労災保険法 7 支給制限等 [労災法12条の2の2~12条の6]
目次
問題
問1業務遂行中の災害であっても、労働者が過失により自らの死亡を生じさせた場合は、その過失が重大なものではないとしても、政府は保険給付の全部又は一部を行わないことができる。(平成26年)
労災法12条の2の2第2項
政府が保険給付の全部又は一部を行わないことができるのは、故意の犯罪行為もしくは「重大な過失」によるものである。
問2休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付は、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による傷病の療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に支給されるものであるから、労働契約の期間満了等により労働関係が消滅した後においても、当該傷病による療養のため労働することができないために賃金を受けない状態にある限り、支給される。(平成16年改)
労災法12条の5第1項
保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。
問3「故意」とは、自己の行為により一定の結果が生ずることを認識し、かつ、その結果の発生を認容していることをいう。したがって、例えば、重油を船から送油パイプを通じてタンクローリー車に送り込む陸揚げ作業中、同僚労働者がタンクの重油内に転落したのを見て、直ちに救出するためタンク内に降りようとしたところ、足を滑らしてタンクの重油内に転落し、死亡したという場合には、たしかに業務と密接な関連があるとはいえ、そうした危険の発生について認識があり、かつ、それを認容したうえでの救出行為によるものとみることができるので、その死亡は、「故意」によるものといわざるを得ない。(平成13年)
労災法12条の2の2第1項、昭和34年基収9335号、昭和40年基発901号
設問の場合は、故意によるものとはされない。
問4保険給付として支給を受ける金品を標準として、租税その他の公課が課されることはない。(平成16年)
労災法12条の6
労災保険法の保険給付については、すべて租税その他の公課が課されることはない。
ポイント!!
● 支給制限
制限理由 | 制限内容 |
・故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたとき | 保険給付を行わない |
・故意の犯罪行為又は重大な過失によるものである場合・正当な理由がなくて療養に関する指示に従わない場合 | 保険給付の全部又は一部を行わないことができる |
・正当な理由なく、所定の事項について届出をしない場合・所定の報告、出頭、受診等についての行政庁の命令に従わないとき | 保険給付の支払を一時差し止めることができる |
● 受給権の保護
① 保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。② 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構に担保に供することはできる。
● 公課の禁止
租税その他の公課は、保険給付として受けた金品を標準として課することはできない。
ポイント+α
○ 「故意」とは、一般に、自分の行為が一定の結果を生ずべきことを認識し、かつ、この結果を生ずることを認容することをいう。ただし、被災労働者が結果の発生を解っていても業務との因果関係が認められる事故については、故意として取り扱われない。○ 「故意の犯罪行為又は重大な過失」とは、事故発生の直接の原因となった行為が、法令(労働基準法、道路交通法等)上の危害防止に関する規定で罰則の付されているものに違反すると認められる場合である。○ 特別支給金についても、保険給付と同様に非課税の扱いであるが、譲渡、差し押さえの対象とはなり得る。○ 故意の犯罪行為又は重大な過失による支給制限は、休業(補償)給付、傷病(補償)年金、障害(補償)給付が、支給のつど所定給付額の30%減額される。(年金給付は、療養開始後3年以内に支払われる分に限られる。)○ 正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことによる支給制限は、休業(補償)給付については、10日分相当額の減額、傷病(補償)年金については、年金額の365分の10相当額が減額される。(療養開始後3年以内に支払われる分に限られる。)