簿記1・2級の学習者の多くが苦手にされている論点の一つが有価証券です。事実、答練等の正答率を見ると、皆さんが苦戦されていることが見て取れます。
しかし、有価証券は考え方や解き方を知ってしまえば、比較的簡単に解く事ができる問題も多いです。
そこで、今回は有価証券について、①歴史・背景②分類③解き方に分けてご紹介致します。
まずは会計制度上の有価証券の歴史を探っていきましょう。
時価評価の歴史は浅い
まずは現行制度上の有価証券の原則的な評価方法は、「時価評価」である点を押さえましょう。時価評価の大まかなイメージは、現時点(=期末日)の市場価格です。B/S上は有価証券が時価で計上され、P/L上では評価損益が計上されます。
この時価評価の対になる評価方法が「原価法」です。
B/S上は有価証券の取得価額が計上され、P/L上は原則として評価益は計上されず、評価損も特定の条件を満たした場合に限定されます。
実は日本の制度会計上、時価評価の歴史は比較的浅く、本格導入が行われたのは2000年です。それ以前は原価法による評価が行われていました。
なぜ、180度方向転換するような改正が行われたのでしょうか。
原価法の問題点
時は1990年代後半、日本経済がバブル崩壊の余波を引きずっていた頃です。バブル期には40,000円弱をつけた日経平均株価は15,000円を割り込むまで低下しました。実に60%以上の下落です。
ここで、原価法の問題点が表れます。仮に企業が40,000円で購入した株式を保有している場合、ある時点の期末時価が15,000円となっても、B/S上は40,000円で計上されてしまいます。P/L上の評価損は計上すらされません。
これでは、財務諸表が企業の正しい姿を反映しているとは言えません。皆さんが投資家であれば、多額の含み損が存在する企業の株を購入することは躊躇するはずです。
また、含み損が情報として表示されない財務諸表の信頼性も問題となります。
このような経緯から原価法は廃止され、有価証券の原則的な評価方法は原価評価から時価評価へと転換されることになりました。(※他にも導入経緯はありますが、まずはこの点をおさえましょう。)
また、同時に有価証券を保有目的ごとに区分することが要求されました。
時価評価の影響
時価評価の導入により、多くの大手企業・金融機関は多額の損失を計上しました。当時の報道を調べると550億もの損失を計上した地銀もあったようです。
ただし、悪い面ばかりではありません。評価損の計上を通じて企業の非効率な資産の整理・売却が進み、企業統治の透明化・資本効率の改善が図られるようになりました。
まとめ
今回は、簿記のテキスト等では触れられない、歴史的な背景を解説しました。
背景を理解したところで、次回は有価証券の分類・評価方法を再整理してみましょう。