試験委員の講評から今後の1級対策を考える~商会編~

公認会計士コラム

N.K 講師(簿記講座)

簿記講座質問担当。前職で取得が課されていた某国家試験の勉強時に「問題の難易度の見極め」の重要性に気が付く。「教科書的な解き方ではなく、現実的にどう解くか」がモットー。サッカー、旅行、ネコが好き。

皆様は統一試験終了後、商工会議所から試験を作問された先生が出題の意図・講評を発表していることをご存知でしょうか。

今回は過去の講評から、今後の試験対策に役立ちそうなものをピックアップし、解説いたします。

●商業簿記・会計学の講評

162回試験後の会計学講評の抜粋です。

「収益認識に関する会計は、実務的にも重要であり、企業の損益計算書のトップラインを決める重要なものです。今後も商業簿記・会計学において頻繁に出題していきますので、学習を深めておいてください。」

https://www.kentei.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2023/01/162-1-kouhyou-3.pdf

収益認識が試験範囲に含められて以降、収益認識に関する問題は毎回出題されるようになりました。
作問を担当された先生自身が今後の継続的な出題を明言する以上、受験生の対策も必須です。
では具体的な今後の対策を考えていきましょう。

①具体的に何をすればいいの?

【計算】暗記偏重は極めて危険

収益認識に関連する問題を眺めると、現場対応型の割合が多いです。過去問やテキスト・問題集をただ回転させるだけでは本番で解くことはできません。

収益認識のメインテーマは「売上の額を精緻に算定すること」です。詳細はテキスト・講義に譲りますが、各例題等を通して、売上の精緻化をどのように図っているかを意識してみてください。

【理論】基本的な用語を押さえよう

1級の理論はごく基本的な事項しか問われません。
稀に難問もありますが、他の受講生もできないので自信を持ってスルーしましょう(最悪点数すら振られません)。

例えば「契約資産と売掛金の違い」「履行義務の定義」など、聞いたことがあるけど思い出せない箇所があれば最優先で押さえましょう。

【実践編】商業簿記の収益認識は一度後回しにする習慣をつける

収益認識が試験範囲に含められて以降、商業簿記では売上総利益より上の項目を求める難易度が跳ね上がりました。

事実、前回の試験でも売上高・売上原価の算定はかなり難易度が高かったです。商業簿記の平均点の低さ(東京商工会議所の平均点は10点でした)を考えても、最低限の目標は「足切り回避」です。

まずは試験開始後、全体を眺めてみましょう。冒頭から解く行為は絶対NGです。
前回の試験では、売上総利益より下の項目に解きやすい問題が集中していました。
これらの項目を優先的に解き、売上・売上原価の算出は「時間に余裕があれば解く」くらいの気持ちで取り組みましょう。

②過去の難易度チェック

第162回以降に収益認識関連の論点の難易度をご紹介します。過去問を解く際の参考にしてください。

●162回
商業簿記:難易度高。制限時間から考えて最後に解く。
会計学:理論・計算ともに簡単。まずはここから押さえる。

●164回
商業簿記:商品販売の売上高(売上原価)、返品資産の算出は簡単。
ソフトウェア関連の売上高・売上原価の算出はやや難しい。

●165回
商業簿記:契約負債だけなら求められる。
資料1〜3を全て捨てたとしても他が取れていれば合格圏内。

●167回
商業簿記:典型的なカスタマーロイヤリティの配分問題。
売上高・契約負債ともに得点可能。

●168回
商業簿記:読取が難しい。思い切って捨てても足切り回避可能。
会計学:理論で出題。やや細かい論点なので落としても問題なし

●次回試験の個人的な見解

日商簿記1級の平均的な合格率は10%ですが、前回は15%と過去の平均を大きく上回りました。
会計学・工業簿記・原価計算に満点、もしくはそれに近い得点者が多数おり、配点調整を行えなかったことが理由と推測します。

この結果から、次回試験の難易度は上がると読んでいます(クレアールの公式見解ではなくあくまでも個人の見解です)。

とはいえ、特段の対策を立てる必要はありません。
簿記1級は相対評価の試験です。仮に他の受験生が解けない問題を解けたとしても、最悪点数すら振られない可能性があります。

日頃から難問を解かない・回避することを意識しましょう。
次回は工業簿記編です。ぜひ併せてご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました