逆境を乗り越える、日常の心構え

公認会計士試験合格者 森 大地

財布を落としたとき、何を思うか

先日、久しぶりに財布を落としました。数日後に警察から見つかったとの連絡があるまで、身分証もカードもない、現金のみの生活をしました。普段、電子マネーやクレジットカードばかり使っていた私は、事前予約ができなかったり支払時の手間が増えたりと、かなりの不便を感じました。一方で、すべてを現金払いにすることで、こんなに出費が多かったのかとか、今週はあとこれくらいしか使えないから今日は自炊にしようとか、そういった当たり前の金銭感覚を改めて思い出すことができました。財布に入れていた現金約2万円は帰ってきませんでしたが、逆転の発想として、今後の日常的な出費の見直しで2万円以上の節約ができるのでは、と期待しています。

「自分はツイてる」と言い聞かせる

もちろん、財布を失くしたこと、帰ってきたのにお金が抜き取られていたことは、非常にショックでした。ただ、私には一つの信念があります。それは、根拠にかかわらず、常に自分が幸運であると信じることです。毎日、起床時や就寝時に「ツイてる、ツイてる」とつぶやく、ストレスがかかったりピンチになったときに、「ツイてる、ツイてる」と自分に言い聞かせる。こうした習慣により、「自分に起きるすべてのことには、必ず良いことである」と解釈する力を鍛えています。この解釈力こそ、逆境を乗り越えるために極めて重要だと考えています。

事実から、何を受け取るか

「財布を失くした」「現金を失った」のは、事実です。「財布を失くして不便だ」「現金を失って悲しい」のは、事実を解釈した結果生み出された、感情です。解釈力を鍛えると、マイナスの事実から、「財布の携帯方法により注意を払おう」「現金払いで金銭感覚を取り戻す」といった教訓や学びを得ることができます。これは単なる日常の小さな不幸だけでなく、大きな失敗や挫折にも当てはまるのではないでしょうか。私の経験で言えば、公認会計士試験を目指したきっかけが、大学時代の就職活動の挫折でした。周囲の友人たちと同じように社会人になりたかったのに叶わず、消去法で生まれた選択肢が資格へのチャレンジでした。

私が逆境から学んだこと

公認会計士試験に合格後、監査法人で5年目を迎える現在から振り返ると、改めて就職活動の挫折が自分に与えた影響は大きかったと思います。大学生までの私は、学業も疎かで、趣味や遊びについても何かに熱中することがなく、芯のない中途半端な人間でした。就職活動の挫折は、当初は自分の無力さに落胆していたものの、徐々に「このままの自分では、ダメだ」という危機感に気持ちが変化しました。会計士試験の受験生時代は、勉強と同時に自己分析と読書による自分探しの旅を行いました。本のジャンルは、人生観の基礎となるような自己啓発本の世界的ベストセラーや国内外の偉大な経営者の伝記を中心として、趣味、科学、会計、経営、小説など、様々な世界に触れました。普段、周囲から「メンタルが強い」と言われることが多いのは、受験生時代の自己分析と読書によって自分の考え方の芯となる部分を築けたからだと思います。

不安定な環境に動じない心構え

長期にわたる資格学習では、逆境は必ず訪れます。公認会計士講座であれば、簿記2級までは順調に進んだけど簿記1級のボリュームに圧倒されてしまい、答練の得点も伸びず自信を失ってしまう。簿記1級を合格して公認会計士試験科目の学習を始めたけれど、各科目の学習法が確立できず、合格へのモチベーションを失ってしまう。こうした時に、必要なことはなにか。それは、自分を最後まで信じることだと思います。「ツイてる」という言葉を自分に言い聞かせてポジティブな解釈力を鍛えるのも一つ、腰を据えて自己分析に徹するのも一つ、あるいは、自分自身に励ましの言葉を投げかけるノートを作るのも一つでしょう。日常のちょっとした心構えから、逆境に強い自分を育てていきませんか。

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