「会計士としてコンサルティング会社で働く!」Vol.3.実際の業務での資格活用例①(戦略・総合)

目次

はじめに

 前回は、公認会計士資格と親和性が高いであろうコンサルティング会社を具体的にいくつかご紹介いたしました。「戦略コンサルティングファーム」や「財務アドバイザリー系コンサルティングファーム」等、コンサルティング会社での活躍の幅は広いことがお分かりいただけたのではないでしょうか。今回は、日々の業務レベルでどのように公認会計士資格を活かすことができるか、可能な限り具体的にご紹介したいと思います。

「戦略コンサルティングファーム」の場合

 前回ご紹介した通り、「戦略コンサルティングファーム」は企業の社長等のトップマネジィメント層が抱える問題を解決することが主な役割といえます。そのために、たとえば①ビジネスデューディリジェンスや会社の成長戦略を踏まえた②中期経営計画の策定、③ハンズオン型コンサルティングサービス等を提供することがあります。

 ①ビジネスデューディリジェンスとは、事業の将来性やシナジー効果を分析するプロセスであり、事業計画の策定時やM&Aの検討・実行時に実施されます。
具体的な業務のイメージとしては、1~2か月の比較的短期間において有識者インタビュー等の各種調査・分析を実施することで、会社の事業内容や市場環境等を踏まえた今後の事業等の将来性を報告する業務となります。この点、会計士資格を有していれば、財務分析能力、管理会計の理解能力、経営学で学習した経営理論の知識等を活かして活躍することが可能と考えられます。また、もし公認会計士試験の合格後に監査法人等で主査(インチャージ)を務めた方等で特定の業界・ビジネスに対する知見があるのであれば、それらを活かしてより深い分析をし、質の高いアウトプットを出すことも可能なのではないでしょうか。

 ②中期経営計画の策定とは、前述のビジネスデューディリジェンス等の結果を踏まえ、企業が今後3~5年の期間をかけて達成する将来の姿を策定することです。
中期経営計画では企業の中長期的な経営ビジョンを達成するために、定量的のみならず定性的な目標を定め、その達成に向けた各種施策・マイルストーンを計画することとなります。この点、もし会計士資格を有しているのであれば、財務会計論や管理会計論で学習した知識等を活かし、主に数値面の精緻化・ロジックの妥当性の検証等を強みとして活躍することも可能だと考えられます。また、もし監査法人等で開示書類の作成・チェックに関する業務の経験がある方であれば、企業外部の株主等のステークホルダーの動向・視点に対する理解があるため、より企業外部の理解が得られやすい中期経営計画を作成することにもつながるかもしれません。

 ③ハンズオン型コンサルティングサービスとは、戦略の策定だけでなくその実行支援も含めたハンズオン型のサービスのことです。
コンサルタント自身がクライアントの会社に毎日足を運び互いに膝を突き合わせながら喧々諤々の議論を重ね、クライアントの目標達成に向けた各種取組に注力するような業務を想定します。このような業務の場合、コンサルタントとクライアントとの距離はかなり近いため、彼らの信頼を得ることはスムーズなサービス提供につながることが多いと言えます。たとえばクライアントから会計領域の質問があった際に、会計士資格を活かしその質問に素早く回答することができれば、彼らの信頼の獲得ができることもあるかもしれません。

 ただし、多くの「戦略コンサルティングファーム」では、専門知識以前に高い論理的思考力やクライアントを成功に導く高いコミュニケーション能力が求められるため、会計的な知見をただ有しているのみでは活躍の幅が限られるかもしれません。会計士資格はあくまで他の優秀なコンサルタント達との差別化要素の一つとしかなりえないため、「戦略コンサルティングファーム」では一般的な会計士に求められるスキルとは異なるスキルが要求される点に注意したほうが良いと考えられます。

「総合コンサルティングファーム」の場合

 「総合コンサルティングファーム」では、「戦略コンサルティングファーム」が取り扱うような戦略立案等の抽象度の高い課題のみならず、戦略の実行のためのオペレーション改善・プロジェクトマネジメント等を含む幅広い分野のサービスを提供すると言われています。
したがって、会計士業務を活かすことができる場面は多々あるかと思いますが、ここでは①オペレーション改善業務(業務改善業務)や②人事・組織変革業務を例に挙げ、ご紹介したいと思います。

 ①オペレーション改善業務(業務改善業務)では、主に企業の営業活動における各種業務オペレーション(販売プロセス・購買プロセス等)における現状の課題を洗い出し整理したうえで、それらの高度化・効率化に向けた戦略策定やビジネスモデル・組織・機能配置の設計等を提供することがあります。この点、会計士として販売プロセス・購買プロセスの内部統制評価の経験があれば、あるべき内部統制のしくみ作りの経験や他社事例の知見等を強みとして、クライアントに対してより付加価値のあるサービスを提供することが可能だと考えられます。

 ②人事・組織変革業務では、人事機能の高度化・効率化や組織風土改革のため、関連するITサービスや各種社内制度の整備・運用を支援することがあるようです。そのような業務の中で、たとえば退職給付制度設計に携わるような場合には、公認会計士試験で学んだ退職給付会計の知識を活かすことも可能なのではないでしょうか。また、監査法人で数多くの企業の人事制度に触れたことのある会計士であれば、他社事例等の知見をもとにクライアントに対してアドバイスを提供することも可能と考えられます。

おわりに

 今回は、コンサルティング会社において日々の業務レベルで具体的にどのように公認会計士資格を活かすことができるか、「戦略コンサルティングファーム」と「総合コンサルティングファーム」を例に、いくつかの具体例をご紹介しました。次回はその他のコンサルティングファームにおける具体例をご紹介したいと思います。

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