「扶養の範囲内で働きます」このセリフが変わる日が来る!?~話題の「年収の壁」を紐解く~

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監修:神野 沙樹 講師(社会保険労務士講座)

ニースル社労士事務所/株式会社Niesul(ニースル)代表。
社会保険労務士として会社の組織活性に携わる傍ら、年間50回を超える講師業をこなす。一方的に押し付ける講義ではなく、双方向のやり取りの中で気付きを生む研修・セミナーに定評がある。著書に『「社会人になるのが怖い」と思ったら読む 会社の超基本』(飛鳥新社)。労働基準法をはじめとする労働法の「基本のキ」が分かりやすく伝えられている。

「扶養の範囲内で働きたいです」
企業の採用面接などで聞かれるこの言葉。近い将来、この言葉が聞かれなくなるかもしれません。2023年9月末に急遽報じられた「年収の壁」問題。現在、扶養の範囲内として働いている方だけではなく、今後の日本の働き方を示唆していると言っても過言ではありません。
今回は、「年収の壁」報道から読み解く、扶養の考えとこれからの働き方について見ていきましょう。

10月から「年収の壁」解消~手取り減らさない暫定措置~

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【10月14日 Yahoo!ニュースより】
パート従業員らが〝働き損〟にならないように労働時間を抑える「年収の壁」への政府の対策が、10月からはじまった。社会保険料負担で手取りが減る106万円や130万円の壁に対して、助成金や条件付きで連続2年まで扶養にとどまれる措置などを行う。(以下省略)
(参照:https://news.yahoo.co.jp/articles/c0721d7b9f9e042be3e5f28c00d2dbf99c724b39
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報道された内容によると、ポイントは次の2点です。

  • 扶養のメリット受けるため、働く時間や収入額を調整する「年収の壁」について、国が対策をスタートさせる。
  • 今回は「106万の壁」「130万の壁」、そして企業が独自に支払う「家族(配偶者)手当の支給基準」を対象に、制度の見直しを図ると発表されている。

<本記事は、執筆(2023年10月19日)時点で公表されている内容に基づいて書かれた内容です>

年収の壁とは何?

そもそも年収の壁とは「“家族に扶養されていることの恩恵”を受けられる年収基準」をいいます。扶養認定されると、税制優遇や保険料を払うことなく医療を受けられる(医療費はかかります)、家族手当をもらえる等の金銭的なメリットがあります。
そのため、扶養家族の範囲に該当するか、外れるかの収入基準が、当事者にとっては大きな「壁」となっているわけです。

知っておきたい年収の3つの壁

年収の壁と一口に言っても、法律や制度によって基準額が異なります。
ここでは3つの壁を紹介します。

①106万円の壁

年収106万円(月額88,000円)以上になると、週20時間以上働く短時間勤務の場合は自分自身で社会保険に入らなければならないため、保険料負担が出てくる(ただし、一定の規模以上の企業に限られる)。

②130万円の壁

年収130万円以上になると健康保険の扶養に入ることができないため、保険料負担が出てくる。
※①に該当して自分で社会保険に加入することとなった場合は、そもそも扶養には入れない

③150万円の壁

年収150万円までは、配偶者を扶養していることの税制優遇をフルで受けることができる。

どんな制度改正があるの?

報じられた制度改正には、3つの内容が盛り込まれています。

①106万円の壁対策:社会保険の加入を促すための施策

社会保険に加入して保険料を支払うことに伴い、手取り額が減る人が出てきます。
その対策としては、次の通りです。

  • 企業が新たに手当を支払う。
  • 労働時間を増やして給料アップをした場合に、国から企業に助成金を支払う。

②130万円の壁対策:労働時間調整(働き控え)を阻止するための施策

年収130万円を超えないようにと労働時間の調整、残業拒否をする人が出てきます。
その対策としては、次の通りです。

  • 130万円を超えたのが一時的であると企業が証明すれば、引き続き健康保険の扶養認定をする措置(2年間限定で実施)。

③家族(配偶者)手当の見直し:年収調整(働き控え)を阻止するための施策

企業ごとに独自基準を設けて支給されている家族(配偶者)手当。この手当を受け取るため、年収調整として働き控えをする人が出てきます。
その対策としては、次の通りです。

  • 企業に対して手当の支給基準の見直しを要請。

あなたの働き方はどうする?

今回報じられた「年収の壁」問題。根底にあるのは、日本の労働力不足です。働き手がいないと経済が回りません。そのため「扶養の範囲なんて言わず、どんどん働いて、社会保険にも加入してね」と言いたいわけです。
ひと昔前までは、結婚すれば専業主婦になり、子供が大きくなればパートに出て…と言った働き方が一般的だった日本。しかし、世の中は確実に変わりつつあり、近い将来「扶養」という概念が薄れていくことが考えられます。

このようなニュースが出るとつい目先の金銭に意識が行きがちですが、将来的にどんな働き方や生き方をしていたいのか、考えてみるのもいいかもしれませんね。

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