので、答練を中心に進めるとよいでしょう。

ただし、公認会計士試験では出題が少ない傾向にある国際財務報告基準(IFRS)などは、講座などで別途インプットの時間を取ったうえで答練に進むのがおすすめです。

全体の配点の1/4を占める科目なので、比重は重めで150~200時間程度の勉強時間を割くことを想定しておきましょう。

監査に関する理論及び実務

出題方針・公認会計士が行う監査業務の実務において必要とされる専門的応用能力の確認
・監査に関する理論及び実務全般の出題
出題基準・監査基準、中間監査基準、四半期レビュー基準、監査における不正リスク対応基準、監査に関する品質管理基準、財務報告に係る内部統制基準、実施基準
・財務諸表等の監査証明に関する内閣府令、同ガイドライン
・会社法に基づく監査に関する関連法規
・日本公認会計士協会監査基準報告書、財務報告内部統制監査基準報告書、四半期レビュー基準報告書、品質管理基準報告書、監査・保証実務委員会報告書 等

監査に関する理論及び実務では、公認会計士が行う監査業務の実務において必要とされる専門的応用能力の確認と、監査に関する理論及び実務全般が出題方針とされています。監査基準や四半期レビュー基準などの一連の監査関連基準や、日本公認会計士協会の監査関連の報告書などから広く出題されます。

試験対策では出題形式に慣れる訓練を積むことが重要です。監査基準委員会報告書の内容を暗記したうえで、適切な専門単語を使用して回答する必要があります。特に実務経験がまだない方は、講座などで専門用語や論点の暗記・理解を徹底しましょう。5科目のなかでも時間配分が重要な科目なので、ある程度のインプットが完了したら、答練で解答に慣れながら、さまざまな事例に触れるのがおすすめです。

会計と同じく全体の配点の1/4を占める科目なので、実務経験がない場合は150~200時間程度の勉強時間は必要でしょう。会計監査の実務経験がある場合は、100時間程度を想定しておきましょう。

税に関する理論及び実務

出題方針・公認会計士が行う税に関する実務において必要とされる専門適応能力の確認
・税に関する理論及び実務全般の出題
出題基準・法人税に関する理論及び実務
・所得税に関する理論及び実務
・消費税に関する理論及び実務
・相続税・贈与税に関する理論及び実務
・地方税に関する理論及び実務
・その他上記に関連する租税法及び国税通則法に関する理論及び実務 等

税に関する理論及び実務では、公認会計士が行う税に関する実務において必要とされる専門適応能力を測るような問題と、税に関する理論及び実務全般が出題されます。具体的には、法人税、所得税、消費税、相続税、贈与税、地方税、その他これらに関連する租税法および国税通則法に関する理論及び実務などです。

出題範囲が広く、配点も多いので、5科目のなかでも特に時間をかけて試験対策を行う人が多い科目です。最初は講義でのインプットと例題を解く形でのアウトプットを繰り返し、知識が定着してきたら答練で本番の解答形式に慣れましょう。試験本番までに覚えたことを忘れてしまわないよう、何度も繰り返し問題を解くことが大切です。

150~200時間程度の勉強時間を割くことを想定しておきましょう。

経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む)

出題方針・ビジネスに関する専門知識及び法令による企業に対する規制に関する専門知識の確認
・これらの各専門知識を活用した公認会計士が行う業務への対応能力の確認
出題基準・財務分析を中心とした経営分析の実務
・企業価値評価の実務
・企業におけるリスク管理
・ITの基礎知識と企業におけるIT環境
・ITのリスク評価及び情報処理統制、IT全般統制
・金融商品取引法・会社法等の企業に関する規制 等

経営に関する理論及び実務(コンピュータに関する理論を含む)では、ビジネスに関する専門知識及び法令による企業に対する規制に関する専門知識と、これらの各専門知識を活用した公認会計士が行う業務への対応能力を確認します。出題基準としては、経営分析や企業価値評価のほか、企業のリスク管理やIT基礎知識、内部統制や法令上のガバナンスなどです。

経営の出題範囲は、公認会計士試験と重複している部分も多いので、答練で再度復習しながら知識を定着させていく進め方がおすすめです。一方、コンピューター関連の内容は公認会計士試験でも実務でも扱う機会の少ない範囲なので、一からインプットする必要があります。

コンピューター関連の勉強に2倍ほどの時間を割くイメージで、合計60~100時間の勉強時間を想定しておきましょう。

公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理

出題方針・公認会計士が行う業務の職業倫理等の規制及び法令による公認会計士に対する規制の確認
出題基準・公認会計士法、同施行例、同施行規則
・日本公認会計士協会会則、倫理規則
・金融商品取引法による監査人に関する規則
・会社法による監査人に関する規則 等

公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理では、公認会計士が行う業務の職業倫理等の規制や、法令による公認会計士に対する規制の確認を行います。具体的には、公認会計士法や日本公認会計士協会の会則、金融商品取引法や会社法による監査人に関する規則などから出題されます。

配点も試験時間も短く、5科目の中では優先度が低めの科目です。しかし、修了考査の特性上、総点数の40%に満たない科目が1科目でもあると不合格になってしまうので、必要な勉強時間は確保しましょう。知識があれば解答できる問題がほとんどなので、試験直前期に着実に暗記の時間を取ることをおすすめします。

10~20時間程度の勉強時間を割くことを想定しておきましょう。

公認会計士の修了考査に合格したら

公認会計士の修了考査に合格したら

晴れて修了考査に合格したら、公認会計士として業務を行うために、公認会計士名簿への登録を行う必要があります。ここでは、公認会計士の登録に関する流れを、必要書類や費用とあわせて解説します。

公認会計士登録の流れ

①日本公認会計士協会へ必要書類の提出
②登録審査会による登録審査
③公認会計士名簿に登録・官報に公告・登録番号の通知

公認会計士として登録するためには、まず日本公認会計士協会へ書類を提出する必要があります。これらの書類は、毎月1回行われる登録審査会で審査をされ、受理されると、登録手続完了です。登録後は公認会計士名簿に登録され官報に公告されるほか、登録番号が記載された開業登録通知書類が送られてきます。

登録に必要な書類

公認会計士開業登録申請書
履歴書
写真
公認会計士試験合格証書の写し
実務補習修了証書の写し
業務補助等の報告書受理番号通知書の写し
身分(身元)証明書(原本)
住民票(原本)
宣誓書
勤務証明書(原本又は写し)
登記簿(原本又は写し)
会計士補登録のまつ消に関する届出書
準会員退会届出書
入会届出書
開業登録等に係る本人の連絡先
入会金等振込控え
写真付き本人確認書類

登録のために日本公認会計士協会に提出する必要書類は上記の通りです。開業登録申請書や本人確認書類、写真など多数あり、書類によっては取り寄せる必要があるため、余裕をもって準備しましょう

登録に必要な費用

登録免許税60,000円
入会金(準会員)30,000円
入会金(準会員以外)40,000円
施設負担金50,000円
会費(普通)月額6,000円
会費(地域)所属地域会により異なる

公認会計士の登録にあたっては登録免許税60,000円の納付が必要です。そのほか、日本公認会計士協会への入会金、そして施設負担金なども負担する必要があり、合計で20万円ほどかかると考えておくとよいでしょう。

また登録・入会後は、入会した月から普通会費と所属地域会の会費を支払います

公認会計士の修了考査に落ちたら

公認会計士の修了考査には受験回数の制限はなく、一度落ちてしまっても再受験が可能です再度、勉強し、次の年以降の受験を目指しましょう。なお再受験の場合は、修了考査受験要件証明書を提出する必要はありません。

公認会計士の修了考査は、例年、半数以上が合格する試験なので難易度は高くありません。落ちてしまったら学習の方針を見直し、再受験に向けて早めのスタートを切りましょう

会計士の修了考査に関するよくある質問

公認会計士の修了考査は何回受けられる?

公認会計士の修了考査には受験回数の制限はありません。不合格となった場合でも、合格するまで何回も受験可能です。

公認会計士に合格した後の就職先は?

公認会計士試験に合格した後は多くの人がまずは監査法人に就職しますほかにも、一般企業、会計事務所や税理士法人、会計コンサルティングファーム、金融機関などで活躍している公認会計士は多くいるほか、独立開業する人もいます。

公認会計士の修了考査は出題科目や受験手続を確認すれば怖くない!

公認会計士として働くための最後の関門となる修了考査は、公認会計士試験よりも合格率が高く、実務補習や普段の業務をしっかりこなしていれば十分に合格可能です。出題科目や受験手続を確認し、落ち着いて臨みましょう。

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監修:公認会計士 森 大地

大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。

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