先日より168回1級本試験の合格発表が始まりました。合格された方、おめでとうございます。
簿記一級試験は決して簡単な試験ではありません。膨大な時間を費やして得た勝利です。とても素晴らしいことです。
一方で、惜しくも届かなかった方も多くいらっしゃいます。特に60点台の方は悔しい思いをされていると推察します。
今回はデータに基づいて、168回試験では何が勝負を分けたのかを検証していきます。
次回試験にて再チャレンジをお考えの方へ試験対策の一助となれば幸いです。
合否の境目はどこにある?
それでは早速第168回試験の具体的な分析を見ていきましょう。
Xで得点を投稿された方のうち、70点台と60点台の方に絞ってそれぞれ平均点をまとめてみました。その結果が以下となります。
商業簿記 | 会計学 | 工業簿記 | 原価計算 | |
---|---|---|---|---|
70点台平均点 | 15.5 | 19.9 | 17.8 | 21.1 |
60点台平均点 | 12.5 | 19.3 | 12.1 | 20.8 |
会計学・原価計算では得点差にほとんど変わりありません。
一方で商業簿記・工業簿記では明確に差があります。
この結果からこの差を詰めることが次回に向けた明確な対策といえます。
今回は特に工業簿記に焦点を当てて考えてみましょう。
工業簿記の合否の境目
第162回以降、工・原ともに問題の難易度が大幅に低下しました。満点も狙える内容の出題が続いています。
今回の工業簿記も問題自体は平易でした。ただし、集計する項目が多くミスが生じやすい、かつ一つのミスが連鎖して他の問題にも影響を与えてしまうことが特徴的でした。
合否の差はこのミスの連鎖にあると推測します。
ではそのミスを無くすためにはどうすればよいかを考えてみましょう。
ミスの減らし方Ⅰ
ここからは実際の問題と照らし合わせて確認してみましょう。
ミスを減らすために必要なことの一つは「全体を眺めて解く順番を決める」ことです。
問題を頭から順番に解くことは厳禁です。
今回の工業簿記で簡単に求められる問題は
問3:操業度差異
問4:製品X・Yの製造原価
でした。
上記は最優先で解く問題です。
問2:前月繰越・次月繰越・諸口・仕掛品は、集計箇所が少ないため、賃金勘定の中では優先して埋めていきたい箇所です。
逆に無理して解かなくてもいい箇所は
問3:予算差異です。
問3は全ての間接費を集計しないと求められません。
解答順序を頭にイメージできるようになると、闇雲に解くことがなくなり、余計な手数をかけなくなることでミスを減らせます。総合問題を解く際に意識してみましょう。
ミスの減らし方Ⅱ
ミスを減らすために必要なこと。もう一つは「解き直し」をすることです。
ここ数回の工原は問題量が少ないため、試験終了時刻よりもかなり前に退出する方が多いようです。
途中退出は各自の判断ですが、解答時間を放棄した結果、ミスが原因で合格ボーダーを下回ったら泣くに泣けません。
ミスを誘発しやすい、かつミスが勝負の境目となる問題が出題される以上、解き直しは必須です。時間が許す限り解き直し(見直しではありません)を行いましょう。
特に今回は久しぶりに仕訳が出題されました。貸借を逆にしていないか等の確認も勘定連絡図を書いて確認する作業も大事です。
まとめ
データが示す通り、60点台と70点台の各受験者の差はミスや解答順序に起因すると推測できます。
次回試験の対策として、「努力が足りなかった」と考えてやみくもに問題を解きまくるのではなく、効率的に点数を稼ぐ方法を考えてみましょう。
その解き方についても今後解説していきたいと思います。