前回のおさらいと今回のテーマ
前回は有価証券について、会計制度上の歴史について述べました。従来(20世紀)は原価評価を原則としていたところ、時価評価が導入され今日まで続いています。
この時価評価が導入されたタイミングで、有価証券を保有目的別に4分類することが新たに要求されました。
2級を学習されている方の悩みの種であろう、この分類を解説していきます。
有価証券の各分類
①売買目的有価証券
短期間の価格変動を利用して、売却益を得ることを目的とした有価証券です。デイトレード等で売買される株式・債権が該当します。
前回に説明した原則通り、期末には時価評価が行われ、取得原価との差額は評価損益として処理されます。
②満期保有目的債権
国債・社債などの債権が該当します。満期まで保有し、債権の利息を得ることを目的としています。
これらの債権は原則として償却原価法によって評価されます。時価評価は行われないことに注意が必要です。
この理由としては、満期まで保有する以上、時価の変動で利益を得ることを目的とされていないことが挙げられます。
③関連会社株式
子会社や関係会社に該当する株式を保有する場合、一括して関連会社株式として表示します。
※子会社・関係会社の違いは2級対策上、無視して大丈夫です。
これらの株式は投資先を支配・影響を与えることを目的に保有するため、時価の変動は重視されません。
そのため、原則として取得原価で評価されます。「とは言っても関連会社の業績は無視していいの?」と考えた方は鋭いです。詳細は連結会計で学習します。
④その他有価証券
上記①〜③のいずれの目的にも該当しない有価証券が該当します。
具体的には
・余剰資金の運用として保有するが、頻繁な売買を行わないもの(①は短期間で売買されます)
・長期保有を前提として、支配・影響を行使する目的ではないもの(③は支配・影響の行使を目的としています)
などが該当します。
これらは時価評価が行われます。ただし、①のように評価差額を当期の損益とすることは望ましくありません。短期売買を目的としていないことが理由の一つです。
そのため、純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として計上します。
まとめ
上記①〜④をまとめると以下となります。
B/S表示 | 評価差額の処理 | |
売買目的有価証券 | 時価 | P/L:損益処理 |
満期保有目的債権 | 償却原価 | ー |
関連会社株式 | 取得原価 | ー |
その他有価証券 | 時価 | B/S:その他有価証券評価差額金として処理 |
次回は実践編となります。覚えた知識を「現実的にどう活用するか?」をご案内します。