令和5年度司法書士試験の基準点発表がありました

司法書士コラム

皆さんこんにちは。
クレアールの司法書士講座を受講して令和4年度司法書士試験に合格したR.Nです。

8月14日、令和5年度司法書士試験の基準点が法務省ホームページにて発表されました。
今回の基準点は午前の部が26問(78点)午後の部が25問(75点)と、
昨年より午前の部が1問下がったものの、
全体としては難易度の大きな変動はありませんでした。
個人的な意見ですが、午前の部が1問下がったのは、
・民法の親族・相続分野でやや細かい知識が問われたこと
・刑法の単純正誤問題の難易度が高めであったこと
が影響していると考えております。

今回は、8月の基準点発表~10月の筆記試験合格発表の時期に
どのような過ごし方をするのがお勧めであるか

受験生の皆さんのご参考となるような記事を書いていけたらと思います。

午前の部・午後の部の択一式で、どちらか一方でも基準点に達しなかった方

午前の部・午後の部の択一式で、どちらか一方でも基準点に達しなかった方は、
今すぐに択一式の学習にとりかかりましょう。
7月2日に本試験が終わり、8月も厳しい暑さが続いていますので、
なかなか勉強のペースを取り戻すのは難しいかもしれません。
ですが、この時期から択一式の学習を本格的に再開しないと、
筆記試験の合格発表(10月10日)後に本格的な学習を開始する方が多いであろう、
今年ほぼ合格推定であったけれど残念な結果であった方々
(現状、令和6年度で合格される蓋然性が高い方々)との差を埋めることは非常に難しい
と考えます。

問題演習中心の学習だけでは、令和6年度の司法書士試験対策として不十分ですので、
講義をしっかりと受けて基本テキストや択一六法等のインプット教材を再読し、
基礎的な知識の再構築を心がけながら、問題演習を行ってください。
問題演習のみの学習ですと、達成感は得られやすいかもしれませんが、
その問題だけを丸暗記してしまったり、
出題が偏っていて満遍なく基本事項を押さえることができなかったり、
と弊害も大きいです。
基礎知識の理解と記憶が曖昧になってしまっていると、過去問と異なる表現で問われた場合に、
知っている知識であっても試験会場で結びつかず、正解できないケースが多いと思われます。
まだまだ来年の試験まで時間はありますので、1つ1つの知識の積み上げを大切に
結論を覚える際に可能なら簡単な理由付けを考えながら
丁寧に講義を受講するようにしましょう
なお、講義を受け直す際には、日ごろからなるべく自分を追い込むように、
この1回で全部覚えてしまおう」という気概で臨むことが大切です。
もちろんそのようなことは不可能ですが、講義を漫然と聞き流してしまうと
いつまで経っても知識が定着しませんので、苦手科目の苦手分野の講義であったとしても、
その1回で頭に叩き込むつもり」で視聴しましょう。

筆記試験の合格発表までは、
基本的に民法・不動産登記法・商法(会社法)・商業登記法基本4法を中心に、
択一式の学習に力を入れていただきたいと考えております。
どうしても記述式の学習から離れることに不安感を抱いてしまう方は、
登記法の択一式の学習の合間に、
合格書式マニュアルや合格書式マニュアル対応問題集を用いて、
随時ひな形を忘れないように記憶喚起するのがよろしいかと考えます。
記述式の演習については、今から闇雲に学習を再開するより、
基本4法の知識がある程度固まってから本格的に再開したほうが、断然効率が良いと思います。

択一式の基準点は午前・午後ともに超えたものの、上乗せ点が足りず総合点が厳しい方

司法書士試験に合格するためには、択一式・記述式の各基準点の合計にプラスして、
択一式問題で換算して24点(8問)~30点(10問)程度の更なる上乗せ点が必要となります。
このハードルの高さが、司法書士試験を難関資格試験たらしめている所以でもあります。

択一式の基準点が午前・午後ともに超えた方は、
司法書士試験の全科目の範囲を一通り学習し終え、演習も積み重ね、
基本的な知識をある程度習得済みである方だと考えられます。
そこで、次に意識していただきたいのは、確実に合格するためには、
午前・午後ともに30問、つまり合計で60問以上の択一式問題を正解することを目標として、
得点プランを考える必要がある
ということです。
30問に達するために、
午前の部・午後の部でそれぞれあと何問正解する必要があるか
全体的な正答率は高めであったが自分が間違えてしまった問題は、どの科目・分野に多いか
について、よく振り返ってください。

特に②について、よほどの苦手分野で完全に捨てていた
※このような姿勢は司法書士試験においては絶対に取らないでいただきたいです
という理由でもない限り、正答率が60%以上の問題を落としてしまうことには、
どなたにも多少の悔しさがあるはずです。
なぜその問題を間違えてしまったか、
問題文の読み間違いなのか?
他の知識との勘違いなのか?
他の肢の方がどうしても正解に見えてしまった理由は何か?
そもそも前提知識の理解が誤っていたか?
等、自分が納得するまで分析しましょう。

本番でのミスは、日ごろのミスよりも、
本試験の緊張した状態でのサンプルとして非常に有効です。
この分析を通じて自分のミスの傾向を把握することができれば、
日ごろの学習でどのように注意力を高めるべきか、自律することができると思います。
この分析をもとに、基本4法の苦手科目・苦手分野
(本試験で直接問われた事項のみならず、併せて押さえておくべき事項も含む)
の知識を入れ直すことから、可能な限り早めに学習を再開するとよろしいかと思います。

択一式で基準点を超えており、
記述式も基準点は超えていそうなものの手ごたえがあるとまでは言えず、
何から手をつけていいかわからないという方であっても、(1)で述べました通り、
まずは択一式をしっかり固めて60問正解を目指せる実力をつけていただいてから、
本格的な記述式の対策を再開していただければと思います。

択一式の基準点は午前・午後ともに大幅に超えたものの、記述式で失敗してしまった方

ここで言う「択一式の基準点は午前・午後ともに大幅に超えた方」の目安としましては、
いわゆる上乗せ点も取れている見込みがある方
すなわち今回の試験で択一式問題を60問程度以上取れている方を指すこととします。
択一式で60問程度取れているにも関わらず、記述式の基準点が未達かもしれないという方は、
総合点は超えているにもかかわらず残念ながら記述式で基準点落ちしてしまう可能性があり、
悔しくて夜も眠れないと思います。

ですが、厳しいことを申しますと、一式の学習と記述式の学習がアンバランスであるため、
「そもそもの学習方法を根本から見直す」必要があるかもしれません。
これは、今すぐにというよりも、年明け以降、特に4月以降の直前期に言える話ですので、
今回の記事では深く追及しませんが、
確実に3点ずつ得点できるという理由で択一式の学習に注力しすぎるあまりに、
直前期の学習では記述式の演習を後回しにし、本試験では記述式を解く感覚を忘れてしまう
ということは往々にしてあるので、是非気を付けていただきたいと思います。

択一式試験で60問程度取れているという方は、
司法書士試験全体においての知識は十分に備わっていると思われますので、
まずは何よりその択一式の得点力を維持できるように
少しずつ基本4法の学習を再開しましょう。
今年の本試験において、択一式と記述式の得点率に差があるという場合であっても、
択一式の学習によって勉強の感覚を取り戻してから記述式の演習を行った方が効率がよいため、
筆記試験の合格発表に向けた今の時期は、
まず基本4法を中心に択一式の知識を維持しておくことが優先であると考えます。
いざ記述式の演習を再開したときに択一式の進捗に気をとられないように、
少しずつコツコツと択一式の学習を進めていきましょう

答練・模試では安定して択一式は30問程度正解・記述式でも基準点を突破しているにも関わらず、本試験では総合点が厳しい・あるいは合否線上だと思っている方

誰よりも悔しい思いをされていると思いますが、
まずは、何故日頃の実力を司法書士試験当日に発揮できなかったのかをよく分析してください。
過度の緊張によることは勿論であると思いますが、
それ以上にしっかりと問題や自分の解答の具体的な中身を見て
平常時の自分であったら到底しそうにないミス本番で初めてしてしまったミス
がどの程度あるか、どういったパターンのミスが多いか
択一式問題の読み間違い思い込み他の知識との混同
記述式問題の事例・別紙・注意書きの読み飛ばし単純な転記ミス等)
をよく確認してください。
本試験時の極限状態の自分と向き合わなければならないこの作業は
非常にしんどいものがあると思います。

ですが、今後二度と同じ轍を踏まないように、
日ごろの学習で発見する苦手科目や苦手分野に対する弱点分析のみならず、
極度の緊張状態に置かれた自分の“司法書士試験そのもの”に対する弱点分析
しっかり行ってください。

筆記試験の合格発表に向けた今の時期にすぐに学習を再開するかは、
ご本人のご判断に委ねたいと思います。
もし、今すぐに今年の本試験を思い出そうとすると精神的に追い込まれてしまい、
もう二度と司法書士試験を受けたくなくなってしまいそうなくらい
心に傷を負ってしまった方
は、思い切ってリフレッシュするべきであると思います
(その場合は、上述の自己分析を徹底的に行うことすらお勧めできません)。
ですが、その場合であっても、万が一残念な結果であったときの覚悟を持って、
すぐに勉強モードに切り替えられるように
教材や学習環境を常に整理整頓しておくことを強くお勧めします

以上、8月の基準点発表~10月の筆記試験合格発表の時期の
お勧めの過ごし方
について書かせて頂きました。
特に記述式の問題演習の開始時期については様々なご意見があるかと存じますが、
現時点では、択一式で60問正解を目指す、または
それを維持するところを優先的に実践していただきたいと思います。

まだまだ暑い日が続きますので、体調に十分ご留意の上、日々の学習に励んでください。

8月1日にリリースしましたCROSS STUDYの記事はこちら

執筆:R.N(司法書士有資格者)

クレアールの初学者向け司法書士講座を受講し、令和4年度司法書士試験に一発合格。
大学在学中は司法試験を目指していたが、挫折してしまい法科大学院に進学しなかった経験あり。法律難関資格への想いを断つことができず、司法書士試験を目指すことに。
現在は、クレアールの司法書士教務担当として受講生のサポートなどを行う。他に行政書士、宅建士、日商簿記2級、漢検準1級等を保有。

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