資格や検定を取得するメリット

公認会計士コラム

公認会計士 森 大地

はじめての資格は、簿記3級

大学4年の夏頃、就職活動で簿記検定を持っていると有利になるという噂を聞いたのと、経理を長年していた父の仕事内容を知りたいという興味から、簿記3級の勉強をはじめました。新聞やニュースで聞いたことがあった貸借対照表、損益計算書、営業利益などの用語を理解できるようになり、資産負債、減価償却、評価損益などの基礎的な会計概念も学びました。会計系の上位資格と比べれば劣るかもしれませんが、会計知識がゼロから1になるという変化は、公認会計士となった今でも大きなものだったと思います。

実用資格は、興味を広げる第一歩

簿記3級は難易度が低く、それ自体では就職活動や転職活動で有利になることは多くありません。資格としての強さはありませんが、資格の有無による会計知識の差は雲泥の差です。資産、負債、利益、損失という言葉をなんとなく知っている状態と、簿記3級の勉強をして、小規模の会社の経理になって決算整理仕訳を自分で起票できるまで問題演習を繰り返した状態とでは、会計に対する理解度が全く違います。実用資格は、資格を武器にできるかよりも、その過程で身につけた知識やスキルに価値があると思います。簿記3級を生かして、連結会計や最新会計基準の基礎が詰め込まれた簿記2級や、更に高難易度の簿記1級とステップアップするもよし。簿記3級の知識をもとに、株式投資のための財務分析の分野を独学で勉強するもよしです。実用資格は興味を持った分野の基礎知識を習得する効率的な機会ですので、ビジネスでも趣味でも、その世界を知るための入り口として活かせるのではないでしょうか。

職業資格は、取得後の努力で価値が決まる

公認会計士、税理士、社会保険労務士といった資格は、独占業務を行うための職業資格です。こうした職業資格は取得自体が難関ですが、資格を取ってからも厳しい世界があります。公認会計士が働く監査法人では、毎年のように改定される会計基準、監査基準を漏れなく把握し、激務と言われる監査実務で経験を積み重ね、優秀な会計士同士での出世競争を勝ち抜かなければキャリアを続けられません。裏をかえせば、資格取得後も継続して専門知識の習得に精進し、可能な限り多様な実務経験を得て成果を出せば出すほど、会計士としてのキャリアは広がります。私の所属する監査法人のある役員(公認会計士)は、「もともと3年で監査法人を辞めるつもりで入ったけど、高難易度の監査業務や米国への出向経験など監査法人でしか味わえない実務経験が面白くて、結局今に至るまで監査法人で働いている」と言っていました。職業資格の魅力は、資格取得後の努力によって保有資格の価値をどんどん上げることができることではないでしょうか。

資格を取得してよかったこと

私の資格学習は簿記3級からはじまり、公認会計士を目指す過程で簿記2級、1級に合格し、最終的に公認会計士資格も取得しました。資格を取得してよかったのは、シンプルに公認会計士の仕事が楽しくやりがいがあることです。もちろん、仕事には仕事の辛さがありますが、監査チームメンバー全員でプロジェクトを乗り切ったり、上司から期待されて高難易度の監査領域を任せられる時などに、充実感を感じます。試験勉強にも試験勉強の辛さがありましたが、公認会計士に会って仕事の話を聞く機会がモチベーションとなったり、勉強を継続するにつれて少しずつ目に見えた成果が出てきた時の達成感を得られたりしたことで、合格まで勉強を続ける原動力になりました。公認会計士のような職業資格ではなく、実用資格である簿記検定の取得だけだったとしても、例えば会計に強い営業職として、会計の知識を活かすきっかけになっていたかもしれません。時間をかけて取得した資格は、必ず人生のどこかで「自分の可能性を広げる第一歩」になるはずです。資格取得を通じて、自分の世界を広げていきましょう。

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