自己肯定感と、正しく向き合う

公認会計士コラム

公認会計士試験合格者 森 大地

自己肯定感があれば、何でも上手くいく?

最近、書店のビジネス書コーナーで自己肯定感という言葉をよく目にするようになりました。自己肯定感とは、自分自身の存在を認め、「自分には生きる価値がある」と心の底から思える状態です。いわゆる、「根拠のない自信」です。タイトルにつられてそれらの本を手にすると、「自己肯定感を高めれば人生が上手くいく」「自己肯定感はこうすれば高まる」といった刺激的なメッセージが目に留まります。

私も会計士受験生時代、将来に悩んだある時期に心理学の本を読み漁り、自己肯定感という言葉にめぐり会いました。そこで学んだ自己肯定感は、上記のような「人生を成功させるためのツール」というハウツーではなく、長い年月をかけてじっくりと高めていく心理面の強さでした。

自己肯定感の基礎は、幼少期に築かれる

自己肯定感の出発点は、この世に産み落とされた瞬間です。赤ちゃんは何もできません。でも、両親をはじめとした大人たちに祝福され、受け入れられ、愛されます。「生まれてきてくれて、ありがとう」。多くのお母さんたちが赤ちゃんに投げかけるその言葉は、何もできない赤ちゃんに対する無条件の愛情を表します。この無条件の愛情こそ、「自分には、生きる価値がある」という自己肯定感の基礎なのです。

子供として成長していく過程でも、両親からは様々な無条件の愛情を受け取ります。日頃、宿題をしなさいと叱ってばかりのお母さんも、子供が病気で苦しんだり、悩みに悲しんでいたりするときには、「何でもするから元気になって欲しい」という気持ちが生まれます。その気持ちを受け取った子供には、「自分は守られている」という漠然とした安心感が芽生えます。この気持ちが、いわゆる「根拠のない自信」となり、目標への挑戦や課題の解決へ取り組む原動力になるのです。

自己肯定感は、成功体験によって向上する

幼少期の家庭環境以外でも、自らの努力によって成し遂げた成功体験から自己肯定感を向上することができます。人から褒められた時や自分が人の役に立てた時、そこに喜びを感じるのは、「自分という存在が認められた」と思えるからです。そのため、自己肯定感が低い人も、成功体験を通じて「こんな自分でもできるんだ」と自分を励まし、自分の存在価値を感じることができるのです。

私も基本的には自己肯定感が低い傾向があり、自立的に何かに打ち込むといったことがありませんでした。半ば親が決めた中学受験に始まり、付属校推薦で高校・大学に進学、特にやりたいことも見つからないまま卒業を迎えるという、漫然とした人生を送っていました。ところが就職活動で失敗したことをきっかけに、初めて自分の意思で大きなチャレンジを決意し、紆余曲折ありながらも合格することができました。その時、合格という結果がそれまでの自分自身の努力を全面的に認めてくれたような気がしたのです。「こんな自分でも、頑張ればできる」。会計士試験の合格は、私にとって、自分のことを心の底から認めることができる大きなきっかけになりました

自己肯定感と、正しく向き合う

中長期の努力を継続するためには、心のエネルギーの維持が必要です。自己肯定感が高い人は、心のエネルギーが下がりにくく、回復しやすい人です。楽観的で前向きな、活動力のある人です。心に不調を感じるとき、多くの人はこれとは真逆の状態になります。心のエネルギーが必要以上に下がり、回復しづらい、悲観的で後ろ向きになり、活動力がなくなってしまう状態です。

自己肯定感は、心の健康を保つために重要な感情です。本格的に自己肯定感を高めようと思ったら、詳細な自己分析や過去の振り返りといったカウンセリングからスタートしなければなりません。ただ、ここでお伝えしたいのは、まずは自己肯定感の力を理解していただきたいということです。簡単に高められるものではないが、正しく向き合うことで時間をかけて向上することができます。資格試験へのチャレンジは、自己肯定感向上の絶好のチャンスです。辛い時、苦しい時もあきらめず、自分自身を励まし続けてください。受験生活を通じて、着実に自己肯定感を高めていきましょう。

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