すべての合格に、ストーリーがある

公認会計士コラム

監査の仕事でご一緒した先輩会計士のAさんの話です。


彼は、自動車メーカーの海外営業部出身で、数年前まで会計とは無縁の毎日を送っていました。そんな中、仕事で出会う経営者や取引先の商社マンの会計知識の豊富さに、「なんてかっこいいんだろう」「自分ももっと知ってみたい」と会計に興味を抱きました。

最初は、興味本位から簿記3級の勉強をはじめました。次第に会計の世界を追求したくなり、ついには会社を退職して会計士受験することを決めたのです。

会社を退職して会計士を目指すことにした大きな理由は、2つ。
・結婚してから4年ほど東京に住む奥さんと離れて生活していたこと(Aさんは地方都市に勤務)
・家族との暮らしと会計士を目指す自分を考えた時、会社に対してもけじめをつける必要があると考えたから
です。いずれもAさんらしい責任感溢れる決断だと思いました。
ただ、Aさんの父親だけは厳しく反対しました。「4年間も嫁と離れ離れだったのに、今度は無職になって迷惑をかけるとは何事か」。それでもAさんは、毎日、毎日、父親に電話をし、自分がなぜ会計士になりたいのか、家族をどうやって幸せにするのかを、地道に、地道に説得しました。最後は渋々認めてもらう形で、彼の受験生活はスタートしました。

それから1年半の時が経ち、合格発表日を迎えます。会計士試験では、インターネットでは受験番号のみを、金融庁の掲示板では実名を掲載しています。そのため、せっかくなら自分の名前を確かめたい、と金融庁まで足を運ぶケースも少なくありません。

しかしAさんは当時、監査法人で受験生職員として勤務をしていたため、監査現場でその日を迎えました。インターネットの合格発表画面を開くと、そこには自分の受験番号がありました。喜びと安堵の気持ちもつかの間、ある人物から電話がかかってきました。「合格、おめでとう」。Aさんの父親からでした。受験番号を伝えていないのに、なぜAさんの合格がわかったのか。実名が掲載される合格者掲示板を見に、わざわざ金融庁まで来ていたのです。受験当初、胸倉のつかみ合いになるほど激しく反対したAさんの父親は、試験合格、そしてその先にある幸せを、誰よりも願っていたのです。


私は先日、講師として3回目のクレアール合格祝賀会に参加しました。試験合格という結果の裏側には、受験に至るまでの思い、そして受験期間の試行錯誤がたくさん詰まっていることを、肌で感じることができました。皆さんの受験生活には、どんなストーリーがあるでしょうか。合格を目指す一瞬一瞬を、大切にしていきましょう。

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