日商簿記・税理士・公認会計士 取得するならどの資格?

目次

はじめに

 先日、令和5年公認会計士試験第2回短答式試験の結果が出ました。ボーダーは69%、合格率8.8%という結果でした。私が受験した令和元年の願書提出者は10,000人を下回っていましたが、この5年間で15,000人を超えるまでに増加しています。

 コロナ禍でおうち時間が増えたことにより、資格ブームが到来し、公認会計士の資格もその影響を受けているように思います。また、在宅ワークやオンラインでのコミュニケーションが発達し、ビジネスの在り方そのものが変化したことにより、勤め先の将来に不安を覚え、手に職を求めて、専門資格の取得を目指そうと考える人が増えているのではないでしょうか。

 この記事を読まれている方の中には、最近の資格ブームを受けて、何か資格を取得したいと考えているものの、何を選べば良いのか分からないという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、「公認会計士」に加え、同じく会計系の「日商簿記」「税理士」といった3つの資格を取り上げて、比較してみたいと思います。

日商簿記検定

 3つの資格の中で基礎にあたる資格です。1級〜3級までのレベルに分かれており、会計初学者がまず勉強すべきは日商簿記3級です。簿記検定は、市販教材や無料の学習コンテンツも充実しており、最も手軽に取得を目指すことができます。3級の場合、50〜100時間程度の勉強時間で合格を目指すことができるため、早い人は、1ヶ月足らずで取得してしまいます。

 このように、敷居の少し低い資格ではありますが、会計学が義務教育に組み込まれていない日本においては、基礎レベルでも習得しておくと全く会計知識の無い方と大きく差別化を図ることができます。個人的には、簿記3級レベルの知識は、ビジネスの基礎として全てのビジネスパーソンに習得していただきたいものだと感じています。

 簿記2級では、企業会計を前提とした、より実践的な会計知識を習得することができます。製造業に関連する「工業簿記」や連結会計の基本まで幅広く網羅されており、取得することで一般企業の経理業務への道が開けるため、キャリアの選択肢を広げたいという方におすすめです。必要な勉強時間も200〜400時間程度で、短期集中で取得できるという良さがあります。ちなみに、日商簿記2級・3級は、2020年からCBT試験が導入され、指定された試験センターで検定試験を受験することが可能になり、以前よりも身近な資格となりました。

 日商簿記1級は難易度が一気に上がり、600時間以上の勉強が必要になりますが、取得することで大規模企業の経営分析などの高度な会計業務に携わるチャンスを得ることができます。合格率は10%前後と非常に低く、公認会計士試験の「財務会計論」と同レベルの難易度であるため、1級まで勉強するのであれば、公認会計士試験にもチャレンジすることをおすすめします。なお、日商簿記1級合格は、税理士試験における税法科目の受験資格の1つとされています。

税理士

 公認会計士と比較されることの多い税理士資格ですが、実は両者の試験制度は大きく異なります。税理士試験は、科目ごとに出願して受験するという制度のため、数年かけて、会計2科目、税法3科目を揃えるのが一般的です。おおよそ3~5年の勉強期間が必要になり、受験生の中には10年以上勉強を続けている方も居るようです。

 毎年1科目ずつ集中して取り組むことができるため、限られた勉強時間の中でマイペースに勉強を進めたいという社会人に向いている資格であると言えます。一方で、長期戦になるため、受験期間中のモチベーション維持が課題になると考えられます。税理士事務所で税務補助者として勤務しながら勉強を続けるというケースもありますが、受験専念生に比べると、圧倒的に勉強時間が少なくなるため、自己管理ができないと、いつまでも合格できないという可能性もあります。どのようなスタイルで勉強を進めるのが良いか、自分自身の傾向や経済状況を鑑みて、じっくりと検討してみましょう。

 税理士試験の場合、短期合格を狙うには、予備校を利用した方が良く、その場合、最低50万円程度の受講料が必要になります。また、全科目合格に必要な勉強時間は、3,000時間以上と言われています。税理士資格の場合、例えば「簿記論」「財務諸表論」の2科目合格の段階でも会計事務所を中心に多くの求人があるため、とにかく税務業界に転職したいという場合に、最低限の科目のみ揃えるという戦略を採ることもできます。

公認会計士

 資本市場の番人として、主に、企業の財務諸表を監査する職業であり、国家三大難関資格の一つとも言われる資格です。大きな特徴は、簿記と財務諸表論からなる財務会計論の他に、短答式試験では管理会計論、監査論、企業法の3科目が、論文式試験では、租税法、選択科目(経営学、経済学、統計学、民法から1科目を選択)の2科目が追加され、幅広い分野に関する知識が問われる点です。

 試験制度的に全科目を一括で受験することになるため、税理士試験よりも比較的短期間で合格を目指すことが可能ですが、その分、短期間で密度の濃い勉強が必要になります。また、試験合格後に資格を取得するためには、一定の実務経験及び実務補習を修了する必要があり、それには通常3年程度の期間が必要となります。従って、勉強開始から資格取得までには最低6年程度かかることを覚悟しておきましょう(一部、短縮要件あり)。

 もっとも資格取得前であっても、公認会計士試験に合格してしまえば、監査法人や会計事務所に就職することが可能です。合格率10%程度の難関資格を突破したというだけで、就職・転職活動の大きなアドバンテージとなる点もこの資格の良いところです。

 論文式試験の合格までに必要な勉強時間は最低3,000時間程度であり、私自身は3,700時間、期間にして約2年半かかりました(簿記検定の勉強期間も含む)。また、市販教材が充実しておらず、予備校の利用が必須となり、最低40万円程度の受講料が必要となるという点にも留意が必要です。なお、公認会計士の資格を取得すると、税理士として登録することもできるため、資格取得後のキャリアの幅が広いというメリットがあります。

おわりに

 会計に関連する3つの資格を、勉強時間、費用、資格取得後のキャリア、といった観点から比較してみました。いずれの資格も一長一短であり、時間的、費用面の制約や目指したいキャリアなどを総合的に勘案した結果、自分の置かれた状況に最もマッチする資格を選択するのが良いでしょう。

 特に、税理士や公認会計士の資格は取得までに時間とコストがかかるため、取得後の活用方法を踏まえてコスパも意識しながら検討するのが良いと思いますが、いずれの資格も必ずキャリアにプラスに働くもので、おすすめの資格です!ぜひ積極的にチャレンジしてみてくださいね!

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