公務員試験の小論文は配点比率が高く、合否を左右する重要な試験です。高評価を得られる小論文はどのようなものかを知り、加点を狙っていきましょう。この記事では、公務員試験の小論文を書くために5つの手順や頻出テーマ、意識すべきポイントなど詳しく解説します。
公務員試験の小論文ってどういうもの?
公務員試験の内容は職種により異なりますが、多くの試験で「教養論文」とよばれる記述式試験が課されます。教養論文は「作文」と「小論文」に分けられますが、今回は小論文について詳しく解説していきます。
小論文のテーマには国や各自治体が抱えている行政課題や社会問題に関するものが多く、それらに対する解決策を記述するのが一般的です。文字数は800~1,000字程度、試験時間は1時間が平均的ですが、そもそも国家公務員の専門職試験のように小論文が課されない試験もあるため、試験内容は必ず確認しましょう。
一例として、国家公務員の一般職試験(大卒程度)の場合を紹介すると、基本的に記述する文字数に指定はなく、試験時間は1時間です。
教養論文の「作文」とは?
一方、教養論文の「作文」では、公務員という職業そのものに関することや公務員を志す志望者自身に関することが課されます。小論文同様、試験により記述する文字数や試験時間はさまざまであり、600〜1,200文字程度を50〜90分程度で記述させるのが平均的です。
例えば、2024年の東京都職員3類採用試験では、『誰もが「安全・安心」に暮らすことができるまち東京をつくっていくために、東京都職員として私が取り組みたいこと』をテーマに、600~1,000字程度を80分で記述させる問題が出題されました。
公務員試験の小論文はどのくらい重要?
公務員試験では小論文の配点比率が高く、少なくとも全体の10%以上を占めています。地方公務員の上級試験ではその割合がより高く、国家公務員でも地方公務員でも小論文対策は必須といえます。
国や各自治体が小論文を課す目的は、公務員に不可欠な読解力・判断力・表現力・文章構成力・論理性などを見極めることです。公務員の業務上、さまざまな資料や書類に目を通す機会が多くあり、論理的に判断して、分かりやすくまとめる能力が求められます。そのため、小論文では、公務員として業務を遂行する上で支障がないか、正しい日本語が使えるかが判断されるのです。
公務員試験の小論文を書く手順5ステップ

公務員試験の小論文では、与えられたテーマに対して、十分な論拠をもとにして、自分の意見を論理的に文章にする必要があります。これらを満たす小論文の書き方について解説します。
【前提】現状・背景の分析
まず、テーマとなっている行政の課題について現状や背景を分析します。例えば、少子化対策の場合では、少子化の現状を具体的に説明し、さらに、なぜ少子化が進んでいるのか、といった背景を多面的に説明する必要があります。
また、「住みよいまち」「安心してくらせる社会」など、よく使われているけれど単体では意味がはっきりしない言葉は、冒頭で定義付けすることが必要です。
【今の課題】具体的な課題を抽出する
次に、テーマである課題の何が問題となっているのか、を明記します。例えば、少子化が課題の場合には、どのような問題があるから子どもを産みたくても産めないのか、どのようなことが負担となっているのかということを考えて提起します。
このステップの役割は現状・背景と解決策を結びつけることであり、具体的な課題を明記することで解決策を記述しやすくします。
【解決策の大枠】解決に向けて進むべき方向性を示す
ここでは前提や課題の抽出を踏まえ、解決に向けて進むべき方向性を示します。与えられたテーマに対して、行政として解決する意義や目的などをつなぎの一文として入れるとよいでしょう。例えば、少子化対策の場合では、「すべての保護者が安心して子育てができる環境を整備し、地域で子どもを育むといった機運を醸成していくことは行政の重要な役割だ」といった記述が考えられます。
【解決策の詳細】具体的な解決策を講じる
このステップでは、具体的な解決策を記述します。例えば、少子化対策の場合では、「すべての保護者が安心して子育てができる環境づくり」という方向性に対して、「気軽に相談できる」「匿名での相談も可能にする」など複数の解決策を挙げ、なぜそれが課題の解決につながるかといった理由や、行政が実施することで得られる効果などを書くとよいでしょう。なお、解決策は変わったものではなく、誰が読んでも納得できるものを挙げることが重要です。
【まとめ】結論を述べる
最後に、与えられたテーマに対して最終的なまとめを記載しましょう。具体的には「行政として~すべき」「職員として~していきたい」のように結論を述べます。とくに、「職員として~していきたい」と自分の意思を加えることで主体性が生まれ、高評価を得られる可能性があるため、おすすめです。なお、結論の部分はあまり長々と書かず、簡潔に書きましょう。
公務員試験の小論文の頻出テーマと例題
ジャンル | テーマ |
---|---|
人口問題 | 少子高齢化 人口減少 |
働き方 | ワークライフバランス 男女平等参画社会 女性の働きやすさ |
環境問題 | 温暖化対策 地震や水害など災害の対策 |
地域振興 | 地域における子育て 地域における高齢者支援 地域コミュニティの活性化 地元企業の活性化 |
デジタル化 | ITの活用 AIの進歩と活用 |
国際社会 | グローバル社会 国際経済 国際事情 国際会議 |
上記は、最近の公務員試験の小論文で問われる頻出テーマです。最も多いのは、人口問題に関するもので、国家的な課題を自治体単位でどのように取り組むべきかが注目されています。また、環境問題に関するものも、世界的に見て早急に取り組むべき課題であることからよく出題されます。いずれも「問題の背景」と「行政として取り組むべきこと」の2つを調べ、整理しておくとよいでしょう。下記に論文の例題を掲載しますので参考にしてみてください。
国際目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理や効率的な利用をめざすことが必要であると示されています。特別区においてもその目標達成に向けた一層の取組が求められており、食品ロスや廃棄物の削減を進めていくことが重要です。このような状況を踏まえ、ごみの縮減と資源リサイクルの推進について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい(特別区Ⅰ類)
公務員試験の小論文で意識するべきポイント

公務員試験の小論文で頻出されているテーマや書き方について解説しました。ここでは、小論文で意識するべきポイントについて見ていきましょう。
テーマや問われていることを正確に理解する
まずは問題の本質を理解して書くことが大切です。本質を理解しないまま早合点して、あらかじめ用意した文章を記述してしまうと、テーマや問われていることからズレた解答になる可能性があります。そのため、問題文の文章をしっかりと読み、どんな内容を求められているのかを考えましょう。例えば、問題文でデメリットとメリットの両方が触れられている場合では、両側面を見据えた文章を記述しないと、読解力が足りないと判断されてしまいます。
読みやすい構成・文章で論述する
結論ファーストで、いかにわかりやすく簡潔にまとめられているか大切であり、難しい言いまわしや高度な表現を用いる必要はありません。また、結論以外の余分なまとめの文章も基本的には不要です。このような点を踏まえ、採点者を納得させるための論理的な記述を目指しましょう。長すぎる文章は読みづらいため、一文は短めに簡潔に記載することを心がけましょう。
正確な数値を用いる
正確な数値を用いることで、課題に対する正確な知識や背景の理解を示せるとともに、文章の説得力を高め、加点を期待できます。具体的に覚えておきたい数値としては、高齢者の割合、待機児童の人数・最近の傾向、温室ガスの排出量、合計特殊出生率、空き家の数など頻出するテーマの数値であり、これらは覚えておいて損はないでしょう。
受験先の取り組みを交えて論述する
国家公務員なら国の施策、地方公務員なら受験する自治体の施策について熟知しておき、小論文ではそれらを交えて記述するとよいでしょう。採点する側からして印象が良く、採用後に受験者が公務員として働くイメージもできます。
豊富な語彙を使う
採点者は多くの応募者の小論文を読むため、小論文の「読みやすさ」は重要なポイントです。同じ文末表現や単語が何度も使われている文章は読みにくく、稚拙な印象を与えかねません。状況に応じて適切に表現できることを示すためには、同じ単語ばかり使用せず、類語表現を積極的に使用したり、文末表現や接続詞を使い分けたりするとよいでしょう。
基本的なルールを守る
「読みやすさ」という点では、基本的なルールを守ることも大切です。具体的には、文字数に過不足がないことが挙げられます。文字数の指定がある場合には、少なくとも6割以上は記述する必要があります。その他に、原稿用紙の横書き・縦書きのルールを守る、段落の冒頭は1マス空ける、数字とアルファベットの小文字は、1マスに2文字ずつ書く、行の最後の句読点は、文字と同じマスに書く、などがあります。
要注意!公務員試験の小論文で不合格になるケース
公務員試験の小論文で意識すべきポイントなど、合格するために必要なことを紹介しました。ここでは、逆に不合格になるケースについて解説します。
論点がズレている
テーマや問われていることに対して、忠実に答えることが最低限抑えておきたいポイントです。問われたことに答えないのは最も避けたいことであり、テーマや問われていることを理解して記述することを心がけましょう。なお、加点を狙い、突飛な文章を記述することは必要ありません。誰が読んでも納得できるものを記述するようにしましょう。
内容が前後で矛盾している
例えば、前半で少子化の問題点として、「住みよいまち・安心してくらせる社会づくりの欠如」と挙げているのに、後半で「建物のリフォーム」といった対策を記述するということは、整合性がとれていません。このような矛盾があると、自身の考えが整理されていないことがバレてしまいます。まずは、大体どんなことを書こうか頭の中で整理し、きちんと構成を組み立ててから書き始めるとよいでしょう。
事実をただ羅列している
これまで勉強してきた知識を単に記述することは、小論文として意味をなしていません。事実の羅列だけでは、「行政として何をするべきだと考えているのか」がわかりません。行政として何をすべきか、あなたならどうするのかをこれまで勉強してきた知識を交え、説得力のある文章で記述することが求められます。
具体的な施策案が明示されていない
ただ、ぼんやりと「こうするべき」と記載するだけでは不十分です。具体的な施策案が記述されていないと、あなたの考えや意見がわかりません。行政がとるべき施策が何なのかを考えて記述しましょう。具体的に記述するためにも、日頃からニュースを見て、その課題・解決策について自分なりの考察が持つなど、日々の積み重ねが大切です。
職員目線で書かれていない
テーマや問われていることに対して、必ず公務員としての立場で書くことが必要です。第三者目線や評論家として俯瞰した文章を書いてしまうと、「主体性や責任感が足りていない」と判断されてしまう恐れがあります。当事者として問題意識を持ち、表現しましょう。
日本語がおかしい・文字が雑
「読みやすさ」は重要なポイントです。基本的なことですが、文法的な間違いが多いと文章力がないと判断され、減点対象になってしまいます。また、文字が雑だと、いい加減な人だと誤解を与えてしまいます。字が上手くなくても、問題ありません。濃く丁寧に、はっきりと大きな文字で丁寧に記述し、論文全体の第一印象を良くし、採点者にしっかりと内容をアピールしましょう。
公務員試験の小論文を上達させる方法

最後に、公務員試験の小論文試験に合格するための秘訣を紹介します。小論文を上達させるためには学び方にも工夫が必要です。
小論文のよい例を参考にする
はじめは小論文の組み立て方も評価されやすい書き方もわからないと思いますが、評価されている小論文をたくさん読んでいくと、よい小論文がどういうものかがわかってきます。書くことも大切ですが、まずは模範解答など質の高いものを読み込むことが大切です。小論文の基本となる型やテーマに関する知識が頭の中にインプットされることで、良質なアウトプットにつながります。
日頃から社会問題に敏感になっておく
小論文では「人口問題」や「環境問題」などの社会問題が、テーマとしてよく問われます。日頃からニュースを見て情報収集し、受験先の施策を交え、自分の考えや意見を記述できるように準備しておきましょう。日常的に社会問題への見解を持ち、頭の中で整理しておくと、いざ小論文を書く際に文章を構成するスピードも早まります。
論理的に考えることを癖づける
論理的に考えるためには、ロジカルシンキングの方法を覚えることが重要です。ロジカルシンキングとはまさに論理的思考のことですが、思い込みやバイアスがかかっていない状態で物事を適切に分解し、因果関係を把握して筋道の通る形で合理的に考えることを指します。合理的に考えられるようになると、重要なこととそうでないことを素早く区別できるようになり、小論文をわかりやすく書くことにつながります。
講師に小論文対策のサポートをしてもらう
小論文は独学で学ぶことも不可能ではありませんが、プロに採点してもらいながら改善していくのが一番の近道です。誤字・脱字、主語と述語のねじれ、問われていることと記述したことのズレなど、自分では気づかない指摘がもらえます。通信講座クレアールの公務員講座では、講師による小論文対策が受けられます。
公務員試験の小論文対策はプロに見てもらうのが近道!
公務員試験の小論文は配点が高く、合否にかかわる重要な試験です。上達させるために模範解答などよい小論文を読み込み、実際に記述してみましょう。記述にあたっては書き方の型を身につけるとともに、日頃からニュースを見て自分の考えや意見を持つ習慣をつけておくことが重要です。
小論文対策としてプロに採点してもらうことで、自分では気づかない指摘をもらうことができ、合格により早く近づけます。通信講座クレアールの公務員講座では、講師による小論文対策が受けられるので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。