2026年10月から、パートタイム・有期雇用労働法施行規則が改正されることに伴い、パートタイマーや有期契約社員(以下、パートタイマー等)として働く際に交付される「労働条件通知書」の記載内容が変更されます。
同時に「同一労働同一賃金ガイドライン」も改正され、非正規雇用の方に対する退職金や各種手当の支払いルールが、これまで以上に厳格かつ明確になります。
今回はこのニュースを切り口に、背景にある社会の変化と、これからの時代に求められる「働く選択肢の多様化」について見ていきましょう。
待遇差の説明義務 条件明示事項を追加 パート有期則など改正 厚労省
【2026年5月21日 労働新聞より(抜粋)】
厚生労働省は、非正規労働者の待遇改善に向けたパート・有期雇用労働法施行規則および労働者派遣法施行規則の改正省令を公布した。待遇差に関する説明義務の運用を改善するため、雇入れ時の労働条件明示事項として、「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」を追加した。(以下省略)
参照:https://www.rodo.co.jp/news/219031/
報道された内容によると、ポイントは次の2点です。
・労働条件通知書の変更: 2026年10月以降、パートタイマー等への通知書に「次の窓口に対して通常の労働者との間の相違等について説明を求めることができる」と明記したうえで部署名などの記入欄が必要となる。
・ガイドラインの改正:「同一労働同一賃金ガイドライン」がより踏み込んだ内容に改正され、10月1日より適用される。
なぜ「説明を求める権利」が明記されるのか?
そもそも、パートタイマー等を雇用する際、現行法でも「昇給・賞与・退職金の有無」や「相談窓口」を記載する義務はありました。
正社員に賞与や退職金制度がなければ明示の必要はありませんが、パートタイマー等の場合は「無い」場合は「無い」とハッキリ記載することが求められています。
今回の改正でさらに「説明を求める窓口」が追加された背景には、「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜ給料や手当に差があるのか」と疑問を抱えるパートタイマー等が依然として多いという現状があります。
これまでも法律上、会社に説明を求めることは可能でしたが、現実には言い出しづらいものでした。
そこで、雇い入れ時の書類に窓口を明記させることで、働き手が会社へ質問しやすい環境を整えようとしているのです。
手当や退職金、賞与の定め方も要注意
もう一つの実務上の重要ポイントが「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正です。
「正社員だから/パートだから」という雇用形態の違いだけで待遇に差をつけることは以前から禁止されていましたが、今回の改正では判断基準の範囲が広がり、より踏み込んだ内容が追加されました。
【待遇改善の具体例】
退職金(退職手当)
「これまで働いてくれたことへの報酬(功労報償)」や「賃金の後払い」の性質を持つ場合、「パートタイマーだから」という理由だけで不支給にしたり、不合理に低く設定したりすることはNG。
生活補助的な手当(家族手当・住宅手当など)
契約更新を繰り返すなど「継続勤務」が見込まれるパートタイマー等には、正社員と同じ条件で支給する。
福利厚生(休暇・永年勤続表彰など)
正社員に夏・冬休みがある場合や、勤続年数に応じた表彰・ボーナスがある場合、同じ基準でパートタイマー等にも付与する。
大切にしたいのは「形」ではなく「内容」
今回の改正は、単に書式を変更したり、制度を拡充したりすることだけが目的ではありません。
「パートタイマー等は待遇が悪くても仕方ない」と曖昧にされてきた基準を、誰もが理解できるように可視化し、会社側は「なぜその待遇を」「いくら」「誰に対して」行うのかを、迷いなく合理的に説明できる状態にする必要があります。
なぜ国がここまで求めるのか。
それは、少子高齢化による働き手の減少とともに働き方が多様化し、労使間の行き違いやトラブルが激増しているからです。
雇用形態ではなく「スキル」で評価される時代へ
今後、企業は「雇用形態」という枠組みではなく、「一人の人として」の働き方やスキル、貢献度を正当に評価することが求められます。同時に、明確な評価軸を示せない企業は、働き手から選ばれなくなっていくでしょう。
一方で、働く側にとっても、「正社員として会社に属していれば安泰」という時代は終わりを告げようとしています。待遇の差が「雇用形態」ではなく「スキルや役割」に基づくようになるということは、客観的な能力の証明である「資格」の価値もこれまで以上に高まるでしょう。
まとめ
今回の法改正やガイドラインの見直しは、単なるパートタイマー等の待遇改善にとどまらず、社会全体の働き方を見直す大きな転換点であると筆者は考えています。
企業にはこれまで以上の透明性が求められ、働く一人ひとりには「主体的なキャリアづくり」が問われる時代になります。
資格を取得し、自己研鑽に励んでいるみなさんにとって、スキルや実力が正当に評価されやすくなるこの社会の変化は、非常に大きな追い風になるはずです。
ご自身の強みや専門スキルをどう伸ばし、社会でどう活かしていくのか。そして、どのような働き方を実現したいのか。ぜひこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。


