モチベーションの低下は、理想と現実の差から生まれる?
資格学習は、自己成長の機会であり、できなかったことをできるようになる過程です。
できなかったことに目を向け、何度も何度も復習を繰り返して一つずつできるようにすることは、非常に根気がいる作業です。
そして、資格の難易度が高まるにつれてこの作業が増えていきます。単純に時間がかかるだけでなく、「今日もまた同じミスをした」「久しぶりに解いたら全然合わない」など、習熟度の進捗に対する焦りや失望といったネガティブな感情と向き合う必要も出てきます。日々、自己成長に対する理想と現実の差をつきつけられると、精神的な負担によるモチベーションの低下により、勉強時間を稼ぐ妨げにもなります。
今回はこの「理想と現実」に着目して、長い学習期間で日々着実に勉強時間を伸ばしていく方法を考えます。
学習計画の理想と現実:「遅れる」が当たり前
学習計画は、合格目標の時期から逆算して立てられます。計画の細かさは合格者でも分かれるため好みで良いと思いますが、最終的に学習計画の達成をできないと合格できません。
よくあるのが、2年後に合格するためにしっかりと月次までの学習計画を作ったのに、仕事や学業が多忙だったため、計画が遅れてしまい、雪だるま式にやるべきことが増えて、一気にモチベーションが下がってしまうというパターンです。
私自身、公認会計士試験を一発合格すること目標にしていた受験初年度はこの傾向が強く、モチベーションは下がるし、答練などの成績も伸びず、苦しみました。
ただ、結果として翌年度の試験で合格できたのは、学習計画に遅れはあったものの、この時期に、着実に「合格に必要なもの」を積み重ねていけたからだと思います。一発合格を目指す中ですべてが計画遅れという中で、Aランクを中心にできる限り復習を繰り返し、時には新規の答練を犠牲にしてでも復習を繰り返したことが、結果として合格の基礎を築く時期になったのだと思います。
この経験から学んだのは、学習計画の「内容」が正しければ、たとえ計画から遅れたとしても、合格にたどり着けるということです。
ある程度の遅れは覚悟したうえで、基本に忠実な学習計画を重視していくことが大切だと思います。
学習進捗の理想と現実:「できない」が当たり前
非常識合格法でご存じのとおり、ほとんどの資格試験では基本的な知識を網羅的に正答できることが問われており、超難関問題を正答する必要はありません。
学習においても、いかに基礎論点を「網羅的に」マスターできるかが最重要です。網羅的なマスターのためには、たくさんの基礎論点を習得する必要がありますし、習得した論点を本試験まで覚えておく必要があります。新しい論点を習得する際、問題集を数回復習すれば基礎論点はある程度正答できるようになります。
難しいのは、その問題を数週間後に答練で出題されたときに正答できるかどうかですが、たいていは答練で正答すべきAランクの問題で多くを取りこぼしてしまいます。
この状況が学習進捗として遅れや無駄を表しているかというと、決してそうではないと思います。
むしろ、答練で「できない」が当たり前です。問題は、答練で見つけたAランクの穴をどのように埋めていくかです。
会計士試験の例でいうと、連結会計の外貨換算のAランク問題で不正解だった場合、
- 連結会計の外貨換算部分のみを復習
- もともと連結会計が苦手であれば、連結会計全体を総復習する
というパターンがあります。
多くは、①のように部分的に復習をする対処療法を繰り返すことで、少しずつAランク論点を網羅できますが、②のように苦手意識が明確な場合はある程度時間をかけて論点まるごと総復習することが必要です。
いずれにしても、答練でできないことはきっかけに過ぎず、それを起点にどのように効率的に復習していくかが、合格するために重要だと思います。
合格時期の理想と現実:必要勉強時間は当てにしない
クレアールを含めて資格予備校や各種ブログ記事では、それぞれの資格試験の合格に必要な勉強時間の目安を掲載しています。
この目安にはいろいろと前提があり、自分にとって効率的な学習計画で、毎日安定的に勉強時間を確保し、日々の学習時間で集中して取り組めた場合にのみ、達成可能だと私は考えます。
これまで学習計画の立て方や勉強時間の確保などのアドバイスをメルマガやクレアールの合格者ブログなどで何万文字も書いてきた私としては、どれも簡単に最適解が見つかるものではないと考えています。
ではこの目安の必要勉強時間をどのように活用すべきか。
私個人としては、「合格までに必要な必要最低限の勉強時間」として、最低限のノルマとしてなら目安になると思います。
もちろん、合格に直結するのはAランクの習得度であり、自分自身の実力です。最低限のノルマを達成したうえで、現時点のAランク習得度が順調であれば進捗良好、ノルマ勉強時間を達成しても習得度が目標に達していなければ、「遅れている」という認識が必要でしょう。
失敗は当たり前、成功は儲けもの
最近、趣味でスマートフォンの修理に挑戦しています。
インターネットの情報で「簡単」と言われているスマホの画面交換ひとつにしても、実際にはいくつもの難関作業があります。マニュアルどおりに作業をしても、電源が入らない、充電ができない、ライトがつかない、しまいには交換後の画面を壊してしまうなど、様々な失敗に見舞われます。壊した部品は勉強代として買いなおし、組み立ての不備はひとつずつ分析・解消していくと、最後にはようやく画面が新品ですべて動作するスマホが組みあがりました。お店に出せば1時間程度で完了する作業ですが、完成までにスマホの画面の分解を4~5回は繰り返し、合計で10時間以上はかかったと思います。
今回のスマホ修理の挑戦は、「お金」や「時間」の尺度では大失敗です。でも、趣味としての「経験値」や「達成感」からしたら、大成功でした。
資格試験においても、一発合格や勉強計画の達成といった尺度ばかりでなく、目に見えづらい日々の一歩一歩の前進に着目してみると、プレッシャーの多い資格試験において、少しは心穏やかに過ごせるのではないでしょうか。
日々の自分の頑張りという「現実」に目を向けて、前進を継続していきましょう。