全国的に筆記試験の方式が多様化。 新しいタイプの試験の内容についてご説明します。
近年、地方自治体の行う採用試験では、全国的に筆記試験の方式が多様化していることから、試験内容は従来のような「教養試験のみ」「教養+専門試験」というタイプ以外に様々な方式があることを知っておく必要があります。受験先の試験案内を見て、どのような試験かわからない時は、概ね以下のような試験タイプのいずれかに該当すると考えられますので、ぜひご参考になさってください。
多様化する公務員試験
市役所試験や社会人経験者試験の試験案内を見ると、「特別な公務員試験対策は不要です」というコメントを目にすることはないでしょうか。
また、筆記試験の内容も「教養試験」と書かれていなかったり、出題科目や試験時間が一般的なものと違うような場合、それがどんなタイプの試験なのか、よくわからず困ってしまうこともあると思います。
新教養試験~新しくなった教養試験
まず、教養試験についてお話をしてこうと思います。
以前、「試験内容をまるっと解説」という記事の中で、教養試験の内容についてご紹介をしましたが、一般的な教養試験は下の図に書かれている分野・科目から出題されています。
[一般的な教養試験]

教養試験は「120分40題」で解答することが多く、1題あたりの解答時間は約3分となっています。
これに対して、今からお話をする様々なタイプの試験はどう違っているのかを比較していただければ、どんな特徴の試験であるかがイメージしやすくなります。
「新教養試験」とは、地方自治体の試験問題を作成している財団法人「日本人事試験研究センター」が、新しく作ったタイプの教養試験です。
試験は「Standard(標準タイプ)」、「Logical(知能重視タイプ)」、という2つのタイプがあり、それぞれに以下のような特徴があります。
◆Standard(標準タイプ)
解答時間:120分 問題数:40題 形式:5肢択一式
従来の教養試験と共通性の高い試験(知能分野20題、知識分野20題)
★「古文」「哲学・文芸・芸術等」「国語(漢字の読み、ことわざ等)」の出題はありません。
★これまでと比べて時事を重視し、社会的に幅広い分野の題材(ICT、環境問題、社会保障など)を出題します。
※レベルは「StandardⅠ(大卒程度)」と「StandardⅡ(高卒~大卒程度)」に分かれます。
◆Logical(知能重視型タイプ)
解答時間:120分 問題数:40題 形式:5肢択一式
知識より論理的思考等の知能を重視する試験(知能分野27題、知識分野13題)
★知識分野では、自然科学は出題されません。
★「古文」「哲学・文芸・芸術等」「国語(漢字の読み、ことわざ等)」の出題はありません。
★これまでと比べて時事を重視し、社会的に幅広い分野の題材(ICT、環境問題、社会保障など)を出題します。
職務基礎力試験BEST
職務基礎力試験BESTも、教養試験と同じ「日本人事試験研究センター」が提供している試験です。
「職務能力試験(BEST-A)」と「職務適応性検査(BEST-P)」で構成される新しいタイプの試験です。
・職務能力試験
60題・1時間:「論理的に思考する力、文章を正確に理解する力、統計等の資料を分析する力、国内外の社会情勢への理解等を確認するための基礎的な出題」という内容です。SPIに近いレベルの知能問題と、時事問題や公民が含まれるとお考え下さい。
概要、例題は日本人事試験研究センターのHPに掲載されています。
・職務適応性検査
社会人の職務、職場への適応性(職務への対応、人間関係等)の観点から受験者の性格傾向を把握し、面接や採用に当たっての必要な情報を提供
●質問項目数:150項目
●形式:4件法(「当てはまる」、「やや当てはまる」、「あまり当てはまらない」、「当てはまらない」の四つのうちから一つを選ぶ形式)
●回答時間:20分
同じ自治体でも試験区分によって試験方式が異なることもあります。
大卒区分なのか、社会人経験者区分なのか、試験案内をよく見ておくことも大切です!
民間タイプの試験も導入例が増加中!
SCOAを導入している自治体は、試験内容をSCOAと表記しないことが多いため、「120問60分」で英語が出題されている場合は、SCOAである可能性が高いと推測できます。
独自の試験方式について
SPIやSCOA以外にも、独自性のある教養試験を行なう自治体があります。
有名な例としては、横浜市の大卒程度行政区分のように、人文科学・自然科学を行わないタイプの試験です。
もし、受験する自治体の試験案内を見たときに、試験内容が「教養試験」となっていても、出題科目に人文科学や自然科学が記載されていない場合は、独自タイプの試験である可能性が高いとお考え下さい。
タイプ別の試験対策について
試験対策においては、受験先の試験方式に合わせることが必要です。
教養試験であれば、Standard(標準タイプ)は一般的な対策で十分ですし、Logical(知能重視タイプ)の場合は自然科学は学習する必要がありません。
BEST、SPI、SCOAの場合は、教養試験と比べて出題される科目が少なかったり、問題の難易度が低いので、教養試験の対策を立てなくても対応できると言われます。
ただ、そうした試験でも独学で対策を立てようとすると苦手な方がいたり、論作文や面接の対策まで含めると不安に感じる方もいると思いますので、そうした時はスクールを使うことも一つの選択肢ではないでしょうか。
例えば、クレアールではSPI対策講座を開講しているので、SPI対策と論文・面接の対策を立てられるコースもご用意しています。
対策講座については、個別にご案内しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
ここ数年で、全国的に試験の方式が多様化していますが、これには理由があります。
一つは、筆記試験よりも人物試験を重視したいという考えがあるため、教養試験・専門試験といった従来タイプの試験ではなく、負担の少ない試験を行なったうえで面接試験に重きを置くというものです。
そして、もう一つは「受験者を増やしたい」という理由によるものです。
少子化の影響で、労働人口の減少が深刻な問題となっていますが、公務員も民間も人材の確保が喫緊の課題とされるため、特に採用スケジュールが民間より遅い公務員試験では「受けやすい試験」をしないと受験者が減ってしまう恐れがあります。
もちろん、筆記試験の負担が少ない試験は一見受けやすく見えますが、そういった受験先は人が集まりやすいため、結果的に高倍率となってしまうこともあるので、できるだけ前年の実施状況などで倍率を知っておくことも大切です。
まずは、今回の記事をお読みいただき、公務員試験の中で行われる様々な試験への理解を深めていただければと思います。




この記事を書いた人
クレアール公務員相談室タニオカ
これまで、公務員試験の受験・学習を考える3,000人以上の相談に答えた実績を持つアドバイザー。「公務員 転職ハンドブック」「ココからスタート!公務員試験入門ハンドブック」などを執筆。