公務員試験ガイド「試験内容をまるっと解説!」

 公務員になるためには、試験に合格する必要がありますが、試験種目が幅広く用意されていることと、受験先によって試験方式が異なることで、試験の概要がイメージしづらいと言われています。

 もし、「受験してみたいけれど、どんな試験なのかよくわからない」とお困りでしたら、ぜひここで公務員試験の全体像を知っていただければと思います。

目次

公務員試験の「試験種目」を知ろう!

学科試験

・教養択一試験
・専門択一試験
・SPI3
・SCOA 等

記述試験

・論文試験
・専門記述試験
・作文試験
・職務経験論文

人物試験

・個別面接
・集団面接
・集団討論
・プレゼンテーション
・適性検査、体力検査 他

受験先別 試験内容の違い

 今度は、受験先ごとにどのような組み合わせの試験を行なっているかをご覧ください。

受験先験内容
大卒程度 国家公務員、県庁など教養択一+専門択一+論文+個別面接など
大卒程度 市役所・教養択一+専門択一+論文+個別面接、集団討論など
・教養択一+論文+個別面接、集団討論など
・SPI+論文+個別面接、集団討論など
大卒程度 警察官・消防官教養択一+論作文+個別面接+体力検査など
高卒程度(事務)教養択一+作文+個別面接など
社会人経験者(事務)・教養択一+職務経験論文+個別面接など
・SPI+経験論文+個別面接など

試験内容の解説

教養択一試験の内容

 試験区分や、職種を問わず、公務員試験において最も課されることの多い筆記試験が教養試験です。
教養試験は一般知能分野(数的処理、文章理解)、一般知識分野(社会科学、人文科学、自然科学)などの幅広い分野から5肢択一式(ごしたくいつしき)で出題し、概ね120分~150分で40~50題を解答する方式となっています。
※国家公務員試験では、「基礎能力試験」と称しています。

教養試験の概要を図にしています。一般知能分野には数的処理、文章理解が含まれ、一般知能分野には自然科学、人文科学、社会科学などが含まれています。
数的処理とは

 公務員試験の中で最も重視されている科目で、どのような方式の試験であっても出題されることが多いのが「数的処理」です。「数的」といってもすべてが数学ということではなく、数式を用いない知能クイズのような問題も多く含まれ、数学についても中学までに習ったレベルで対応できます。
 また、数的処理には「判断推理」「数的推理」「資料解釈」「図形把握(空間把握)」という4つのジャンルが含まれています。

判断推理 
判断推理は、文章や図形などで与えられた条件をもとに論理的に考えていくという問題が出題されます。
具体的には、集合、命題、対応関係、順序・配置、試合の勝敗、発言の真偽、軌跡、折り紙などです。
数的推理
数的推理は、食塩水の濃度や速さといった問題や、約数・倍数、整数問題、比・割合、確率、平面図形といった分野からの出題が見られます。(中学レベルの数学がベースとなっています)
資料解釈
資料解釈は、提示された表やグラフなどから読み取れること、読み取れないことを考えさせる問題が出題されます。基本的には数字の扱い方が重要な科目で、普段の算数や数学とは異なる数の扱い方が必要になります。
図形把握
図形把握は、図形、特に立体図形に関する問題が出題されます。具体的には、立体図形の分割や切断、投影図、正多面体、軌跡などです。
試験案内の出題内容を見ると、この科目が表記されていないことがありますが、判断推理や数的推理の中に含まれて出題されています。

文章理解とは

 数的処理と同じ一般知能分野の科目ですが、内容は「現代文読解」「英文読解」に分類されます。

現代文読解は日本語、英文読解は英語の長文読解です。「要旨把握」「内容把握」「空欄補充」「文章整序」といった形式で出題されていますが、学習して力をつけることが難しく、得意な方は勉強しなくても解けるようになる一方、苦手な方は短期間で伸ばしにくいため、特に英文読解は深入りしすぎないことも大切と言われます。

自然科学とは

 自然科学は「物理」「化学」「生物」「地学」「数学」から1,2問ずつ出題されています。自然科学は理系の方にとって取り組みやすい科目です。

人文科学同様、出題数は決して多くないのですが、東京消防庁は自然科学の出題が多く、重要科目とされていますので、消防官を目指す方は優先順位を高めにしておく必要があります。

人文科学とは

 人文科学は「日本史」「世界史」「文学芸術」「思想」といった科目から出題され、これらは概ね高校までに学習された分野です。一つひとつの科目は非常に範囲が広い反面、1科目あたりの出題数は1,2問程度であることが多く、文系で得意な方は自然科学より人文科学を優先し、可能な範囲で得点できるようにしましょう。

社会科学とは

 社会科学は「法律」「政治)「経済」といった分野から出題され、これに加え「時事」「社会事情」などが含まれます。時事は社会の動向に関するトピックスから出題されるため、政治や経済に関する時事的な問題もあります。

教養科目の試験別出題数

教養試験で出題される科目の多くは、高校までに学んだ内容から出題されています。
非常に科目が多く、分野も多岐にわたりますが、すべてをマスターする必要はありません。
どのような試験でも出題数が多く重視されるのは「数的処理」「文章理解」などの一般知能分野で、「社会科学・時事」「人文科学」「自然科学」などの一般知識分野は細かい科目ごとの出題数を見ると、1,2題程度となっているものばかりです。
社会科学と時事は比較的出題数が多いので優先して学習しておくことをおすすめしますが、人文科学と自然科学は無理に手を広げず、時間があれば可能な範囲で得意科目に着手しておけばよいとお考え下さい。

教養試験の試験別出題数一覧です

※出題数がピンク色になっている科目は必須解答です。

専門択一試験の内容

 概ね大卒程度の試験で課される試験です。試験方式は択一式記述式に分かれますが、試験科目は受験する職種によって異なります。行政区分の場合は法律・経済・行政などの分野から幅広く出題され、技術区分や心理・福祉区分ではそれぞれの専門分野に関する知識を問う問題が出題されています。
 行政区分以外では、それぞれの専門分野を大学などで専攻している人であれば対応できる内容です。

【行政系の専門科目】

行政系公務員試験の専門科目は、法律系、経済系科目、行政系科目、事情系科目などに分類されています。

専門試験の試験別出題数

専門科目に対しては「学習の経験がない」「専攻していない」という不安を持つ方も少なくありません。
しかし、法学部や経済学部の方も今まで専攻していない未学習の分野があるので、特定の学部出身者が有利になるということではないのです。
また、法学部や経済学部出身だからといって、すべての方が出身学部の分野を得意にしているわけでもなかったり、教育学部出身の方が、初めて学習する経済原論を得意科目にするといったこともあります。

※出題数がピンク色で書かれているものは必須解答科目です

記述試験の内容

論文試験

 論文試験は「小論文」「課題式論文」「教養論文」など、様々な呼称がありますが、特にこれといった違い
はありません。与えられたテーマに対して、客観的な事実を論旨に沿って提示したり、そのうえで自分自身の
考えを盛り込みながら結論づけをします。
 主に大卒区分の試験で行われていますが、意外と配点が高いため、時間と労力をかけて対策を立てる必要があります。
(90分で1,000~1,200字程度が一般的な解答時間とされます)

論文試験 出題例
・国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい(特別区Ⅰ類)

・あなたの考える「住みやすさ」の要素のうち、特に重要だと思うものを二つ挙げ、「日本一住みやすい愛知」の実現に向け、県としてどのような施策を行っていくべきか述べよ。(愛知県)

・市民が市役所の職員に期待することとは何か。また、その期待に対してあなたはどのような行動をするべきか。具体的事例を挙げて論じなさい。(埼玉県草加市)

作文試験

 作文試験は主に高卒程度の試験で課されています。テーマとしては、主に受験者の「公務員像」を問うようなものが多く、書き手の考えや体験したことを踏まえて記述します。
 特別区Ⅲ類の場合は80分で600字以上1,000字程度となっています。

作文試験 出題例
・社会の一員として働くということ(国家一般職 高卒区分)
・私が地域に対してできること(特別区Ⅲ類)
・あなたが警察官を志した理由を1つ挙げた上で、警察官になって将来やりたいこととそのために努力していることについて述べなさい。(千葉県警B区分)

職務経験論文

 社会人経験者採用試験において行われる、職務経験に関する論文です。
主に、これまでの職務経験を振り返り、その経験がどのように行政の職員として生かすことができるかを問うような問題が多く出題されています。
※90分で1,000~1,500字程度が目安

職務経験論文 出題例
・これまでの職務経験の中であなたが持った問題意識について述べ、その問題意識についてどのような対応を行ったか述べなさい。また、その経験を市職員として働くことになった場合に、どのように生かせるかを具体的に述べなさい。(札幌市)

・仕事の優先順位について、あなたのこれまでの職務経験を簡潔に述べてから、その経験を踏まえて採用区分※における立場として論じてください。(特別区)
※ 採用区分とは、1級職は係員の業務を行う職、2級職(主任)は係長職への昇任を前提とした係長職を補佐する職、3級職(係長級)は係長、担当係長、主査又はこれに相当する職とする。

・川崎市では、誰もが個人としての自立と尊厳を保ちながら、住み慣れた地域や自らが望む場で、安心してすこやかに生き生きと暮らせるまちづくりを進めています。
 このまちづくりを推進するうえで、活用できるあなたの職務経験を、具体的な事例を挙げたうえで、事実に即して述べるとともに、その職務経験を活かし、あなたがどのように川崎市に貢献できるのかを、併せて述べてください。
 (川崎市)

専門記述

 国家総合職、裁判所、国家専門職あるいは東京都Ⅰ類B(行政・一般方式)などで課される試験種目です。
5肢択一式のように、正答を選択するのではなく、専門分野に関して説明を行う試験内容となっています。
 また、特別区Ⅰ類においては事務職以外の区分で専門試験は記述式で行われています。

国家総合職(行政)の場合
[選択問題] 3題 次の14科目から3科目選択
政治学、行政学、国際関係②、公共政策②、憲法、行政法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、国際法、経済理論、財政学、経済政策 (注)国際関係又は公共政策を含む選択をする場合にあっては、2科目又は3科目。

国税専門官の場合
以下の5科目(1科目1題)より1題を選択。
・憲法 ・民法 ・経済学 ・会計学 ・社会学

法務省専門職(矯正心理専門職)の場合
心理学に関連する領域 1題出題

■法務省専門職(法務教官・保護観察官)の場合
次の領域から1題ずつ計4題出題、任意の1題選択
心理学に関連する領域、教育学に関連する領域、 福祉に関連する領域、社会学に関連する領域

東京都Ⅰ類B(行政・一般方式)の出題科目と例題
次の出題分野10題のうちから3題選択

1.憲 法  憲法改正の意義及び手続について述べた上で、憲法改正の限界について学説に言及して説明せよ。
2.行政法  行政立法の意義を述べた上で、法規命令及び行政規則について、それぞれ説明せよ。
3.民 法   連帯債権について説明せよ。
4.経済学  ソローの成長モデルを用いて閉鎖経済における資本蓄積のメカニズムを説明し、貯蓄率の上昇が与える影響について述べよ。ただし、人口増加と技術進歩はゼロとする。
5.財政学  政府間財政移転について、公平性、効率性の観点から機能及び課題に言及して説明せよ。
6.政治学  マス・コミュニケーションの効果に関するクラッパーの学説を述べた上で、マコームズとショー、ノエル=ノイマン、ガーブナーが提唱した学説について、それぞれ説明せよ。
7.行政学  日本における内閣機能の強化を図った中央省庁再編について、その背景及び内容を述べよ。
8.社会学  ブルデューの文化的再生産論について述べよ。
9.会計学 資産会計のうち、繰延資産について、その意義と範囲及び内容についてそれぞれ説明せよ。
10.経営学 ポーターの競争戦略論について説明した上で、競争優位の源泉の考え方について述べよ。

人物試験の内容

 公務員試験は就職試験ですので、人物を評価する試験種目に大きな比重がかけられています。
そのやり方も、個別面接を中心に様々な形式があり、受験先によって異なります。

個別面接

 受験生1名と複数名の面接官で行われる口述試験です。概ね20分から30分の質疑応答が行われ、一般的には筆記試験合格後に実施されます。回数は受験先によって異なり、2回から3回行われることが多いようです。
(場合によって一次試験で面接が行われることもあります)
コロナ禍以降、面接試験のやり方も変化が起こり、オンラインで行われたり、事前に動画を録画して提出するなど、新しいタイプの面接を行う自治体も出てきています。

よくある質問
・なぜ公務員を志望したのか
・今までの学生生活で最も力を入れて取り組んだことは何か
・採用されたらどんなことをしてみたいか
・自分のどういった点が公務員に向いていると思うか
・今までに挫折や失敗した経験はあるか
・長所、短所について
・1分間自己アピール
 など

集団面接

 複数名の受験生と面接官で行われる口述試験です。

 個別面接のように一人ひとりに対してじっくりと質疑応答をする形式ではないため、簡潔に回答することや、他の受験生の話にも耳を傾けることなどが大切です。個別面接と比べると試験における重要度は低く、「評価の高い人物を選ぶ」というより「評価の低い人物を落とす」という試験とも言えます。

集団討論

複数の受験者をグループに分けて、制限時間内に与えられた課題について結論を出す試験です。

個別面接や集団面接と異なり、他の受験生と会話をする点が大きな違いですが、グループで一つの課題解決をするという共通の目標に向けてお互いに意見交換をすることが必要とされます。「人の話に耳を傾けること」「積極的に参加すること」そして、「課題解決に向けて全体の進行状況を見る」ことが大切です。
 ディベートではないので、どちらの意見が正しいかを討議するものと混同しないようにしましょう。

プレゼンテーション

 与えられたテーマについて3分程度でプレゼンテーションを行い、その内容について質疑応答を受ける形式の試験です。個別面接の中で行われる場合もあれば、独立した試験種目として行われることもあります。
(特別区は個別面接の際に「自分のやりたい仕事」を話す形式で、東京都新方式は筆記試験の際に作成した政策課題的テーマのプレゼンシートについて話す形式)

体力測定・体力検査

 主に公安系の試験で実施されています。腕立て伏せ、腹筋、往復横跳び、シャトルランなどを行いますが、一部の市役所などでは事務職でも体力検査を行うことがあります。

適性試験

 適性試験は、受験者の“事務適性能力”つまり、公務員となって事務を執り行うのに必要な能力や基本的な仕事(文書の記入、清書、集計、照合、転記、分類、整理といった作業)を、いかに速く正確にこなすことができるか、その能力・適性を測ることが目的とされています。
 マークシート式で100~120題を10分から15分程度で解答するため、1問あたり10秒以内で解答できるような問題が出題されます。

【出題される分野】
計算形式……簡単な四則(加減乗除)演算をする。
分類形式……文字や数字を手引きに従って分類する。
照合形式……文字や数字を照らし合わせる。
置換形式……文字や数字や記号などを手引きに従って、ほかの文字や数字に置き換える。
図形把握形式……同じ形の図形や、異なる形の図形を探す。

適性検査

 適性検査は、公務員としての適性があるかを測る検査ですが、やり方は受験先によって異なります。主な方式としては「クレペリン検査(単純作業を通して性格・行動の特性を測る)」や「Y-G性格検査」などがあります。

【性格検査の質問例】
・小さなことでもなかなか決断できない。
・淋しいのでだれかにそばにいてほしいと思うが、気軽に人に会う気はしない。
・お洒落どころか身だしなみにも興味がもてない。
・すぐに涙ぐむ。
・いったん怒り出すと自分がおさえられない。
・気分にムラがある。
・生まれ変わりがあるとしたなら絶対自分以外の人間になりたい。


 このように、細かく見ていくと試験の内容には非常に多くの種類があるということがわかりました。
最初からこういった情報だけを見てしまうと「何が何だかわからない!」「こんなにたくさんできない!」と混乱してしまうものですが、大きな種類はあくまでも「択一試験」「記述試験」などの筆記試験と、面接に代表される人物試験という2つだけです。
 もしこれから受験したい自治体などが決まって、試験案内を見たときに今回お話した試験内容を知っておけば、どんな内容かイメージがしやすくなると思います。

まとめ

✔公務員試験にはさまざまな試験種目がある!
✔受験先によって試験種目の組み合わせが変わるので、受験先の試験内を知ることが大事!
✔科目の多い教養・専門試験は優先順位をつけて学習する
✔記述試験や人物試験にもさまざまな種類がある

この記事を書いた人
クレアール公務員相談室タニオカ
これまで、公務員試験の受験・学習を考える3,000人以上の相談に答えた実績を持つアドバイザー。「公務員 転職ハンドブック」「ココからスタート!公務員試験入門ハンドブック」などを執筆。


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