劣等感を、武器にする

公認会計士コラム

公認会計士試験合格者 森 大地

失敗と、劣等感

大きな挫折をした時、人は劣等感を感じます。受験や就職活動、出世競争などはその典型例です。私はこの3つすべてで「負け」を経験しています。人生唯一の受験経験である中学受験では、受験前に何度も訪れるほど憧れていた早稲田実業の入試に敗れました。就職活動では、その人間的な魅力と広大なビジネスフィールドがとてもカッコよく見えた総合商社の入社試験に惨敗しました。10年で一流の監査人になると意気込んで入社した監査法人では、同期入社の大学の後輩には2年も先を越されてしまいました。いずれのタイミングでも、例外なく私は劣等感を感じました。自分の能力のなさ、不甲斐なさ、もっとこうすればよかったといった後悔など、ネガティブな感情が押し寄せました。

自己肯定感と、劣等感

公認会計士試験に合格し、監査法人に入社して3年くらいは、会計士試験合格で得られた自己肯定感を武器に、多くに挑戦してきました。「公認会計士受験生応援サイト」のブログ記事を振り返ると、自信と期待を大きく膨らませながら日々を送っていたことが思い出されます。最近は理想と現実のギャップから、少しずつ自分の内にある劣等感が芽を出してきました。特に、約1年前からたった二人で始めた監査法人内での受験生職員支援プロジェクトではそれが顕著でした。今年からチーム体制で行うことになり、私はその中で「合格通信」というメールマガジンの編集長を任されました。けれども、合格したての新人が中心のチームメンバーとのコミュニケーションが中々うまくいきません。理想を掲げて楽しみながら始めたプロジェクトも、次第に「本当に自分は必要なのだろうか」と悩みながら続けるようになりました。

本気の議論で、本質に目を向ける

3日前、あるメンバーとメルマガの編集方針について大きな議論になりました。彼は、昨年にこの活動を一緒に始めた創立メンバーで、受験生支援への情熱が私と同じくらい強い人です。その情熱から、これまで本気の議論をしばしば繰り広げてきました。信頼関係があるからお互いに鋭い指摘ができるものの、議論自体はいつも苦しいものです。その日の議論では、編集長としての在り方について、たくさんの批判を浴びました。中でも、「最高のモノを作ろうとするあまり、メンバーの労力や思い入れを軽視している」という指摘は、非常に胸に刺さりました。自分の気がつかないところで想像以上にメンバーが苦労していたり、我慢していると知るのは辛いものです。しかし、根底にある信頼関係から、「最高のメルマガにしたいという思いが一番強いのは、メンバー誰もが認めるところ」「こだわりがありながらも批判を受け入れ、チームのために変化する姿勢を最も信頼している」というフォローの言葉もありました。

たった一人の一言が、劣等感を武器にする

私には、未だに劣等感があります。意外に思われるかもしれませんが、対人コミュニケーションもその一つです。これまで、悪意なく人を傷つけたり、不快にさせたりしたことが、数え切れないほどあります。年を重ねるにつれて減ってきましたが、未だにゼロにはなりません。でも、そんな厄介な性格の私を受け入れ、信頼して一緒に仕事をしてくれる人がいます。それは、不得意分野がありながらも情熱を持ち、より良いものを目指す姿勢を貫けているからだと思います。本当は、劣等感を気にするより、今ある自分を活かすことに意義があるのかもしれません。劣等感を抱えるからこそ、強みで勝負する。受講生の皆さんも、自分の強みを生かせる場所で勝負してみませんか。

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