目標の先に、何があるか

公認会計士試験合格者 森 大地

高い目標に挫折し、漫然と過ごす日々

「10年で一流の監査人になり、社会に貢献する起業家になる」と意気込んで会計士キャリアをスタートさせてから、もうすぐ丸4年になります。当初はとにかく何でも一番を目指す、というがむしゃらな気持ちで仕事に取り組んでいましたが、現実はそう簡単にはいきません。飛び級昇進に何度か挑むもすべて失敗、同期入社の友人が最速で次の職階に昇進、私の目標にしていた短期海外出向プログラムも、身近な後輩が選抜されてしまうなど、高い目標とは裏腹に挫折の連続でした。そうこうしているうちに2年、3年と月日が経ち、仕事に慣れていくうちに次第と初心から遠ざかっていき、気がついたら漫然と過ごしてしまっている自分がいました。

合格後3年目の終わりに、初心を思い出す

3年目が終わる頃、メインで担当していたクライアントのチームメンバーが大幅に変更されたこと契機に、改めて今後のキャリアを考えました。来年も慣れ親しんだクライアントと同じような難易度の監査手続を実施するだけでよいのだろうか。何か、新しいことにチャレンジすべきではないか。自分自身への問いかけを続けていくうちに、少しずつ本音ベースの目標が浮かびあがってきました。監査をもっともっと詳しくなりたい。アメリカに出向して、本場の監査を味わいたい。外国人にも臆することなく仕事ができるような人間力を手に入れたい。結果として、担当クライアントを大幅に入れ替えた結果、①難易度が高いとされる新規の上場企業(大企業)の現場責任者(内部統制監査のみ)、②世界一厳格な米国上場企業向け監査基準であるPCAOB対象の外資系企業の現場責任者(財務諸表監査及び内部統制監査)を担当することになりました。

目標を意識し始めた4年目

重要な監査クライアントを担当した4年目は、当然に苦労も多くありました。①の上場企業の内部統制監査においては、前任監査人と私の所属する監査法人の監査マニュアルの違いから、会社に依頼する資料や手続に相違点も多く、一年を通して協議を重ねていきました。上司が同席することもありましたが、基本的には現場責任者の私が主担当となり、内部統制監査基準や監査マニュアルを参照しながら、全体を取りまとめていきました。厳しい監査基準が要求される外資系クライアントでは、財務諸表監査と内部統制監査両方の現場責任者であったため、クライアントからの会計相談から重要な内部統制の変更に対する評価手続まで、監査チームの窓口として積極的に関与しました。米国の親会社監査チームとのコミュニケーションにも参加し、アメリカ人が監査業務をどのように進めていくのかという点も垣間見ることができました。

次の目標は、3年間の米国出向

4年目が終わりに近づき監査法人の年度が新しくなった7月、1年目にキャリアコーチを担当していただいていたマネージャーが、3年間の米国出向から帰ってくることを知りました。迷わず当年度のキャリアコーチをお願いし、初回の面談では米国出向について様々な話を聞くことができました。どんな内容の仕事をしたか、どんな苦労があったか、どのような成果をあげたのかなど、具体的な話をいくつも聞きました。その時の感想は、「めちゃくちゃ面白そう。とにかく、アメリカに行きたい!」でした。その旨を伝えたところ、今度はそれを実現するために必要なことが何かを、現在の仕事でどのように成果を出し、誰に出向に関する情報を聞き、いつ行けそうなのかといったように、かなり具体的に助言していただきました。その瞬間から、私の会計士キャリアへのモチベーションはキャリア開始時を上回る勢いで上昇し、今に至ります。

目の前の点と点がどこかで繋がり、将来の自分を輝かせる

資格試験の先にある人生は、わかっているようで、何もわかりません。合格すれば幸福になれると信じていても、案外、何も変わらないかもしれない。逆に、不合格だったら人生真っ暗だと思っても、それがきっかけで別の転機が訪れ、好転するかもしれない。一つだけ確実なことがあるとすれば、人生を懸けて合格を目指す日々を送ったという事実ではないでしょうか。人によってその量や質は異なりますが、自分なりに一所懸命になり、目標達成に向けて様々な試行錯誤を行う経験は、必ず人生の糧になります。私は、就職活動の挫折から約2年半の浪人生活を経て会計士試験に合格し、監査法人では様々な挫折を経験しながらも、新たな目標を目指す日々を送っています。いま、大変な苦労を抱えている受講生の皆さんには、なんとか踏ん張って欲しいです。合格後の明るい未来に向けて、また今日も一日、前進していきましょう。

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