従業員の心の病「増加傾向」と回答した企業は約4割~経済損失は7兆円!?

司法書士コラム

監修:神野 沙樹 講師(社会保険労務士講座)

ニースル社労士事務所/株式会社Niesul(ニースル)代表。
社会保険労務士として会社の組織活性に携わる傍ら、年間50回を超える講師業をこなす。一方的に押し付ける講義ではなく、双方向のやり取りの中で気付きを生む研修・セミナーに定評がある。著書に『「社会人になるのが怖い」と思ったら読む 会社の超基本』(飛鳥新社)。労働基準法をはじめとする労働法の「基本のキ」が分かりやすく伝えられている。

近年「心の病」「心療内科」「気分障害」…さまざまな「こころの健康」に関するニュースが増えています。

今回は、従業員の心の病が増えているというニュースから、メンタルヘルスが社会や職場に与える影響と、私たちがどう向き合うべきかを見ていきましょう。

従業員の心の病 若年層で依然多く14年から2倍の水準に
【12月6日 Yahoo!ニュースより(抜粋)】

(公財)日本生産性本部(東京都千代田区)は『メンタル・ヘルス研究所』による「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果を取りまとめました。

それによると、「心の病」は10~20代が最も多く、2014年調査の2倍の水準であることがわかりました。(以下省略)

(参照:https://news.yahoo.co.jp/articles/abc71d7e8a17fdb5177ff69035ad0e598893f499

報道された内容によると、ポイントは次の3点です。

  • 本調査は、上場企業171社に対し、2025年7月に実施された。
  • 「心の病」が多い年齢層は、「10~20代」(37.6%)、企業における「直近3年間の心の病の増減」について「増加傾向」と回答した企業は39.2%であった。
  • 働き方改革やウェルビーイング推進の取組みについて、行う目的として「従業員の心身の健康維持・増進」や「エンゲージメント向上」が上位に挙げられ、課題として「費用対効果が不明確」、「評価指標の設定が難しい」という声が多い結果となった。

心の病がもたらす経済損失

心の病については、2025年6月に横浜市立大学からもう一つ興味深いデータが発表されています。それが「働く人が『気分が沈む』『眠れない』といった心身の不調を抱えながら仕事を続けることで、日本全体では年間およそ7.6兆円の経済的な損失が生じていることが明らかになった」(※1)というものです。

なお、7.6兆円という数字は日本のGDPの1.1%に相当するものです。また、がん(約3兆円)(※2)やたばこ(約2兆円)(※3)による経済的損失を大きく上回る規模であり 、まさに深刻な現代病といえます。

※1 2025年5月「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に」(横浜市立大学)

メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に —GDPの1.1%に相当と試算
メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に —GDPの1.1%に相当と試算

※2 日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超え(国立がん研究センター, 2023年)

日本人における予防可能ながんによる経済的負担は1兆円超え(推計)適切ながん対策により、経済的負担の軽減が期待される
国立がん研究センターのホームページです。

※3 受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究(厚生労働省, 2018年)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2018/201809001A.pdf

メンタルヘルス問題でおこる現場の疲弊と制度の転換期

私自身、社会保険労務士として職場を見てきましたが、メンタルヘルスの問題は出口が見えないトンネルの中にいるようなもので、ご本人だけでなく、周囲のメンバーも疲弊されているケースがほとんどです。休職者が出ると、残されたメンバーの業務負担が増え、それがさらなるストレスを生むという悪循環に陥りやすいためです。

これら深刻な現代病を解決すべく、法制度も動き出しています。

2025年5月に労働安全衛生法が改正され、これまで従業員50人以上の事業所に義務付けられていた「ストレスチェック制度」が50人未満の事業所でも義務化されます。なお、施行は公布後3年以内(最長で2028年まで)とされています。

「形だけのチェック」に終わらせないために

ストレスチェックの義務化は一歩前進ですが、大切なのは「受けること」ではなく「活かすこと」です。高ストレスと判定された人への対応はもちろん、数値には表れにくい日々の「小さな異変」に気づける環境が欠かせません。

(1)個人単位で取り組めること

まずは、私たち一人ひとりがメンタルヘルスに関する正しい知識を持つこと。

そして、「声(SOS)を挙げられる雰囲気を作ること」が大切です。「助けて」という声だけでなく、「大丈夫?」「眠れている?」という何気ない会話が、互いの心身の状況を知る機会となります。
さらに、不調を抱える人がいたときに「解決しよう」と急くのではなく、横に寄り添って話を聴くこと、これが何よりの心の安定剤となるということも覚えておきましょう。

もちろん、ご自身の心身のバランスを整えるためにも、十分な睡眠や適度な運動、デジタルデトックスなども意識してみてください。

(2)職場単位で取り組むときのポイント

職場でメンタルヘルス問題に取り組む際は、「Why(なんで)」を追及するのではなく、「What(どうしたい)」に視点を向けることをオススメします。原因追及も必要なことですが、明確な回答がないケースも多いものです。
だからこそ、身近にある改善点から、視点を未来に向けて取り組むことが大切です。

まとめ

資格試験の勉強も仕事も、心と体の健康という土台があってこそ成り立つものです。特に真面目な方ほど「人に迷惑をかけてはいけない」と自分を過度に追い込んでしまう傾向がありますが、時には立ち止まることも勇気です 。

多くの職場を見る中で、強い組織とは、弱音を吐ける組織でもあると感じます。まずは身近な仲間とのコミュニケーションを少しだけ深めてみることから始めてみませんか。

みなさんの資格試験に対する努力が、健やかな心と共に実を結ぶことを心より応援しています。

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