働きながら公認会計士試験に合格するためのポイント

①勉強時間の確保が難しい社会人受験生は本当に不利なのか?

公認会計士試験はその試験範囲の広さと問題の難しさから、勉強時間をたっぷり取れる学生や受験専念者に有利であると考えられがちですが、本当にそう言い切れるでしょうか。

公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に3,000時間以上と言われており、私の場合は簿記3級の勉強開始から試験合格までに約3,700時間かかっておりますが、しかし見方を変えると約3,000時間の勉強時間を確保することさえできれば合格することが可能な試験だと言うことができます。

ここで、目安となる3,000時間をどのように捉えるかが問題になりますが、社会人でも十分に確保することが可能な時間だと思います。では、この時間について働きながら勉強する場合を例に考えてみましょう。仮に、平日の勉強時間を4時間、休日を10時間とすると、1か月で約160時間の勉強時間を確保することができます。ただし、実際には残業しなければならない日があったり、余暇の時間も必要になるため、これらを考慮に入れて少し緩めに見積もってみると1か月120時間程度になるでしょう。この場合、1年半~2年で3,000時間を達成することができる計算になりますが、合格者の平均的な勉強期間は2~3年ですのでこれと比較しても特別長い訳ではないことがお分かりいただけるかと思います。

このように、勉強時間の面では特に社会人に不利ということは無いですが、とはいえ目安である3,000時間は比較的短期で合格できた場合ですので、この勉強時間で合格を勝ち取るには寄り道をせず、無駄のない正しい勉強をする必要があります。

②合格に向かった正しい勉強とは?

それでは、合格に向かった正しい勉強とはどのようなものでしょうか。

これは、ズバリ合格者が正答すべき問題を落とさない力をつける勉強であり、すなわち正答率の高い問題を確実に正答するための勉強です。特に、少ない学習時間でこれを身に着けるには出題頻度の低い問題は思い切って切るくらいの気持ちでメリハリをつけて勉強する必要があります!

では、具体的なメリハリづけの方法ですが、これには予備校のテキストで示されている重要度や、答練・模試の出題内容が非常に参考になります。例えば、各科目のテキスト重要度ABランクの論点は、その科目のベースであり本試験レベルの問題を解くために必ず理解しなければならない内容であるため優先的に取り組むべきです。また、答練や模試には直接本試験で問われる可能性の高い問題がまとまっており、且つ多くの受験生が本試験までにマスターしてくるので、合格するためには絶対に落とせない内容だといえます。私の受験経験からも、答練で出題されたものと同じような問題が本試験で数多く出題されることを実感しています。

私は、テキストAB論点中心の学習と答練や模試で出題された問題のマスターというシンプルな戦略で合格を勝ち取ることができました。社会人受験生が合格するためには、最低限の勉強で学生や受験専念者に差をつけられないよう工夫することが重要ですので、ぜひ学習範囲にメリハリをつけた勉強を実践していただきたいです。

③時間的制約を味方につけて合格を勝ち取る!

時間的制約は社会人受験生の敵と言われがちですが、私は学習に有利に働くものだと考えています。

例えば、皆さんは依頼された仕事に締め切りが設定されていた場合、締め切りまでに間に合わせようと集中して取り組んだという経験はありませんか?これを勉強に置き換えて、3問の計算問題に時間制限なしで取り組む場合と15分という時間制限の中で取り組む場合を考えてみましょう。さて、皆さんはどちらの方が集中して取り組めると思いますか?何となく、15分で3問の問題を解く方が、集中して取り組むことができると思いませんか?これは、心理学用語で「締め切り効果」と呼ばれており、人間は時間的余裕がある中で取り組むよりも、時間的制約がある方が高い集中力を発揮することができるということを説明した事例です。つまり、勉強時間を制限することで、集中力を高めて効果的な学習をすることができるのです。

社会人受験生の皆さんは、必然的に時間的な制約があるため、集中して勉強することができるのですから、時間が無いとマイナスに考えるのではなく、ぜひ前向きに取り組んでいきましょう!

④短時間の学習サイクルで定着を図る

先ほどの例では15分という時間を使いましたが、これは一般的に人間が集中力を持続できる時間の限界だと言われております。さらに15分の学習+5分の休憩というサイクルが長期記憶に有効であるとの研究報告もあります。

また、公認会計士試験では、計算も理論も「定着」こそが合格への鍵となります。特に解答スピードが求められる短答式試験では、典型的な問題は見た瞬間にロジックや計算プロセスが頭に浮かぶレベルまで「定着」させる必要があります。では、「定着」を図るためにはどうすれば良いのでしょうか?それは、シンプルに自分の頭に染み付くまで何度も繰り返すことです。私たちは何かを覚えようとする時に、できれば一度で覚えたいと思うものですが、人は忘れる生き物なので大抵の場合それはできません。忘れることは自然なことなので、ここで大切なことは覚えられないという自分を責めずに、「覚えて→忘れて→覚え直す」というサイクルを何度も繰り返すことです。繰り返していくうちに、必ず覚えられる時が来るので、粘り強く取り組んでいただければと思います。

前述の「15分の学習サイクル」と「繰り返し学習」の理論を組み合わせて、皆さんの日々のスケジュールの中に短時間の学習を上手く取り入れてみてください。15分程度であれば通勤時間や昼休憩でも確保可能であると思います。例えば、行きの電車では監査論、帰りの電車では企業法、昼休憩には簿記の計算問題を2問解くといった具合にルールを決めて短時間の勉強を繰り返し、効果的な学習を実践してみてください。

⑤おわりに

今回は、社会人受験生に向けて、働きながら公認会計士試験に合格するための勉強方法に関するアドバイスをさせていただきました。ここまで述べてきたとおり、長時間の勉強が合格に繋がるという考えではなく、短時間で効果的な学習を実践していただければと思います。「メリハリ」、「集中力」、「繰り返し」、この3つのポイントを意識してご自身に合った方法で学習を進めていきましょう!