先日、労災保険制度における「遺族補償年金」の法改正案が閣議決定されました。
2025年(令和7年)に決定した遺族厚生年金の改正に続き、旧来の制度がようやくいまの社会の実態へと歩み寄ろうとしています。
今回は、これらのニュースを切り口に、背景にある社会の変化と学び続けることの重要性について取り上げます。
遺族補償年金の男女格差解消へ 労災保険
【2026年4月7日 共同通信より(抜粋)】
政府は7日、労災で亡くなった人の配偶者らが受け取る遺族補償年金支給に関する年齢要件を撤廃し、男女格差の解消を図ることなどを盛り込んだ労災保険法改正案を閣議決定した。(以下省略)
(参照:https://www.47news.jp/14114431.html)
報道された内容によると、ポイントは次の2点です。
受給要件の男女平格差解消
現行制度では、夫を亡くした妻は年齢に関わらず受給できますが、妻を亡くした夫は「妻の死亡時に55歳以上」という制限がありました。
閣議決定された内容では、夫も年齢に関わらず受給可能となります。
適用事業の拡大
これまで任意適用とされていた農林水産業の小規模個人経営の一部についても、労災保険の強制適用事業とする方針が盛り込まれました。
夫(男性)より妻(女性)を保護する制度の背景
労災保険の遺族補償年金は、業務に起因する理由等で亡くなった方の収入で生計を維持していた遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹のうち、最先順位者)に支給されます。
しかし、妻以外の遺族には「一定の高齢・年少」または「障害状態」という厳しい要件があります。
中でも配偶者については、先述のように男女間の取扱い格差が大きく、これは、遺族補償年金制度が確立された1965年(昭和40年)当時の「夫が外で稼ぎ、妻が家を守る」というモデルに基づき、夫を亡くした女性の生活を優先的に保護してきたためです。
なぜ、見直しされるのか
2026年(令和8年)4月に公表された労働力調査によると、生産年齢(15から64歳)の女性の就業率は75.5%に上昇し、就業者数も3128万人と前年比36万人も増えています。
女性が家計の主軸を担う家庭も珍しくない現代において、この古い仕組みは実態とかけ離れているのではないか、また、女性の就業意欲を妨げている可能性もある、といった意見もあり、まさに今回の改正は、「現代のリアル」に追いつくためのものであると言えます。
2028年(令和10年)からは遺族厚生年金もルール変更
労災保険の見直しと併せて整理しておきたいのが、「遺族厚生年金」の改正です。
実は、遺族厚生年金においても労災保険と同様、長年「男女間の受給格差」が課題となっていたのですが、一足早く2025年に格差解消に向けた改正法が成立しており、2028年(令和10年)から順次施行されます。
【遺族厚生年金 改正の骨子】
●60歳未満で配偶者と死別した場合
男女問わず、原則として5年間の有期給付となります
※現在
・残されたのが妻の場合:配偶者の死亡当時30歳以上であれば終身受給、30歳未満の場合は5年間の有期給付
・残されたのが夫の場合:配偶者の死亡当時55歳以上であれば終身受給(55歳未満の場合は給付なし)
●60歳以上で配偶者と死別した場合
現行通り、男女問わず期間の定めなく給付されます。
変化の時代を生き抜く人生設計と学び
これらの改正から学べるのは、「社会の前提は常に変わり続ける」ということです。
かつては「当たり前」であった「扶養」を前提とした社会保障制度や税制、企業内の配偶者手当なども、今後は「性別を問わない制度」へとシフトしていくでしょう。
その中においては、働くことや扶養されることの是非を議論するのではなく、流れゆく時代の中にあってもその環境変化に左右されない「自分自身のスキル」を磨くことが人生設計を考えるうえで、非常に大切なことであると感じます。
まとめ~学習中の皆様へ
私たちが今学んでいる社会保険や労働法規の知識は、単なる試験対策のための暗記項目ではありません。目まぐるしく変わる時代の中で、自分や家族、そして周囲の人を守るための「最強の武器(ツール)」です。
なぜなら、どんなに優れた制度が存在していても、私たち自身がその仕組みを知らなければ活用することはできないからです。
「昔はどうだったか、そしてこれからどう変わるのか」という視点を持つことで、法改正の暗記もスムーズになります。
学びを通じて社会を読み解く力を養い、目標に向かって一歩ずつ進んでいきましょう!



