前回は公認会計士の魅力と可能性の前編ということで、監査法人で働くことについて書きました。
今回は後編ということで、監査法人以外のキャリアについて、お伝えできればと思います。
私の監査法人時代の同期も少なくない人数が既に監査法人を退所し、監査法人以外で働いています。そうした、私の友人から聞いた話も交えつつお伝えできればと思います。
キャリア① 事業会社で働く
監査法人を卒業して、事業会社の財務経理、財務企画、内部監査室、経営企画等、企業によって呼び方は変わったりしますが、財務・管理系のポジションや経営系のポジションに転職する方は非常に多いです。
転職先の企業は上場企業等の大企業やベンチャー企業等、会社の規模や業種もさまざまです。会社によって仕事の内容は異なるかと思いますが、財務・経理系のポジションであれば、財務諸表や有価証券報告書の作成をしたり、内部統制の整備・構築、監査法人対応等をすることが多いかと思います。
公認会計士として監査法人時代の経験が活かせる場面が多いポジションであるため、公認会計士として監査法人で働いてたバックグラウンドを持っていることが非常に重宝されるかと思います。
また、内部監査のポジションも監査法人時代の経験がダイレクトに活かせる業務だと思います。監査が財務報告に関わるプロセスについて監査をするのに対し、事業会社が自ら行う内部監査はビジネスプロセスについても監査を行いますので、監査法人の監査とはまた違った経験もできるかと思います。
経営系のポジションであれば、事業計画の作成や資金調達等のファイナンスに関わることが多いかと思います。私の同期でも上場企業の経営企画のポジションでM&Aの立案や推進等をしている人もいます。
また、ベンチャー企業にCFOとして転職している同期もいます。上場準備のため監査法人や主幹事証券の対応、内部統制の構築、組織や規定の整備等、管理系の仕事全般を任せられているようです。監査法人での仕事よりもより幅広く色々な知識が求められます。社内にも前例やナレッジがないことが多いため、自分で考えなければならない業務も非常に多いかと思います。色々な面で大変ではあるかと思いますが、非常にやりがいのある仕事でもあるかと思います。
キャリア② 別の会計ファームで働く
監査法人のグループの税理士法人やFASへ異動・転職したり、他のコンサルティングファームに転職する同期も結構な数がいます。私自身もそうです。
私のいた監査法人では、監査法人から同じグループへのFASや税理士法人、コンサルへの異動は内部で異動するルートがあり、完全な異動でなく2年程の期限付きで出向するといった形もありました。
コンサルティングファームで公認会計士としてのバックグランドを生かして働く場合、IPOコンサルティングや内部統制構築支援、デューディリジェンスやバリュエーション等のM&Aに関するアドバイザリーの業務をしている方が多いかと思います。専門性が異なるのでコンサルティングファーム内でそれぞれ対応する部署が分かれていることもありますし、規模の小さいコンサルティングファームで一人でなんでもやります!みたいな働き方をしている方もいます。
私自身は監査も非常にやりがいのある仕事ではあると思いますが、コンサルティングやアドバイザリーもクライアントの抱える課題解決に直接貢献している感覚を持てるので、監査とはまた違ったやりがいを感じることができると思います。
キャリア③ プライベートエクイティファンドで働く
プライベートエクイティファンド(PEファンド)で働いている方もいます。
PEファンドとは投資家から集めたお金を運用するために投資先を見つけてきたり、投資先との交渉を行ったり、買収後の投資先企業の体制を整えたり、投資先の業績をモニタリングしたり、投資先のエグジット(投資先を売却したり、上場させたりすることです)を検討・実行したりといった、非常に幅の広い業務を行っています。
少数精鋭で働いているので、非常にハードな仕事だとは思いますが、収入が高いイメージです。また、公認会計士だけでなく金融機関やコンサル、外資系企業の出身者など所謂エリートと呼ばれるような人たちが多く働いている印象です。
キャリア④ 独立する
監査法人からいきなり独立したという人もいますが、どちらかというと監査法人から税理士法人やFAS等を経由して独立する人が多い印象です。
監査法人の経験だけでは、独立した時に活かせるスキルに少し不安を覚える方がほとんどだと思いますので、独立後に活かせるスキルやナレッジを身につけるために、税務やM&A、事業再生等の経験を積む方が多いと思います。
最初から独立するつもりであれば監査法人に勤める必要もあまりないのではないかとお感じになられる方もいるかと思いますが、監査法人の経験が全く無駄かというとそうではないと思います。少しでも公認会計士という仕事を理解されている方からしてみると、公認会計士=監査を経験しているという、認識を持っている方も多いので、監査法人でのバックグラウンドを期待される場面はよくあります。ですので、監査の実務を知っていることがアドバンテージであることは間違いありません。
独立後の業務内容も人によって違いますが、税理士登録を行い税務をメインに顧問先に持つという方もいますし、公認会計士の資格だけでM&Aのデューディリジェンスやバリュエーション等をスポットで請けて、空いた時間を監査法人や元いた職場の非常勤業務を請けるといった働き方をしている人もいます。フリーの公認会計士に業務を紹介してくれる会社等もいくつかあるので、知人の公認会計士に言わせると独立のハードルはそこまで高くないようです。
また、それなりの業務経験やバックグランドが求められはしますが、社外取締役や監査役のポジションも公認会計士の需要があります。 特に日本では女性の取締役の数が圧倒的に少ない状況であり、ガバナンスの健全性の観点から女性の取締役を増やしていくことが日本の上場企業の課題となっておりますので、女性の方は独立した場合のプランとしてこういったポジションも視野に入れておくと独立という選択肢の可能性が増すのではないかと思います。
まとめ
監査法人以外の働き方、特に監査法人を卒業した後のキャリアプランをいくつかご紹介致しました。
ご紹介したように公認会計士のキャリアプランの選択肢は非常に多く、また、どれもやりがいを感じられる仕事でもあると思います。その中で、自分の仕事観やライフステージ等に合わせて、働き方を変えられるというのも大きな魅力であると思います。
合格を目指して引き続き試験勉強を頑張ってください!