公認会計士試験合格者 森 大地
自分のための努力
資格試験へのチャレンジは、何かを成し遂げたい、こんな人生を歩みたいと言った自己実現の手段であることがほとんどです。公認会計士を志した私もその一人で、就活の挫折を機に新たなキャリアプランとしてその道を目指しました。合格したら年収〇〇万円もらいたい、お気に入りの車を手に入れたい、海外でバリバリ働きたい、転職してキャリアのステップをしたいなど、受験生時代はいろんな妄想を膨らましていました。合格後どうなったかというと、目標としていた年収はもらえているし、車ではないですがお気に入りのバイクを手に入れたり、海外出向の話も現実な目標になったりと、概ね実現できていると思います。
仕事の魅力は、仕事の成果
会計士として働き始めて丸4年が経った今、私が考える会計士の魅力はこれらとは少し異なります。仕事の結果得られるお金やモノ、成長機会などはもちろん嬉しいですが、副産物でしかありません。本当に嬉しい瞬間とは、昨年、初めての主査業務で迷惑をたくさんかけてしまったチームメンバーから少しずつ信頼を勝ち取り、関与2年目の今年、みんなで協力し合って監査を完了できた時であり、クライアントと粘り強く交渉して重要な財務諸表上の誤りを認めてもらい、適切に財務諸表を修正してもらった時であり、私が一人で始めた法人内の会計士受験生職員向けメルマガで、日を重ねるごとにチームの結束が強くなり、メンバーだけでも素晴らしいコンテンツを作れるようになった時です。
自分のため×他人のため=自分を活かす
〇〇を得るために頑張る、〇〇を成し遂げるために頑張る、というのは、自分のための努力です。自分が原動力であり、成果を自分が得るために前進するエネルギーです。一方、〇〇を助けるために頑張る、〇〇へ恩返しするために頑張る、というのは、他人のための努力です。責任感が原動力であり、成果を他人へ与えるために前進するエネルギーです。
努力の形に正解はありませんが、私自身は、後者のほうがエネルギーが出しやすいという実感があります。どうしても自分のために頑張ろうとすると、こんなに頑張ったのにこれだけしか成果がないと嘆いたり、誰にも迷惑をかけるわけじゃないし今日ぐらいいいかと手を抜いたりしがちだからです。とはいえ、いきなり100%他人のために努力しようというのは難しいでしょう。
私がおすすめしたいのは、自分を活かす努力です。自分の能力を活かして人の役に立つ、人の役に立つために自分の能力を高める、ということです。自分の能力が高まれば、仕事や収入が増え、自分の幸福度は高まるでしょう。でも、あまりに自分が大きすぎると、他者との比較や怠惰などの悩みに苦しむことになります。努力のベクトルを他者に向けると、能力そのものは自分に蓄積され、無用な悩みからは開放されます。私で言えば、自分の知識を高めるために監査するのではなく、クライアントや投資家が満足する監査品質を提供することを目的に、その過程として自分の能力を高めるということです。同じ「知識を高める」という努力でも、前者はどうしても自分の意思力に依存してしまうのに対し、後者は頑張るほど仲間が増えていき、より努力をしやすくなる環境になります。こう書くと非常に打算的に聞こえますが、それでいいのです。まさに、情けは人の為ならず、ですね。自分を活かす努力で、努力を継続しやすい環境を整えましょう。