みなさんは「年金制度」にどのくらい興味をお持ちでしょうか。
「年金なんて、どうせもらえないよ」「年金制度は複雑でよくわからない」…色々なお声が聞こえてきそうですが、私たちの生活に大きく関わる制度であることには違いありません。
今回は、2025年6月に可決・成立した年金制度改革のニュースから、働く私たちに関わりのある3つの制度改正について見ていきましょう。
年金制度改革の関連法 参院本会議で可決・成立
【6月13日 NHKnewsより(抜粋)】
パートなどで働く人の厚生年金の適用拡大や基礎年金の底上げ措置を盛り込んだ、年金制度改革の関連法が、13日の参議院本会議で、自民・公明両党と立憲民主党などの賛成多数で可決・成立しました。(以下省略)
参照:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250613/k10014834141000.html
報道された内容によると、ポイントは次の2点です。
- 年金制度改革の関連法では、働き方の多様化を踏まえ、様々な改正点がある。
一部を挙げると「年収106万円の壁」と呼ばれる社会保険加入の賃金要件撤廃、65歳以上の人が一定の収入を得ると厚生年金が減らされる「在職老齢年金」の基準見直しのほか、iDeCoの加入年齢の引き上げなど。 - 将来の受給額が不安視されている基礎年金額について、今後の社会経済情勢を見極めた上で、給付水準の低下が見込まれる場合に、給付水準を底上げする措置を講じられるとされた。
【パートタイマーや50人未満の会社にお勤めの方】誰もが社会保険に加入する時代へ
パートやアルバイトで働く方の中には、「勤務時間が短いから」「会社の規模が小さいから」といった理由で、厚生年金や健康保険の加入対象外とされている方がいます。
しかし、今回の法改正で、より多くの短時間労働者の方が社会保険に加入することとなります。
具体的には、①学生ではなく、②週20時間以上働く方は対象となり、従来の「年収106万円以上であること」という「106万円の壁」は撤廃されます。
「51人以上の企業」という企業規模の要件も10年かけて段階的に縮小・撤廃されるため、週20時間以上勤務する場合は「誰もが社会保険に加入する」という時代がやってくるわけです。
ただし、個人事業所で常時使用者が5人未満の場合や、常時5人以上を使用する場合であっても、2029年10月時点で既に存在する個人事業所のうち、適用対象外の業種である場合は、引き続き社会保険の対象外とされます。
【50歳代や定年を迎える前の方】60歳以降の働き方と年金
「年金をもらいながら働くと、年金が減らされる」という、いわゆる「在職老齢年金」の仕組みも、今回の改正で変更されます。
これまでは、60歳以上で年金をもらいながら働く場合、お給料と年金の合計額が一定の基準(2025年度は51万円)を超えると、年金の一部がカットされていました。
改正により、2026年4月以降、この調整基準が62万円に引き上げられることとなります。
例えば、みなさんが50歳を迎えたときや会社の定年を迎える2~3年前になると、「今後の働き方・収入額と年金額」を考え始めるのではないでしょうか。「もっと働きたいけど、年金が減るから…」と働くことを諦めていた方も、収入を気にせず働き続けやすくなります。
なお、具体的な年金額や調整額を知りたい場合は、年金事務所での相談やねんきん定期便、公的年金シミュレーター(https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html)などを活用することができます。
【すべての方へ】老後資金の強い味方!iDeCo(イデコ)が変わる!
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、「自分で作る年金」として注目されている制度です。毎月決まった金額を積み立てて、自分で選んだ金融商品で運用し、その成果が将来の年金として受け取れる仕組みです。
これまで、iDeCoに加入できる年齢には上限がありましたが、今回の改正で、70歳まで加入できるようになります。また、今後さらに拠出限度額の上限も引き上げも予定されています。
iDeCoは、掛金が所得控除の対象になるほか、運用益が非課税になるなど、税制面で優遇されているのが特徴です。まだiDeCoを始めていない方も、すでに利用している方も、この改正を機にご自身の老後資金計画を見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回の年金制度の改正は、まさに「人生100年時代」を見据えたものです。平均寿命や健康寿命が延びる中で、「60歳で定年」という従来の働き方にとらわれる必要はなくなってきています。
「何歳まで働くのか」
「どのように働くのか(一社専属・副業・フリーランス等)」
「どう資産を形成し、活用するのか」
これらの問いに対する答えは、一人ひとり異なる時代です。
今回の年金改正は、皆さんの「長く働く」「自分らしい働き方を見つける」「安心して老後を迎える」ための追い風となるはずです。今後のキャリア形成や、老後設計をじっくり考えてみてはいかがでしょうか。