1. はじめに
先日の2018年11月18日(日)、第150回日商簿記検定が実施されました。受験された皆さまは本当にお疲れ様でした。
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この記事では、第150回日商簿記検定のうち2級について、問題に対する感想などを書いていきたいと思います。
2. 第150回日商簿記2級の出題内容
第1問から第5問まで、出題された内容は次のとおりでした。私の個人的予想が当たったかどうかは下記の記事と見比べていただければ明らかになります(^^;)
出題内容
出題内容 | |
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第1問 | 仕訳問題 1. 役務収益と役務原価 2. 固定資産の割賦購入 3. 事業譲受 4. クレジット売掛金など 5. 株主資本の計数変動 |
第2問 | 固定資産取引に係る勘定記入など |
第3問 | 貸借対照表 |
第4問 | 費目別計算などに関する仕訳問題 |
第5問 | CVP分析 |
3. 第1問について
今回は3級の仕訳問題も難易度が高かったのですが、2級はそれ以上に厳しいものでした(汗)。5つ中2つは死守しつつ、もう1つなんとかプラスして3つ取れていれば十分です。
① 1つ目の「役務収益と役務原価」についは一見基本問題の延長ですし、実際そうだと思うのですが、思わぬミスが生じやすくなっておりました。それは、追加で発生した外注費の未払分に係る処理です。主たる営業活動(本業)の中で生じた未払分なので買掛金勘定を計上する必要があったのですが、未払金勘定で計上してしまった方も多かったと思われます。できれば正答したい問題ですが、正答率は高くないと思われます。
② 2つ目の「固定資産の割賦購入」については、一応基本問題の範疇になります。営業外支払手形勘定が計上される点や、利息相当額を長期前払費用勘定によって計上する点など、勘定科目を慎重に選ばないとミスしやすくなっていました。しかし、他の問題の難易度を考えると必ず正答しておきたいところです。
③ 3つ目の「事業譲受」は、基本問題の1つです。迷わせる点もとくに見受けられません。必ず正答したいことです。
④ 4つ目の「クレジット売掛金など」ですが、これは間違えても全然気にする必要はありません。クレジット手数料が「クレジット販売代金の5%」となっていたことから税抜後のクレジット販売代金に5%をかけて計算する点に引っかかった方は多いと思われます。税込みのクレジット決済額は216,000円ですが、税抜きのクレジット販売代金は200,000となります。クレジット手数料は、後者の200,000円に5%をかけた10,000円となります。
また、文章の最後に「クレジット手数料には消費税は課税されない」という表現が付いており、その意味が把握しづらいと感じた受験生も多かったことでしょう。当社はクレジット手数料を支払う立場ですが、仮にこれに対して消費税が課税される場合は仮払消費税が生じます。ですが、そのような仮払消費税は生じないというのがこの文章の意味になります。
⑤ 5つ目の「株主資本の計数変動」ですが、これも正答率は高くはならないと思われます。利益準備金の取崩額は問題文の指示どおり繰越利益剰余金勘定に振り替えればよいのですが、資本準備金の取崩額については何も言及されていませんでした。この点、利益準備金は利益剰余金の一部、資本準備金は資本剰余金の一部となっているのですが、利益剰余金と資本剰余金は大きく性質が異なりますので混同してはいけないこととなっております。そのため、資本準備金は同じ資本剰余金の内訳項目であるその他資本剰余金に振り替える必要があります。1級受験生であれば確実に正答したいものですが、2級受験生にとってはこの点を理解したうえで正答するのはハードルが高いように思われます。ちなみに、この話は株式会社の純資産項目に対するある程度の理解が前提となります。2級レベルの純資産に関しては、別記事でアップする予定ですので楽しみにしておいてください。
4. 第2問について
第2問は、リース取引、圧縮記帳を含んだ固定資産取引の勘定記入に始まり、税効果会計の仕訳、連結修正仕訳の一部を問うバラエティに富んだ問題でした。一見難しいものが出ちゃったかなと思ったのですが、1つ1つの取引はテキスト例題レベルの基本的なものばかりです。問3の連結修正仕訳は、未実現利益の消去がアップストリームのケースとなっていたので、学習が追い付いていない人もそれなりにいると思われます。しかし、それを除けば基本的な仕訳をもとに解答可能であり、第2問は8割以上の得点を獲得しておきたいところでした。
5. 第3問について
第3問はオーソドックスな貸借対照表作成問題でした。繰越利益剰余金の最終金額を求めるために損益計算書を下書きして当期純利益を計算しようとした方もいるかもしれませんが、それをあきらめて損益計算書科目は無視し、貸借対照表科目のみ追いかける形でも解答の大部分を埋めていくことができます。
また、決算整理事項は基本的なものばかりでしたので、第3問についても8割以上の得点を確保したいところでした。
6. 第4問について
費目別計算を中心とする各段階の仕訳を問う問題でした。(1)では材料副費を予定配賦する問題となっておりましたが、2級受験生でそこまで学習している人は少ないと思われます。したがって、(1)は正答できなくても気にしないでください。
(3)で問われていた賃率差異の計算や計上はそれなりに深い理解を要しますが、一応テキストなどの基本教材でも扱う範囲です。できれば正答したいところです。したがって、第4問では(1)のみは落としても仕方ないとして、なんとか8割の得点を確保したいところです。
7. 第5問について
問1~4までは基本的なCVP分析の問題でした。問5の高低点法については、学習が手薄だった人も多いと思われます。初めて見た人にとっては取れなくても仕方ありません。
したがって、第5問も、問5のみは落としたとしてもしかたありませんが、それ以外を正答して8割の得点を確保したいところです。
8. 次回の試験にむけて
今回の試験では、第1問の高得点が難しかったのですが、第2問以降で挽回できるものでした。ここ数年の2級試験は「難しくなった」という声をよく聴きますし、今回もそのような印象を受ける方もいるでしょう。しかし、実際には第1問~第5問のうち難易度の高いものは1つ(多くても2つ)であり、それ以外の問題は十分に高得点が狙えるものだったりします。
したがって、次回以降の試験を受ける方は、次の2点を意識するようにしましょう!
- ① 1つくらいは難しい問題が出ると覚悟しておき、実際に難しい問題が出たらいったんとばして他の問題でしっかり正答を積み重ねる。
- ② 高得点が狙える問題でしっかり正答できるよう、テキスト例題や問題集に載っているような基礎・基本をしっかり固める。