お悩み相談「40代で合格しても監査法人への就職機会はありますか?」- 資格挑戦のリスクを乗り越えよう –

公認会計士コラム

監修:森 大地(公認会計士)

大学在学中に公認会計士の勉強をはじめ、公認会計士論文式試験に一発合格。現在は、クレアールの公式YouTubeチャンネル「公認会計士対策ワンポイントアドバイス」にて、監査法人での仕事や試験対策の学習法などを紹介している。

公認会計士 森大地先生のコラム。
受験勉強や会計事務所での実務経験から得た気づきやアドバイスを共有していただきます。【毎月掲載】

資格試験に伴う様々なリスク

先日、40代の方から公認会計士講座の受講相談を受けました。会計・監査の専門家として活躍するためには20代で会計士試験に合格し、30年程度のキャリアを積み重ねていくことが一般的であるため、ほとんどの大手監査法人は40代以降の採用に消極的です。そのため、相談者の懸念点は、①40代で合格後に監査法人に就職できるか、②監査法人の後にどのようなキャリア機会があるかの2点でした。この方は「就職リスク」を最大の懸念にされていましたが、難関資格への挑戦には様々なリスクが伴います。

資格試験のリスクとは、合格した時にリターンを得られるが、不合格だった場合にはリターンを得られない、というものです。たとえば、自己投資としての受講料は「お金のリスク」、長期の学習期間は「時間のリスク」です。もう一つ、資格学習に注ぐお金や時間をもし他のことに費やしていたら得られたかもしれない利益を表す、「機会損失のリスク」があります。私はこの機会損失が、難関資格への挑戦で最大のリスクだと考えています。

機会損失リスク:人生の選択を誤るリスク

機会損失とは、「もし、異なる選択をしていたら得られたかもしれない利益」です。大学4年間を公認会計士試験に費やして不合格だった人が、もしその4年間で学業や課外活動に注力していたら、その経験値を評価されて一流企業に就職できていたかもしれません。会計士試験を選ばない方が得だったと考えられるこの学生は、「人生の選択を誤ってしまった」(=他の選択肢の方が、利益が大きかった)というのが機会損失の考え方です。先述の相談者の方も、懸念する就職リスクの背景には、会計士試験に挑戦した結果、期待するリターンが得られなかった場合の機会損失への懸念があると思います。

難関資格への挑戦そのものに価値を見出す

相談者の懸念事項であった「40代の監査法人就職」「40代からの会計士キャリア」は、一部の大手監査法人で採用実績があること、相談者の前職経験(社労士資格、管理部門経験)などからみて、十分に実現可能です。その旨をお伝えしたところ、「就職リスク」についての不安はある程度払拭されました。あとは、自己投資のリターンとして、合格を勝ち取れるかどうかです。成果が不確実な資格試験ではどうしても機会損失リスクが大きくなりがちですが、私はこのリスクを低減する方法があると考えています。

それは、「合否に関わらず、全力を尽くす」ことです。当たり前と思われるかもしれませんが、ポイントは「合否に関わらず」という部分です。当然、目標である資格合格を本気で目指す必要がありますが、資格試験挑戦の本当の価値はその過程にあると思います。30代、40代になってゼロから新しいことに挑戦する機会はそう多くありません。挑戦には、お金や時間など様々な犠牲も伴います。そうした環境に身を置き、100%自分自身の決意で、本気で合格を目指す経験にこそ、どの選択肢にも負けない価値があると思うのです。

自分の努力で、選んだ道を正解にする

難関資格に挑戦している時は、いつもどこかで「不合格だったらどうしよう」という不安があります。どれだけ勉強をしても合格できる保証はないし、そもそも勉強のやる気が起きないことも少なくありません。それでも大切なことは、ゴールに向かって前進し続けることではないでしょうか。その日の調子が50%程度であれば、50%なりに前進する。120%の調子の時は頑張って120%分、前進する。自分の調子に応じて、1日1日を精一杯過ごすことが合格の近道であり、結果として後悔のない受験生活を送れることになります。自分なりの全力を武器に、資格試験のリスクを乗り越えましょう。

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