【公認会計士・簿記検定受験対策】日商簿記1級で伸び悩んでいる人へ①

目次

1. はじめに

日商2級までは順調に合格できたのに、1級の学習をはじめたら壁にぶち当たったという人は多くいると思います。
タイプとしては、次の2つをよく見かけます。

  • ① 1級の学習範囲・難易度についていけない
  • ② 十分に対策をしたはずなのに本試験であと一歩合格点に届かない

日商1級の合格率が10%前後で推移しており、実質的に競争試験と言われていますので、受験生のみんなが受かる試験でないのは確かです。学習範囲・難易度が2級よりもレベルアップするのも当然です。しかし、成果に結び付かない学習方法を続けることで、実は自滅する形で合格を逃す方も多く見かけます。上記①の方は学習の順序、上記②の方は学習方法でボタンの掛け違いがあることが多いものです。

今回の記事で①と②の両者に向けたアドバイスを書こうと予定していたのですが、思ったよりも書くべきことが多くて1回の記事に収まりきらなくなってきました(^▽^;)
そこで、まず今回の記事では①の人に向けたアドバイスを書いていきます。そして、次回の記事で②の人に向けたアドバイスを書いていきます。

2. 日商1級の難易度を知って覚悟を持ちましょう!

各級における一般的な教材の量は次のようになります。

  • 3級:テキスト1冊、問題集1冊
  • 2級:テキスト2冊(商簿1冊、工簿1冊)、問題集2冊(商簿1冊、工簿1冊)
  • 1級:テキスト6冊(商会3冊、工原3冊)、問題集6冊(商会3冊、工原3冊)

また、1級の出題範囲は3級・2級を含んでおり、さらに発展的な内容が追加される形となります。
これだけを見ても、1級に合格することが3級・2級に比べて大変なのは当然です。

したがって、学習期間が長くなるのはもちろん、成果に結び付きやすい学習方法を模索していかなければ合格することが難しくなります。これまで甘く考えていたなぁという方は、3級・2級に合格するのと同じ感覚では通用しにくいということを認識し、それなりの覚悟を持って取り組むようにしましょう。

 

3. 1級の学習範囲・難易度についていけない人へ

1級の学習内容がなかなか理解できない、問題を繰り返しても範囲が広すぎてこなしきれないという悩みを抱えている人は、次の2点を自らに問いかけてみてください。

  • ① そもそも学習量が足りないのではないか?
  • ② 1級対策をするうえで前提となる基礎が備わっていないか?

①の学習量ですが、どのくらいの量が必要なのかは個人差があります。参考までに、私が学生時代に日商1級の講座(半年くらいのコース)を受講していたときの学習量・時間を書いておきます。

  • 1コマ3時間弱の講義が週4コマくらいある中、次回の講義までに習った範囲の問題集を3~4回繰り返す。
  • 基本的に毎日自習室には行っており、5~8時間くらいは机に向かう。
  • 直前期は答練を5~7回くらいは解き直す。

ガチな公認会計士受験生に比べると少ないですし、人によって感じ方は変わると思いますが、約半年間これくらいの学習をしていました。

次に、②の「前提となる基礎」ですが、これは2級・3級で学習した範囲の定着・理解の度合いになります。2級まで「合格」はしていても、2級の学習内容が十分定着しているとは限りません。そもそも合格は70点なので、3割間違えても合格できます。3割かそれに近いくらい間違える場合、合格はできていても、より発展的な学習をしていくために必要なくらい定着しているとはいえないでしょう。単に2級まで合格しているだけでは、そのまま1級の学習にスムーズに入っていけないこともあるのです。

そこで、次のような問いに皆さんなりの言葉でよいので答えられるか確かめてみてください。本格的な会計学の論述ではなく、簿記の初心者に教える感じで大丈夫です。精密な表現でなくてよいので、皆さんなりに腑に落ちたものを言葉にできるかどうか考えてみましょう。なお、最後の問いは、それが実際にできるか適当な過去問などを解いてみるとよいでしょう。

  • 貸借対照表と損益計算書をそれぞれ作りますが、それぞれの書類で表したい情報はどういったニュアンスのものか?(貸借対照表で表したい情報と損益計算書で表したい情報は、それぞれ性質が異なります。性質が異なるから別々に分けて作っているのです。)
  • 「資産」ってどういうものですか?「あるとうれしいもの」ってことは色々なところで聞きますが、もうちょっと核心を突いた意味がわかりますか?
  • 「負債」ってどういうものですか?
  • 「純資産」ってどういうものですか?
  • 「収益」ってどういうものですか?「稼ぎ」って感じで聞くことがよくありますが、じゃあ「稼ぎ」って何ですか?お金ですか?お金を稼ぐといっても、掛け売上のようにお金(現金や預金)が増えていなくても収益が計上されていますが…
  • 「費用」ってどういうものですか?
  • 仕訳と転記、さらに転記されたものを集計して試算表や財務諸表にどうつながっているかイメージできますか?
  • 簿記一巡の手続が頭の中で構築されていますか?期首から期末の財務諸表作成・帳簿の締切までの一連の手続を思い出せますか?
  • 日商3級と2級の過去問、制限時間を十分に余らせて満点か満点近く取れますか?

かなりいじわるな問い詰めになってしてしまいました?(^_^;)いくつかの問いの答えになるものは以前に「簿記に対する苦手を克服するには?」というシリーズで3回分の記事を書いていますので、そちらが参考になります。また、簿記一巡の手続についてはそれだけのための記事を別で書いても良さそうなボリュームになりますので、別の機会に書いてみたいと思います。ひとまずは皆さんがお持ちのテキストを参照してみてください。

ちなみに、これらの話って3級のテキストとかにも載っていそうですよね?これらの問いに対する答えが本当に納得するようなレベルで書かれたテキストは少ないかもしれませんが、簿記の初歩、あるいは全体像として府に落としておきたいものかと思います。

これらの問いに対する回答が全く何も思い浮かばない、ニュアンスレベルでも考えられないという方は、たとえ2級に合格していても1級の学習に耐えうるだけの基礎的な体系が備わっていないと考えられます。そのような方および2級・3級の過去問が満点近くには及ばない方は、1級の学習はいったん置いておき、3級・2級の復習を超短期集中型でよいので取り組んでみましょう!

各人にあったペース、取り組むべきものは当然に異なってくるものですが、次のノルマを目安にしてみてください。3級・2級対策していた時期に比べるとかなり厳しいように思うかもしれませんが、すでに2級まで合格していたり、1級の学習に伸び悩みつつも取り組んでいるのですから、以前よりは格段にハイペースで復習することができるはずです。

  • 3級の範囲 → 1週間でテキスト通読と問題集を一通り解き直す。
    「書く」だけで時間がかかってしまいますので、問題を解く際、分かりきった仕訳などは頭の中で思い浮かべるだけでよいです。
  • 2級の範囲 → 商業簿記で1週間、工業簿記で1週間、3級の範囲と同じことをする。
    ただし、商業簿記の連結会計については除いても大丈夫です。1級の連結会計を学習する時に1から学び直せば大丈夫です。

基礎が備わっていない状態で1級をいくら頑張っても何ヶ月、下手したら1年以上成果が出ないまま時が経ってしまいます。最短で約3週間、基礎の再構築を図ることでそれを回避できるならば、決してこの総復習は無駄にはならないはずです。なんとしてでも1級合格したいのであれば、試してみる価値はあると思います。取り組む必要があると感じた方はぜひがんばってみてください!

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