【アンケート御礼企画】読者が気になる簿記・公認会計士のQ&A

公認会計士コラム

監修:森 大地(公認会計士)

大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。

先日行った読者アンケートにて、皆様より「今後読みたい記事テーマ」を多数お寄せいただきました。
その中から、今回は「簿記・公認会計士」に関して多く頂きました内容をピックアップ!森先生にご回答いただいた内容をQ&A形式にてお届けします。

簿記の資格を取って、どの様な場面で役立つのかの具体例を教えてください

簿記は、会計帳簿を作るための基礎知識です。
勘定科目や伝票の理解、仕訳起票のやり方から始まり、貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を作成することができるようになります。
この知識があると、①財務諸表を作成する経理業務、②財務諸表の利用、③経済ニュースの正確な理解ができるようになります。

①財務諸表を作成する経理業務は、簿記2級であれば一般的な中小企業まで、簿記1級であれば連結会計や企業結合が対象になる大企業の経理業務が可能です。
特に子会社を多く持つ大企業の経理部では、例えば子会社株式の追加取得、一部売却、支配喪失、あるいは子会社による自己株式取得の連結調整などの論点が当たり前のように出てきます。

②財務諸表の利用は、株式投資などの際に使われる財務諸表分析ができるようになります。
簿記2級の知識があれば、各財務諸表がどのような過程で作成されたか、各財務諸表に表す勘定科目や数値が何を意味するかを理解できます。
この知識をベースに、収益性分析、安全性分析、成長性分析などを自社の過去比較、及び他社比較を行うことで、対象会社のビジネスの状況を会計的により深く理解することができます。

③経済ニュースには「最終利益」「減損損失」「経常赤字」など、会計の専門用語がよく出てきます。
なんとなくのニュアンスでわかったような気になるのと、会計知識の基本をしっかりと押さえた上での理解には大きな差があると思います。
「最終利益」というのは正確には会計用語ではないのですが、主に会計上の利益から法人税等を差し引いた当期純利益を指すことが多いです。国際会計基準や米国基準だと、これまで日本の経済ニュースでよく用いられてきた「経常利益」の概念がなく、段階損益(売上総利益、営業利益、経常利益などの集計項目)の名称にも若干の差があることから、「最終利益」という表現になっているのではないかと思います。

さらに、公認会計士の知識があると各社の業績比較の際に、適用する会計基準(日本基準、国際会計基準など)の差異(のれん償却の有無、減損損失の算定方法など)についても考慮することができるようになります。

森先生が公認会計士になりたいと思った理由が知りたいです

私が公認会計士になりたいと思った理由は、①就職活動の苦戦、②会計への興味からです。

大学4年生の卒業間近になっても就職先が決まらず悩んでいたところ、税理士資格を持つ父から公認会計士資格を紹介されました。自分なりに資格について調べたり、クレアールの受講相談などで公認会計士のキャリアを聞いたりするにつれ、資格取得すれば就職が確実で、キャリアも魅力的な点に惹かれました。

大学の専攻は理系だったため、もともと会計学には縁がなかったのですが、大学4年の前期に興味本位で受講した教養過程の会計学の授業がとても面白く、教授が学内の公認会計士養成講座の担当教員だった縁もあり、本格的に公認会計士試験を目指すことにしました。

確固たる理由で公認会計士を目指したというよりは、様々な状況が積み重なっての資格挑戦だったと思います。

現役会計士の生活スタイルを教えてください

大手監査法人8年目の私の例を紹介します。
東京事務所所属のためクライアントは都心が多く、住居を都心に構えた場合、通勤はかなり楽です。私の場合は時間節約のため比較的家賃負担が多い事務所近辺に住んでおり、通勤は基本的に自転車を使っています。
勤務地は、クライアント先と自宅(リモートワーク)が3:2から5:0くらいです。幅があるのは、繁忙期などは内外のコミュニケーションの効率性などから週5でクライアント先に往査に行くことがあるからです。事務所には月に数回、書類整理などでしか行かないです。

私の担当するクライアントは上場会社1社、非上場会社3社で、決算期ごとに各監査チームメンバーとともに現場往査をして監査手続を行います。
繁忙期の1〜2月、4〜5月は長時間労働ですが、それ以外は遅くても19時くらいに退社できることが多く、往査スケジュールの合間に比較的長期の休暇もとりやすいです。最近では5月に2週間、8月に1週間、年末年始休暇を2週間ほど休めています。

プレッシャーも多く、決して楽な仕事ではないですが、よく働き、よく休む、というスタイルには向いている職種だと思います。

大手監査法人へ就職するために必要なことはありますか

一般の業界と異なり、監査法人については大手と中小で就職難易度の差はありません。
むしろ、中小の方が募集数が少なく、志望度が高い受験生しか取らないなど面接通過率が低いこともあります。

監査法人への就職としては、公認会計士試験に合格さえすれば、20代であればほとんどの合格者が全ての大手監査法人で内定をもらっています(2022年時点)。
30代以降は前職経験などを加味した上での選考になると思いますが、試験合格という武器は強力なので、複数の監査法人を受験すればどこかで内定をもらえるのではないかと思います。

会計事務所で働く上でクライアントや経営者の方との会話で気を付けていることは?

監査法人8年目の私の立場では、経営者と直接議論する機会はありませんが、どのクライアントでも必ず毎年1回、監査手続の一環で行う社長へのヒアリングには同席しています。

監査責任者と社長の会話の中でよく出るのは、直近の政治・経済状況が会社に与える影響、業界全体のトピック、会社特有の変化点・懸案事項などです。
また、社長からよく質問を受けるのは、特定の経済状況下(例えば円安進行)における他社事例を踏まえた会計上の留意点や、海外子会社のモニタリング(内部統制など)に関する懸念点などです。

経営者として監査法人へ期待するのは、経済状況の変化に応じた適切な会計処理、及び子会社を含めたガバナンスに関する助言ではないかと思いますので、その辺りを経済ニュースのチェックや監査実務の積み重ねから答えられるようにしておくと良いと思います。


なかなか知ることのできない、公認会計士の世界。いかがでしたでしょうか?
他資格のQ&Aに関しても今後配信予定です。どうぞお楽しみに!

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