企業法務の現場から見た資格取得の意義

司法書士コラム

明けましておめでとうございます!クレアール司法書士講座受験対策室のR.Nです。

年が明けて、いよいよ令和7年度司法書士試験まで約半年となりました。
受験生活の中でも気合いを入れ直すタイミングだと思いますが、まだまだ寒い日は続きますので、体調管理に気を付けて、直前答練に向けて日々学習に励んでください。

さて、本日は日本組織内司法書士協会の泉匡人様に、「司法書士資格等の、難関資格を取得すること自体の意義」についてお話し頂きました。
新年一発目の記事として相応しい、気持ちが引き締まる内容になっておりますので、是非ご覧ください!

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こんにちは!日本組織内司法書士協会泉匡人です。
本日は、「企業法務の現場から見た資格取得の意義」についてお伝えしたいと思います。

はじめに

司法書士資格を取得するために日々勉強に励んでおられる受験生、あるいは既に資格を取得した合格者の方は、資格を取得することの意義についてお考えになったことはありますか?

当然、司法書士としての職に就きたいから資格を取得される方が多いわけですが、私のように司法書士の実務につかず企業法務に従事している有資格者の方々も、あるいは法律に全く関与しないフィールドでご活躍されている方々もいらっしゃいます。

資格取得にはどうしても試験に合格する必要がありますので、合格できない状態のままでは何も得ることができないと焦燥感に駆られたり、自分の希望する道は決して開けないと近視眼的に思い込んでしまったりするかもしれません。
受験を続ける中で、この努力は果たして実を結ぶのだろうか、今過ごすこの時間は自分の将来にどのような価値を与えるのだろうかと、不安に苛まれることもあるかもしれません。
「蛇の道は蛇」ですから、私も受験生のお気持ちは手に取るようによく分かります。

私のこれまでの経験を振り返って考えてみると、受験時代に培った能力や考え方、それは仕事をする上でのスタンスというか意識のようなものに近いですが、仕事をする上で十分に活きていることを実感します。
受験時代の経験は今後の仕事、将来に密接につながっていくことを、企業法務の観点からお伝えします。

処理能力

合格のためには多くの試験科目を学び、膨大な暗記量に奮闘し、正確な理解のもと限られた試験時間の中でスピーディな処理を求められますので、勉強を続ける中で自ずと複数同時進行の処理能力が養われていくと思います。

法務においても、このマルチタスク能力は役立ちます。

例えば…
契約法務では、同時に何十件と契約レビュー、ドラフト作成を進めなければなりません。
法務相談では、事業部のみならず、経理、人事、労務などの複数の異なる部署からの案件に対処する局面に遭遇することになります。

相手方企業や個人と交渉をする場合に、互いにテンポよくやり取りできる場合もあれば、先方からの回答に1~2ヶ月かかることもざらですので、返答があってもこれがどんな案件でどこが論点だったかを都度確認しながら対処することを求められます。

知識を深く理解し、自分の言葉で分かりやすく伝える能力

試験問題を解き合格点を得るためには、単なる丸暗記ではなく、自分の言葉で説明できるぐらいに深く理解し、更に派生知識についても押さえておかないと正解に辿り着けない、あるいは最後の2肢で判断に迷うようなことがよくあります。

不正解だった問題についてその原因を考えると、大抵は暗記が不十分だった点、曖昧な理解のまま放置してしまった点にありますよね。

仕事の上でも、知識を深く理解し、自分の言葉でシンプルに伝える能力は多くの場面で求められます。

法務は法律的な専門知識を要求され、リスクを分析した上で得られる成果と天秤にかけ、なおかつそれを適切に伝えて、関係するメンバー等に理解してもらう必要があります。

難しい法律用語を並べるだけでは決して納得してくれません。
法律知識のない方にも理解できる平易な言葉で、どんな点がリスクなのか、なぜこれが論点なのか、事業内容を考慮して具体的にどう進めるべきなのか、法律云々ではなくビジネスの観点から結局どう判断すべきなのか。
こういった事柄を単に伝達するのみならず密なコミュニケーションの中で共有し合い、法務の側面からも関与していくことで事業が少しずつ前に進みます。

役員、本部長クラスから新卒社員に至るまで、様々な役職、階層の方々が法務に相談を持ち掛けます。法律知識、事業内容の理解に大きな差異がありますので、それに応じた伝え方を考えなければなりません。時に、法務として伝えてはいけないこともあります。

また、法務として勉強会研修会の開催を求められることもあります。
新法が施行されたタイミングや、問題が発生してしまった場合など、事業への影響度合いが大きい法律の概要事業現場側に求められる具体的対処内容について解説し、実践してもらいます。

正確性、緻密性

試験問題を解く上では、正確で盤石な知識と処理が求められます。曖昧な理解、うろ覚えの部分を少しでも潰し、ケアレスミスを防がなければどうしても合格基準に達することができません。
なぜあの部分をもっと重点的に復習しなかったのか、もう一度見返せばよかったと後悔することがよくありますよね。

法務においても、微に入り細を穿ったアウトプットを求められます。

具体的に言うと…
契約書の甲・乙の取り違え、稟議承認の際の申請内容の確認などはもちろん、契約書とは別の利用規約上の規定との整合性、組織再編の際の時間的制約、税務監査上の問題点、業法ガイドラインでの論点の自社案件に対する適用の可否、偽装請負の判断等…
挙げればキリがないですが、注意点や要検討箇所は数多くあります。

誰もが気付かずそのままスルーしてしまうような事柄にこそ、法務が察知し指摘を入れる役割を担わなければなりません。
一つ一つの行動、判断、決定に慎重になり、ダブルチェックを欠かさず、「本当にこれでいいのか」と常に自問自答し、「まぁこれぐらい特に問題ないだろう」という怠惰な気持ちを抑えます。

例えば、連帯保証契約の締結を求められた際には、自社にとっては担保確保ができて良いかもしれませんが、債務者が責任逃れのために締結を急ごうとしているかもしれません。その真意を確認してみる過程を省かないことです。

安易で楽な道を選ぶと大抵足を掬われ、結局は自分に跳ね返ってくることを経験則上学んでいますので、手を抜かない行動と熟考を続けていくしかありません。
もう一歩、もう一段積み重ねることでしか、成果は上がりません。

最後に

受験生時代を振り返ってみると、あの時に培われた考え方や行動スタンスは、自分自身の価値観を醸成し、現在の仕事にも繋がっていることを実感します。

合格か不合格かという評価の点とは次元を異にして、あの時真剣に受験に取り組んだことが今ここで活きていると、ようやく納得できるようになりました。

企業法務はもとより、司法書士、およそ士業というのは名指しで仕事の依頼を受けるものです。
法務に、司法書士に、ではなく「あなたに」、解決してもらいたいと信頼を寄せるのです。

芸は道によって賢し。
将来の活躍の姿に思いを馳せながら、受験生時代の経験が将来の基盤になり、あなたの経験こそが世の中から価値あるものとして求められると信じ、矜持を持って日々学習に取り組んでください。
応援しています。

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