私たちの生活にも大きな影響が!?物流業界に迫る2024年問題とは

講師が気になるニュース

監修:神野 沙樹 講師(社会保険労務士講座)

ニースル社労士事務所/株式会社Niesul(ニースル)代表。
社会保険労務士として会社の組織活性に携わる傍ら、年間50回を超える講師業をこなす。一方的に押し付ける講義ではなく、双方向のやり取りの中で気付きを生む研修・セミナーに定評がある。著書に『「社会人になるのが怖い」と思ったら読む 会社の超基本』(飛鳥新社)。労働基準法をはじめとする労働法の「基本のキ」が分かりやすく伝えられている。

みなさんは2024年問題という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。
2024年4月、これまで先延ばしにされていた「運送業」「医師」「建設業」に対して、残業時間の上限規制がスタートします。一見、私たちの生活には何ら関わりの無いことのように思えるかもしれませんが、実は大いに影響があります。

今回は、2024年問題に関するニュースから、私たちの生活を取り巻くインフラに与える影響について見ていきましょう。

物流改革へ異業種タッグ ファミマ×コカ・コーラ、日清食品×JA

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【2月21日 日本経済新聞より】

ファミリーマートとコカ・コーラボトラーズジャパン(コカBJI)はトラック物流で提携する。コカBJIが自社商品を運ぶトラックを使い、ファミマの各商品を店舗に届ける。運転手の長時間労働を是正する4月の規制を前に、業種を超えた物流連携が広がってきた。(以下省略)

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(参照:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78646210R20C24A2MM8000/)

報道された内容によると、ポイントは次の3点です。

  • 2024年4月以降にドライバーの時間外労働の上限は年間960時間となり、NX総合研究所によると、輸送能力は24年度に14%、30年度には34%不足する見通し。
  • ファミマはコカBJIが委託するトラックと運転手の融通を受けて配送し、コカBJIもトラックの稼働率を1台あたり1割程度高められる。小売りとメーカーが物流で協業するのは珍しい。
  • その他、日清食品とJA全農、大王製紙や日清製粉ウェルナなど、業種を超えた物流連携が始まっている。

2024年問題とはなに?

2024年問題とは、「時間外労働(残業)や休日出勤ができる時間数や回数に上限を設けますよ」という規制を、2024年4月以降、運送業や医師、建設業においてもスタートさせることを指しています。
1か月や1年間の時間外労働・休日労働の時間に上限が設けられるほか、それらに違反した場合には罰則が科せられることになります。

その他の業種については、すでに規制が始まっているのですが、運送業や医師、建設業は言わば社会のインフラを支える仕事です。残業時間に規制をかけることにより、物流が止まってしまう、医療が受けられない等になってはいけないと、規制が先延ばしにされていました。
しかし、いよいよ2024年4月からは規制が開始され、それに伴う働き方等の変更が求められているというわけです。

なお、間違いの無いようにお伝えすると、今回の規制はあくまでも時間数や回数に上限を設けるものであり、残業代といった割増賃金について「働いた時間数や時間帯に応じた支払いが必要」である点は、これまでもこれからも同様です。

運送業に与える影響

2024年4月以降、運送業においてはどれだけ忙しかろうと「年間960時間まで」しか時間外労働が認められなくなります(その他の業種は、年間の上限は720時間)。
運送業は、荷物の積み込み・荷下ろしの際の手待ち時間や道路事情の影響、また人材不足から、一人ひとりの労働時間が長くなっていました。

これまで時間外労働することで業務が成り立っていた場合、いきなり「明日からこれ以上残業はできません、帰ってください」と言われると、「やるべき仕事」が終わらないことになりますね。その結果、人や物が運べない状態になります。当然、運送会社は運べないと利益が上がらず、結局働き手に給料その他待遇を上げることが難しくなり、その結果さらに人材不足が進む…という悪循環に陥ります。

だからこそ、今回のニュースのように、他業種での提携やドローン・AI技術の活用を進めるとともに、荷主(発注元)への価格転嫁や配送スケジュールの組みなおしを行うことで利益と働き方のバランスを取る必要が生じているのです。

運送業への規制が私たちの家計に与える影響

私たちの生活にも影響が出てきます。例えば、佐川急便やヤマト運輸は、4月以降個人宅への配送料を2~7%引き上げると発表しています。場合によっては、再配達時や特急料金が上乗せされることも考えられます。

また、物流にコストがかかるということは、スーパーや小売店などの「仕入れ」に関するコストが上がることになります。そのため、巡り巡って商品にコスト分が上乗せされ、私たちが購入する価格が上がり、家計に少なからず影響を与えるでしょう。
その他、バス等の公共交通機関において、不採算路線の減便や廃止も、よりシビアに判断されていくことが予想されます。

私たちは知らぬ間に「便利」であることに慣れてしまっています。
しかし、人口(働き手)の減少とともに、「以前と同じ質・量のサービス」を求めるのではなく、私たち自身の思考も柔軟に変えていく必要があるかもしれません。

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