【短答式受験生応援記事】その⑤ 2019年度第Ⅰ回の短答式本試験について

1. はじめに

2018年12月9日(日)、2019年度第Ⅰ回短答式本試験が実施されました。受験された皆さま、本当に大変お疲れ様でした。

管理会計論を始め、全体として相当難易度の高い試験であったと思われます。監査論や財務会計論についても、ここ最近の中では難しい方だと思いますし、平均点も下がると予想されます。

実際に試験を受けてみて、難易度の高い問題に戦意喪失した方も多かったようです。管理会計論が終わった後、その後の科目は受験を放棄する人もいたようです。また、今後の学習に希望が持てなくて勉強を断念しようかと思っている方もいるようです。

しかし、落ち込んでいるだけでは何も始まりません。また、今後に希望が持てなくて受験をあきらめようとしている方も、本当に希望が持てない状況なのか考え尽くしたでしょうか?「合格すること」だけを考えると、意外と何とかなる状況であることが分かってきます。

今回の記事では、先日の短答式本試験に関する現実を一歩踏み込んで分析し、「通常必要とされる対策をしてきた受験生」がきちんと合格できる試験だったのかを検討してみたいと思います。

2. 全体の大まかな難易度・目標点

各科目の難易度などから考えられる、大まかな目標点数は次のようになります。

① 企業法:標準的な難易度。目標ライン約75%(約75点)
② 管理会計論:過去最高の難易度。目標ライン約50%(約50点)
③ 監査論:標準より難易度高め。目標ライン約65%(約65点)
④ 財務会計論:標準より難易度高め。目標ライン約60%(約120点)

この目標点数は、「Aランク問題」および「Bランク問題の半分」を拾うことができた場合を目安にしております。各問題の難易度については下記3.に示しております。この目標点数を獲得できれば、総得点の62%(500点満点中310点)となります。実際の合格ラインがどうなるかは合格発表までわかりませんが、様々なところで予想されている合格ラインも62%前後というのが一般的です。

3. 各科目の難易度分析

自己採点したくない人(orしないと決めている人)もいるでしょうから、解答は伏せたうえで、各科目の難易度をA~Cでランク付けしてみました。なお、学校としての正式なランク付けではなく、個人的な主観に基づくランク付けであることをご了承ください。クレアールアカデミーの予想する解答についてはリンク先をご参照ください。

参考 公認会計士試験 解答速報クレアール公認会計士サイト
  • A:基本知識を活用すれば正答できる問題。ぜひ正答したい問題。
  • B:少し応用的だったり難易度が高い問題。全く手が出ないわけではなく、このうち半分くらいは正答したい問題。
  • C:超難問!「こんなのは解けなくても大丈夫」というような問題。いわゆる捨て問。

(1) 企業法の難易度分析

※ 配点は、各5点

問題番号 出題内容 難易度
問題1 個人商人 B
問題2 商行為 B
問題3 創立総会 A
問題4 種類株式発行会社でない株式会社の定款 A
問題5 株主の権利の行使に関する利益の供与 A
問題6 株式の分割または株式無償割当て A
問題7 募集株式の発行 A
問題8 監査等委員会設置会社 A
問題9 株主総会(判例) C
問題10 取締役会設置会社以外の株式会社の株主総会 A
問題11 会計参与 A
問題12 任務懈怠責任の一部の株主総会の特別決議による免除 A
問題13 指名委員会等設置会社における報告義務 A
問題14 違法配当 A
問題15 持分会社 B
問題16 社債 B
問題17 組織再編 A
問題18 会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決 C
問題19 金融商品取引法上の確認書および内部統制報告書 A
問題20 公開買付け B

Aランクが13個、Bランクが5個、Cランクが2個となりました。
Aランクの全て、Bランクの半分を取ることができた場合、次のようになります。

  • 5点×(13個+5個×50%)=77.5点

1問あたり5点なので、端数を切り捨て、目標点数を75%とさせていただきます。

(2) 管理会計論の難易度分析

問題番号 出題内容 難易度 配点
問題1 理論 原価計算基準 A 5点
問題2 計算 材料の購入原価 C 7点
問題3 理論 個別原価計算 A 5点
問題4 計算 実際部門別個別原価計算 B 8点
問題5 理論 総合原価計算 A 5点
問題6 計算 等級別・工程別総合原価計算 B 8点
問題7 理論 標準原価計算 A 5点
問題8 計算 標準原価計算 A 7点
問題9 理論 管理会計の基礎 C 5点
問題10 計算 売上高営業利益率の改善 C 7点
問題11 理論 予算管理 B 5点
問題12 理論 原価管理 C 5点
問題13 理論 ABCおよびABM B 5点
問題14 計算 原価改善の経済的効果 C 8点
問題15 計算 アメーバ経営 B 7点
問題16 計算 設備投資の意思決定 A 8点

Aランクについては、8点の問題が1個、7点の問題が1個、5点の問題が4個となっております。Bランクについては、8点の問題が2個、7点の問題が1個、5点の問題が2個となっております。Cランクの問題は5個となっております。

Aランクの全て、Bランクの半分を取ることができた場合、次のようになります。

  • Aランク:8点×1個+7点×1個+5点×4個= 35点
  • Bランク:(8点×2個+7点×1個+5点×2個)×50%= 16.5点
  • 合計:51.5点

目標点数はおおむね50点といったところでしょうか。

(3) 監査論の難易度分析

※ 配点は、各5点

問題番号 出題内容 難易度
問題1 財務諸表監査 A
問題2 公認会計士法 C
問題3 監査人の職業倫理および独立性 B
問題4 金融商品取引法監査制度 C
問題5 会社法監査制度 A
問題6 内部統制監査 B
問題7 内部統制監査 B
問題8 四半期レビュー C
問題9 監査の品質管理 A
問題10 監査業務の審査 A
問題11 企業会計審議会が公表した監査に関する諸基準 A
問題12 監査における正当な注意と職業的懐疑心 A
問題13 監査計画 A
問題14 監査上の重要性 A
問題15 リスク評価手続 B
問題16 リスク対応手続 B
問題17 監査サンプリング B
問題18 監査基準「第四 報告基準」 A
問題19 監査報告書 B
問題20 監査における不正リスク対応基準 B

Aランクが9個、Bランクが8個、Cランクが3個となっております。
Aランクの全て、Bランクの半分を取ることができた場合、次のようになります。

  • 5点×(9個+8個×50%)=65点

(4) 財務会計論の難易度分析

問題番号 出題内容 難易度 配点
問題1 理論 財務会計の概念フレームワーク A 8点
問題2 計算 受取手形 B
問題3 理論 棚卸資産の評価 B
問題4 計算 固定資産の取得原価および資本的支出 C
問題5 理論 特別目的会社を利用した不動産の流動化 C
問題6 計算 社債の買入消却 A
問題7 計算 資産除去債務 A
問題8 計算 繰延資産など B
問題9 理論 収益の認識 A
問題10 計算 工事契約会計 A
問題11 理論 財務諸表の表示 A
問題12 計算 分配可能額 A
問題13 理論 ストップ・オプション等 B
問題14 計算 自己新株予約権 B
問題15 理論 リース会計 C
問題16 計算 退職給付会計 A
問題17 理論 税効果会計 B
問題18 計算 企業結合(逆取得の吸収合併) B
問題19 理論 企業結合および事業分離 B
問題20 理論 関連当事者の開示 C
問題21 理論 包括利益の表示 A
問題22 計算 減損会計 A
問題23 計算 連結会計の総合問題(のれん) B 4点
問題24 計算 連結会計の総合問題(関連会社株式) B
問題25 計算 連結会計の総合問題(前期末の利益剰余金) C
問題26 計算 連結会計の総合問題(非支配株主持分) C
問題27 計算 連結会計の総合問題(売上原価) A
問題28 計算 連結会計の総合問題
(親会社株主に帰属する当期純利益)
C

Aランクについては、8点の問題が10個、4点の問題が1個となっております。Bランクについては、8点の問題が8個、4点の問題が2個となっております。Cランクの問題は7個となっております。
Aランクの全て、Bランクの半分を取ることができた場合、次のようになります。

  • Aランク:8点×10個+4点×1個= 84点
  • Bランク:(8点×8個+4点×2個)×50%= 36点
  • 合計:120点

4. 管理会計論について

管理会計論の試験を受けている最中、絶望を感じた受験生も多かったと思います。ですが、上記3.(2)に示しているとおり、50%獲得できれば十分だったのです。 実際にそれだけの正答ができる問題だったか、もう少し掘り下げてみましょう。

まず、Cランク問題は不正解でも何ら問題はありません。それどころかむやみに時間をかけるべきではありません。そのうち理論問題は、知らない知識が問われている時点で後回し、または勘で解答を埋める対応が可能です。計算問題については、問題2だけは一通りの計算をしてみてから解答が絞り切れないという事態に陥ってしまいますが、それ以外(問題10と問題12と問題14)は、取っ掛かりのタイミングで解法が明確になりづらいため、かける時間を最小限に食い止めることができるはずです。

次に、Bランクの問題は半分正答できれば十分なので、その全てに無理をする必要はありません。例えば、前半の原価計算分野において、問題4と問題6は非常にボリュームの多い問題となっていましたが、基本知識を活用すれば十分解答可能な問題でした。どちらも必ず正答する必要はありませんので、どちらかだけに絞って多少の時間を費やせば、いずれか1つは解答可能といえます。

Aランク問題については、基本知識を活用すれば十分正当可能な問題といえます。可能な限りここで正答を稼いでおきたいところです。もしAランク問題で取りこぼしがあったとすれば、それが今後の学習の課題といえます。

管理会計論に関しては、Aランク問題が6個、Bランク問題が5個となっています。Aランクの6個を正答し、Bランク5個のうち半分の2個(端数切捨て)を獲得できれば、16問中8問が正解となり、おおむね目標点数に届きます。70%取らなければいけないのであれば絶望する問題かもしれませんが、50%であればなんとかなると思いませんか? 決して獲得不可能なものでないことがご理解いただけるかと思います。

5. 最後に

試験では、難易度の高い問題に対する印象が強くなる傾向にあります。しかし、易しい基本的な問題が散りばめられている現実もあります。また、試験全体の難易度が高い場合、合格ラインは下がる傾向にあります。このように試験に関する現実をよりしっかりと分析することで、合格点に到達することが決して不可能ではないということが分かってきます。

今回に限らず、合格者であってもその多くが解けていない難問が出題されるのは毎回同じです。それは短答式・論文式ともに同じです。そんな難問に正答できなければ合格できない試験でないのも事実です。誰も解けない難しい問題を気にしていては何も良いことはありません。非常識合格法でいうところの合格必要得点配点範囲をしっかりと正答できれば、十分合格は可能です。試験の現実と基本を踏まえ、希望を持って試験対策に取り組んでいただけると幸いです。

以上、この記事が少しでも参考になれば幸いです。