最近話題になった出来事やニュースについて、社会保険労務士 神野沙樹 講師が解説!会社の組織活性に携わり第一線で活躍している社労士ならではの目線で、易しく読み解いていきます。【隔月連載】
みなさんは「チャットGPT(Chat GPT)」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
先日、「弁護士ドットコムがチャットGPTで法律相談を始める」というニュースがありました。とうとうAIが弁護士相談をする時代が来たのか!と期待を持つとともに、これからの士業の在り方はどうなるのだろうと感じたりもします。
今回は、そもそもチャットGPTとは何かという解説に加え、実際に試してみた結果や上手な付き合い方について、見ていきましょう。
「チャットGPT」で法律相談 弁護士ドットコム、今春開始へ
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弁護士がウェブ上で無料相談に応じる「みんなの法律相談」を運営する弁護士ドットコムは13日、米新興企業オープンAIの自動応答システム「チャットGPT」を使った新たな無料法律相談サービスを今春に始める方針を明らかにした。これまで蓄積した100万件以上の法律相談のやり取りを、人工知能(AI)に学ばせるという。(以下省略)【2月13日 朝日新聞デジタルより】
(参照:https://www.asahi.com/articles/ASR2F5RHLR2FULFA00V.html?iref=pc_ss_date_article)
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報道された内容によると、ポイントは次の3点です。
- 弁護士ドットコムは、チャットGPTを使った相談サイトを4~6月に開設
- 法律に関する質問に自動で回答するサービスを始める計画
- 弁護士が答える場合に比べ、すばやく回答が出る利点がある一方で、過去の相談をもとに答えるので、最新の法律や判例を十分に反映できなかったり、間違った内容になったりする懸念もある。
「チャットGPT」とは、アメリカのオープンAIという企業が2022年11月にリリースした人工知能チャットボットです。
誰でも無料で登録することができ(2023年2月時点)、日本語も対応しています。知りたいことを打ち込めば、物の数秒でオリジナルのテキストデータを作成し、回答してくれます。驚くべきはその性能と言われています。
ハーバードビジネスレビューでは、ペンシルバニア大学准教授が大学生にこのチャットGPTを紹介したところ、なんと、「通常4時間かかるスタートアップのプロトタイプのコード作成を1時間もかからず完了させた」というエピソードが紹介されています。
精度はいかほど?使える内容なのか
とはいえ、「本当に使える回答を得られるの?」と懐疑的な方もいらっしゃると思います。今回、私(社会保険労務士)が取り扱う業務のひとつ、「就業規則を作りたい」と尋ねてみました。
すると、規則に規定すべき項目や目的、作成時の5つのステップまで詳しく説明。
そして締めくくりには「以上が一般的な手順です。ただし、具体的な内容や手順は、企業によって異なるため、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします」と書かれていました。
ではその精度はいかほどか?というと、一般的な答えとしてはパーフェクトだと感じました。
もちろん、時に古い情報や間違った内容が表記される可能性はあるでしょう。しかし、概要を知りたいときには、十分な回答レベルではないかと思うのです。
AIは人間の仕事を奪う?上手な付き合い方とは
チャットGPTをはじめとする人工知能ツールについては、賛否両論あります。
しかし、誰もが使えるチャットGPTというツールが出現したことは紛れもない事実であり、さらには、この数年のうちにより進化、一般化されることでしょう。
私たちは、与えられた時間も脳のキャパシティも有限です。その中で、膨大なデータから瞬時に回答を探し出してくれる人工知能は、人類の可能性を広げてくれるツールであると私は感じます。
各士業に共通するであろうクライアントからの相談業務も、人間が1から10まですべてをこなす必要はなくなります。同時に、一般的な回答をするだけでは相手の望む期待値は満たされず、独自のノウハウやより個別・具体的な回答に価値が付くようになるでしょう。
さて、みなさんは5年後、10年後、どんな仕事をしているのでしょうか!